足指を動かさない生活が末端の血流を悪くする
現代人は、イスに座ってパソコンばかり、使うのは目と頭だけ……。
こういうと、「ジムに通って体を鍛えている」「よく歩くようにしているから大丈夫」という人がいます。
しかし、たとえ運動を心がけている人でも、血流の鍵を握る「足指」は、意外に使っていないものです。
指は体の末端です。心臓から送り出された血液は、末端まで行って、また心臓へと折り返してきます。
足指を動かさないでいると、血液は末端で停滞します。
すると血流が悪化し、疲労やむくみ、肥満、肩こり、腰痛などの原因になります。
ひどくなると、心不全やエコノミークラス症候群のように、命にかかわる病気を引き起こしかねません。
また下半身が冷えやすくなり、排泄機能や男性機能の低下の原因に。
頻尿、尿もれ、勃起不全などの症状に悩まされることになります。
特に、高齢者は要注意です。年を取れば取るほど筋肉は弾力を失い、血液を押し戻す力が弱まってしまうもの。
すると血液やリンパ液(体内の余分な水分や老廃物、毒素などを運び出す体液)の循環が悪くなり、末端には代謝されない老廃物が積もりに積もってしまいます。
さらに、高齢者の足の裏を見てください。
皮膚が厚く、硬くなっているでしょう。
皮膚が厚くなればなるほど、その下の血管は細くなり、ますます血が流れにくくなってしまいます。
それを防ぐには、足指を意識的に動かし、ポンプのように血液を押し戻してあげることです。
実は、一昔前の日本人は、日常的に足指を動かしていました。
日本人の暮らしは、ずっと畳の生活だったので、正座から立ち上がるときには、必ず足指を使っていたのです。
足指を90度に曲げて踏ん張るから、立ち上がることができるのです。
これが足指への刺激となり、ポンプ効果で効率的に血を押し戻してくれていました。
また、私が子どものころは下駄で通学していたものですが、下駄は足指で鼻緒をキュッとつかまないと歩けません。
それにくらべ靴は、いくら歩いても足指が少ししか動きません。
イスに靴の現代人のライフスタイルでは、血の巡りが悪くなるばかりというわけです。
物忘れの原因は頭にたまった気
足指を使わないと血流だけではなく、気(一種の生命エネルギー)の流れも停滞します。
特に、パソコンやスマホをよく使う人は、常に頭に気が上っている状態。
こうなるとボーッとして集中力に欠け、物忘れも多くなります。
気の停滞を解消するには、上半身にたまった気を下へと流してやることです。
気の通り道を経絡といいますが、足には6本もの経絡が通っています。
足指を動かし、経絡に気を通すことで、全身に気が巡ります。
それと同時に滞った血も心臓に戻るので、血流、リンパ液、気、すべてが巡り始めます。
血と気の停滞解消法として、ぜひ行ってほしいのが、私が考案した足指そらし、「足の指立て」です。
指立てというと腕立て伏せを連想して、きつくて辛い印象を受けるかもしれませんが、そんなことはありません。
やり方は簡単です。
正座してからつま先立ちし、そこからさらに足指を伸ばします。
このとき、体重を足指で持ち上げるのではなく、一緒にお尻も持ち上げます。
「いち、に、いち、に」とリズミカルに足指を立てましょう(詳しいやり方は下の図解を参照)。
体力のない人は、低めのテーブルや台に手やひじをついて行ってください。
足の指立てのやり方

万病に効くエクササイズ
足の指立てをすると、即効で効果が現れるのが、睡眠です。
実践した人からは「熟睡できた」「寝付きがよくなった」という反響が大きく、また熟睡することで自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)が整うので、さまざまな体調不良も解消していきます。
だるさ、疲労感が取れ、血圧が安定。目と頭がスッキリし、集中力が増して、やる気がわいてきます。
さらに泌尿器の血流も改善されるため、頻尿が改善され、性力も復活します。
現代人にとって、足指をいかに刺激するかが、若さを保つ秘訣です。
足の指立ては、まさに万病に効くエクササイズといえるでしょう。
解説者のプロフィール

留目昌明
1948年、青森県生まれ。明治大学農学部、東京鍼灸柔整専門学校卒業。治療と並行し、ミネラルが豊富な「薬になるリンゴ」を作る。著書に『百姓として治療師として「体にいいこと」伝えたい』(かんき出版)がある。