だしを使った和食は究極の健康食
一汁三菜が基本の和食は、理想的な健康食です。
そしてその和食の要である「だし」が今、世界的に注目されています。
だしを使った料理は、高血圧を抑える食事とほぼ同じです。
だしをきかせることでうま味が出て、塩分を減らせるからです。
また、だしを使った料理は、肉や動物性脂肪とは無縁で、カロリーが少なめです。
したがって、だしを使う和食をメインにすれば、肥満やメタボリック症候群の解消につながり、体調も整っていきます。
簡単に取ることができるのも、だしのメリットです。
例えば、フランス料理の味の基本になるブイヨンは、数時間以上、ときには何日も煮込まなければなりません。
一方、カツオ節やコンブなどを使えば、味わい深いだしを短時間で取ることができます。
それだけでなく、だしの素材には、健康に役立つ多くの成分が含まれており、だしを活用することで、それらの成分を日常的に取り入れることができます。
主なだしの素材の健康効果について解説しましょう。
だし素材の健康効果

①コンブ
コンブには、海のミネラルが詰まっています。
ヨード、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムのほか、人体に必須のミネラルのほとんどが含まれています。
また、アルギン酸やフコイダンといったヌルヌル成分(水溶性食物繊維)も豊富です。
これらには、脂質や糖質の吸収を抑えたり、ナトリウムの排出を促して、コレステロール値や血糖値、血圧の上昇を抑える作用があります。
また、フコイダンは免疫(病気に抵抗する働き)を高める効果も知られています。
②カツオ節
カツオ節にはアミノ酸が豊富で、しかも、体内で合成できない必須アミノ酸がすべて含まれています。
今注目されているのは、二つのアミノ酸が結合してできた、アンセリンという物質です。
これには、抗疲労効果や、尿酸値降下作用があることがわかっています。
③煮干し
煮干しの主な材料であるイワシは、EPA、DHAの宝庫です。
どちらも青魚に多い不飽和脂肪酸で、血流をよくする作用があります。
特に、EPAには血栓(血液のかたまり)を防ぐ作用、DHAは脳の神経細胞に働きかけて脳を活性化する作用があります。
魚が苦手な人は、煮干しだしでこれらの青魚成分を取ることができます。
また、煮干しにはカルシウムが多いので、だしがらも丸ごと食べると、カルシウムやたんぱく質の補給にも役立ちます。
④干しシイタケ
シイタケは天日に干すことで、うま味成分だけでなく、栄養成分もギュッと凝縮されます。
特に、紫外線によって増えるのがビタミンDです。
ビタミンDは、カルシウムを吸収したり、骨にカルシウムを沈着させたりして、骨を丈夫にします。
また、シイタケ特有の成分であるエリタデニンには、コレステロールを減らして動脈硬化を予防する働きがあります。
加えて、免疫を高めてガン予防に役立つβ‐グルカンも含まれています。
だしパウダーを作っておくと便利
私自身も、普段からコンブだしやカツオだしを、お茶の代わりに飲んでいます。
天然の塩味があっておいしく、飽きがきません。
ですから、長く続けられます。
おかげで、私は還暦を過ぎても健康で、疲労の回復も早いようです。
また、手軽にだしを取る方法としてお勧めなのが、だしパウダーを作っておくことです。
これは、コンブ、カツオ節、煮干し、干しシイタケをミルなどにかけ、粉末状にするだけです。
これをびんに詰めておけば、いつでもだしとして使えます。
また、料理にちょい足ししたり、ごはんにふりかけたりすれば、栄養の補給にもなります。
それぞれの割合は好みでいいですが、シイタケは少なめのほうがおいしいようです。
味覚は習慣ですから、濃い味に慣れていると、だしの味が薄く感じられるかもしれません。
しかし、だしを使う食生活に替えていけば、徐々に味覚が鍛えられ、薄味でも満足できるようになり、おのずと健康的な食生活を送れるようになります。
ぜひ実践してみてください。
解説者のプロフィール

秋津壽男(あきつ・としお)
秋津医院院長。
日本内科学会認定専門医、日本循環器学会認定専門医、日本体育協会公認スポーツドクター。
『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京)など、テレビでもおなじみのスーパードクター。
『血管が若返る!黒豆茶健康法』(ナツメ社)など、著書・監修書多数。
●秋津医院
東京都品川区戸越3-1-2
TEL 03-5749-2062
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