【失明リスクを避ける】近視は冬に悪化する?急増中の「強度近視」予防法を大学教授が解説

【失明リスクを避ける】近視は冬に悪化する?急増中の「強度近視」予防法を大学教授が解説

文部科学省の調査によると、現在、高校生の約6割以上、中学生の5割以上、小学生の3割以上が近視だといいます。近視は生活習慣や環境の影響を強く受ける病気です。また、発症年齢が低いほど悪化しやすいともいわれています。【解説】大山良樹(帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科准教授)


大山 良樹
帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科准教授。目の病気に対する鍼灸の臨床研究や、学童期の近視に対する鍼治療効果に関する研究、鍼通電刺激が瞳孔の自律神経機能に及ぼす影響に関する研究を精力的に行っている。

網膜が傷つき視力が低下していく

近年、世界中で近視が爆発的な勢いで増えています。

これは日本も例外ではありません。
文部科学省の調査によると、現在、高校生の約6割以上、中学生の5割以上、小学生の3割以上が近視だといいます。

こうした事態を憂慮した研究者たちが集い、昨年、近視研究会(世話人代表:慶應義塾大学医学部眼科学教室坪田一男教授)が発足されました。

私は、その第1回学術集会に参加しました。
ここでは、そこで報告されたショッキングな内容をご紹介しましょう。

まずは、近視の患者数です。
現在、世界の近視患者数は約25億人。
これは世界人口の3分の1にあたる数値です。

しかも、現在のペースで患者数が増加すると、2050年の近視患者数は47億5800万人。
世界人口の半数が近視になると推計されています。

さらに、このうち強度の近視は約9.8%、9億4000万人と予測されています。

あまり知られていませんが、強度の近視は失明のリスクが高いことがわかっています。
一般的な近視(軸性近視)の患者の眼球は、眼軸(眼球の奥行き)が長く伸びており、ピントが網膜の手前で合うようになっています。

眼軸が伸びる理由は、まだよくわかっていません。
しかし、眼軸が伸びると、目のいちばん奥に広がる網膜が薄く引き延ばされ、裂けやすく、はがれやすくなります。

目をカメラに例えると、網膜はフィルムの役目を果たす重要な部分です。
この網膜が傷つくと視力が低下し、ときには失明に至ります。

強度の近視によって失明するのは、眼軸の伸びとともに網膜が引き延ばされ、傷つくからです。

近視は、目(水晶体)の屈折率(D=ディオプター)によって軽度近視、中等度近視、強度近視、最強度近視、極度近視に分類されています。

現在、日本における中途失明の原因の第5位は、強度以上の近視なのです。

沖縄よりも北海道の子どもに近視が多い

メガネやコンタクトレンズを使用すれば、近視の患者も視力を矯正できます。
そのため、近視は長い間深刻な病気と考えられていませんでした。

しかし、今のペースで近視が増えれば、将来、失明する人は確実に増えます。
学術集会では、近視の対策に取り組んでいる国の例も紹介されました。

例えば中国では、小学校で近視を抑制する体操を実施しているそうです。
中国の場合、経済的な理由でメガネを購入できない家庭もあるため、予防に力を入れているのかもしれません。

台湾では、子どもに対し、近視の予防として1日80分の野外活動が推奨されています。
これは、近年の研究によって、太陽光をある程度長く浴びると近視になりづらいことがわかってきたためです。

その証拠に、赤道直下にあり、強い太陽光を長時間浴びる機会の多いブラジルの子どもは、他国の子どもよりも近視の割合が低いという報告があります。

日本でも、近視は夏よりも冬に悪化しやすく、沖縄よりも北海道の子どものほうが近視の割合が高いといった報告があります。

外遊びと夜はしっかり眠ることが大事

現在の研究で推測される近視の抑制に必要な太陽光は、1日1万5000〜2万5000ルクス。
これは、1日約2時間の野外活動で得られる照度です。

ゲームやパソコンなどの普及によって、子どもの野外活動の時間が減っています。
この変化と子どもの近視の増加は、おそらく関係があるのでしょう。

そのほか、動物実験では、近視の眼軸は夜中に伸びることがわかっています。
夜は睡眠をしっかり取り、目を休めることも、近視の抑制に有効です。

こうした調査や研究結果をもとに、近視研究会では、近視を抑制する生活習慣として、以下の7項目が提案されました。

①1日に2時間は外で遊ぶ

②学校の休み時間は外で遊ぶ

③本は目から30cm以上離す

④本は背すじを伸ばし、よい姿勢で読む。左右どちらかが本に近い状態にならないよう、均等な距離になるようにする

⑤読書・スマホ・ゲームなどは1時間したら5分〜10分程度は休み、できるだけ外に出てリフレッシュする

⑥規則正しい生活(早寝早起き)を心掛ける

⑦定期的な眼科専門医の診察を受ける

近視は生活習慣や環境の影響を強く受ける病気です。
また、発症年齢が低いほど悪化しやすいともいわれています。

近視研究会の提案を参考に、近視にならない生活を意識することを、強くお勧めします。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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