難聴の程度に合わせくり返し調整する
補聴器を購入する際、「手軽だから」という理由で、通販や補聴器の専門スタッフのいない量販店などで購入する人が少なくありません。
また、家族を思う気持ちから、自分の親御さんのいないところで購入した補聴器をプレゼントする人がいます。
しかし、これらはどれもお勧めできません。
2007年の国民生活センターの調べによれば、補聴器や集音器10銘柄を調査した結果、出力の最大音が120㏈を超える銘柄が7銘柄もありました。
120㏈という音の大きさは短時間聞いていただけで、耳に大きなダメージを与える、耳にとって危険な音量です。
つまり、自分用に調整していない不適切な補聴器を使っていると、聞こえがよくなるどころか、かえって耳に有害となって難聴を進行させてしまう恐れがあるのです。
日本耳鼻咽喉科学会では、耳の聞こえや補聴器について専門知識を持つ補聴器相談医を認定しています。
聴力検査や言葉の聞き取り検査などを行い、補聴器が必要かどうかを医師に判断してもらいましょう。
一般には40㏈を超える難聴になると、日常生活に聞こえの不便が出始め、補聴器を考える目安となります。
そして補聴器が必要となったら、医師に認定補聴器専門店を紹介してもらいましょう。
認定補聴器専門店とは、補聴器の調整技能を有する「認定補聴器技能者」という専門スタッフがいて、補聴器の調整、補聴効果を測定する設備が整った店舗を指します。
また、補聴器販売店によっては、調整された補聴器が自分に合ったものかどうか試せる無料の貸出期間(試用期間)を設けている店舗もあるため、利用するといいでしょう。
補聴器は、1台5〜50万円と価格にかなり幅があります。
多機能や細かな調整機能などが価格に反映されている面もありますが、それぞれの機能が本当に使う人にとって必要かどうか、製品内容をよく聞いて納得した品を購入することをお勧めします。
補聴器を購入して使用している人も、適切なレベルで補聴器が効果を示しているか、難聴が進行していないかなどを確認するため、定期的に耳鼻咽喉科で診察を受けるといいでしょう。
補聴器は購入した後も、使う人の状況に合わせて微調整や点検をくり返すことが、上手に使う秘訣です。
メガネと違って、購入した後も何度でも音質を変更したり、音量レベルを変えたりすることができます。
補聴器を利用して自身の聞こえの能力を十分に活用し、会話を楽しんで健やかな毎日を過ごしましょう。

解説者のプロフィール

内田育恵(うちだ・やすえ)
愛知医科大学耳鼻咽喉科特任准教授、国立長寿医療研究センター客員研究員。
1965年生まれ。
90年、大阪医科大学卒業。
米国留学、名古屋大学医学部耳鼻咽喉科助手、非常勤講師等を経て、2010年、国立長寿医療研究センター耳鼻咽喉科医長。
11年愛知医科大学耳鼻咽喉科講師を経て15年より現職。
12年、『全国高齢難聴者推計と10年後の年齢別難聴発症率―老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)より』にて日本老年医学会優秀論文賞受賞。
●愛知医科大学
http://www.aichi-med-u.ac.jp/su06/su0607/su060703/21.html