解説者のプロフィール

藤田紘一郎(ふじた・こういちろう)
1939年、旧満州生まれ。医師、医学博士。
東京医科歯科大学卒業、東京大学医学系大学院修了後、金沢医科大学教授、長崎大学医学部教授、東京医科歯科大学教授などを歴任。
専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学で、腸内でサナダムシを飼育していたことでも有名。
腸に関する著書も多数。
腸にいい食事で髪の毛まで増えた!
医者の不養生という言葉がありますが、私は10年以上前、食生活の乱れが原因で糖尿病を患ったことがありました。
その当時は70代の現在よりも体重が11kgも多く、見た目も老けて見られていました。
カロリー制限食も実践しましたが、かんばしい結果は得られず、結局、インスリン注射で血糖値をコントロールしていました。
そこで、研究者である私は、腸の仕組みに合わせた食生活の見直しが必要だと考えました。
私は腸に関する研究を長年行っています。
腸に生息している細菌たちが、人間の健康と深く関わりがあることをよく知っていましたので、腸内細菌を味方につける方法を考えました。
摂取する糖質の量を減らし、腸内細菌に役立つ食材を食生活に取り入れることで、体質そのものをやせやすいものに変えようとしたのです。
その食材の一つが「酢タマネギ」です。
腸にいい食事を心がけ、酢タマネギを食事のたびに食べるようにしたところ、その直後から、高かった血糖値や中性脂肪値が下がり始め、4ヵ月後には正常値になりました。
インスリン注射の必要もなくなったのです。
体重も、半年ほどで10kg弱減りました。
健康の証である肌ツヤもよくなり、薄くなっていた髪の量も増えました。
体形も以前とは異なりスリムになりましたから、久しぶりに会った友人や知人たちは口をそろえて「若くなったね」と驚いていました。
酢タマネギを食べると太りにくい体質になる
私がこのようにさまざまな効果を得られたのは、酢タマネギによって「腸内環境がいい方向に変わったから」です。
腸内には、実に1000兆個を超える腸内細菌が群生しています。
これらの腸内細菌はお花畑のように見えることから、「腸内フローラ(腸内細菌叢)」とも呼ばれています。
腸内フローラを構成する腸内細菌には、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌(環境によって善玉菌にも悪玉菌にも変化する菌)」の3種がありますが、健康や若さを維持するためには、このバランスが整っていることが重要です。
タマネギの甘み成分であるフラクトオリゴ糖は、腸内の善玉菌であるビフィズス菌を増殖させます。
さらに、タマネギの食物繊維も有用です。
腸内の善玉菌は、食物繊維を発酵させながら、脂肪酸の一つである短鎖脂肪酸を作り出します。
また、短鎖脂肪酸は、酢そのものにも含まれています。
この短鎖脂肪酸は、血液に乗って運ばれ、全身の脂肪細胞へと届けられます。
すると、短鎖脂肪酸は、脂肪細胞で脂肪を取り込むことをブロックし、細胞の肥大化を防ぐ働きをします。
短鎖脂肪酸は粘膜を刺激して大腸を動かす働きもありますから、便秘の解消にも効果的です。
その結果、太りにくい体質となり、肥満も解消してくるというわけです。
また、タマネギの硫化プロピルには、糖を分解して血糖値を下げるとともに、中性脂肪やコレステロール値を下げる働きもあります。
さらに、酢にも、食後の血糖値の急上昇を抑制する作用があります。
タマネギや酢の作用の相乗効果が、糖尿病や肥満に働きかけるのです。

「酢タマネギ」の基本の作り方
【材料】
・タマネギ・・・1個(200~300g)
・塩・・・少々
・酢・・・適量(タマネギが浸るくらいの量)
・ハチミツ・・・適量(大さじ2が目安。好みで増減してもよい)
※酢は、米酢、黒酢、リンゴ酢など醸造酢であればなんでもよい。
【作り方】
①タマネギは皮をむいて半分に切り、薄切りにする。
縦切りでも横切りでもお好みで。

②塩を振りかけ、よく混ぜる。
※塩をまぶすのは、タマネギに酢やハチミツを浸透させやすくするため。
血圧が高い、腎臓に疾患があるなどで塩分を制限している人などは使わなくてもよい。

③②を密閉できる容器に入れ、タマネギが浸るくらいまで酢を入れる。
※容器は酸に強い素材で密閉できるものであればガラスでもプラスチックでもなんでもよいが、プラスチックの容器はタマネギや酢のにおいが容器について取れにくいので、ガラスの密閉瓶がお勧め。

④ハチミツを少量の湯で溶かし、③に加えてよく混ぜる。
※ハチミツを入れると味がよくなるが、糖分が気になる人は入れなくても構わない。

⑤④を密閉して、出来上がり!冷蔵庫で保存する。
※漬けてから、冷蔵庫で1週間から10日は保存できる。

【食べごろ】
食べ頃は漬けて5日目くらいから。漬けて2時間ほどで食べられるが、数日漬け込んだほうが、味がなじんでマイルドになり、食べやすい。
【食べる量の目安】
●1日のうち朝と晩の2回、食事時に約50g(小皿に1杯程度)食べるのがお勧め。
●漬け酢も一緒に飲むとよい。1日量の目安は、さかずき1杯(10~20ml)程度。
見た目はもちろん体の中から若返る
腸内フローラの乱れは、肥満や便秘ばかりではなく、動脈硬化や高血圧をはじめとした生活習慣病、ガン、認知症、アレルギー疾患など、実に多くの病気を引き寄せます。
この原因として近年注目を集めているのが「リーキーガット症候群」です。
悪玉菌が作り出す有害物質が腸内にたまると、腸の粘膜細胞が傷ついてしまい、炎症が起こったり、腸の粘膜に穴が開いたりします。
これがリーキーガット症候群です。
腸粘膜に開いた穴から、悪玉菌が出す毒素や未分解のたんぱく質、アレルゲンとなる化学物質まで血液中に漏れ出してしまいます。
また、腸内も異物の侵入を受けやすくなり、さまざまな病気の元凶となります。
リーキーガット症候群の予防には、善玉菌を優位にする食生活が大切です。
そのためには、発酵食品である酢と、食物繊維が豊富なタマネギを組み合わせた酢タマネギは最適です。
また、腸内環境と老化は大きく関与していますから、私の肌ツヤがよくなったことや髪の毛が増えたことも、腸内環境の改善が大きくかかわっています。
酢タマネギを毎日の食事に取り入れることは、健康と若さを手に入れる近道なのです。
