解説者のプロフィール

栗原毅(くりはら・たけし)
栗原クリニック 東京・日本橋院長。
北里大学医学部卒業。
前慶應義塾大学大学院教授、前東京女子医科大学教授。
2008年より現職。医療過疎地とテレビ電話を利用した遠隔治療を行うなど、予防医学の実践者として活躍。
『糖尿病は歯ブラシで治せる』(マキノ出版)、『緑茶を食べると、なぜ糖尿病や認知症に効くのか』(主婦の友社)など書著多数。
●栗原クリニック 東京・日本橋
東京都中央区日本橋3-2-6岩上ビル2F
TEL 03-3516-2200
http://k-sarasara.com/
ペットボトルの緑茶で毎日うがいを実践
近年、世界的に緑茶の人気が高まっています。
その背景には、緑茶が持つ多様な健康効果が、医学的に解明されてきたことが挙げられるでしょう。
身近なところでは、カゼやインフルエンザ、歯周病、口臭の予防策として「緑茶うがい」が注目されています。
緑茶の葉の渋み成分であるポリフェノールの一種であるカテキンの強力な殺菌作用で、細菌やウイルスを撃退してくれるのです。
緑茶うがいは私も実行していますし、患者さんにもお勧めしています。
外出時には常に緑茶のペットボトルを持参して、人混みに入った後や電車やバスの降車後、すぐに緑茶を口に含み、軽く口の中をすすいでから飲み込みます。
ペットボトルや缶入りの緑茶を購入するさいには、表示されている成分表を見て、カテキンの含有量が多いものを選ぶとよいでしょう。
緑茶の効果はこれだけではありません。
非アルコール性脂肪肝炎NASH(ナッシュ)の予防効果でも注目
茶葉に含まれるカテキンやコエンザイムQ10は、認知症の発病にかかわるアミロイドβ が、脳へ沈着するのを防いだり、改善したりする効果があるといわれています。
また、私が専門にしている肝臓病にも、カテキンがよいことがわかってきています。
最近では、非アルコール性脂肪肝炎NASH(ナッシュ)の予防効果でも注目されています。
ナッシュは、アルコールを飲まない人でも脂肪が肝臓に蓄積して炎症を伴い、肝硬変や肝臓ガンへも進展することがある怖い肝臓病です。
高濃度カテキンの緑茶飲料の摂取が、肝臓脂肪の減少と肝機能を改善することが、研究で明らかにされています。
そのことから、ナッシュの前段階で肝臓のダメージを抑える可能性が高まると考えられるのです。
また、ナッシュの起因には、体内で過剰に発生した活性酸素(体内で増え過ぎると細胞を傷つけ老化の一因となる物質)がかかわっています。
緑茶のカテキンは、体内、特に肝臓で発生する活性酸素を消去してくれることがわかってきました。
カテキンはメタボ改善にもよい、という研究もあり、多方面からナッシュへの進展を抑えてくれることが期待できます。
緑茶摂取と全死亡リスク
さらに、活性酸素の害を弱めることは、ガンの発生や進展の予防につながります。
多くの疫学研究により、緑茶は、肺、大腸、肝臓、胃など多くの臓器のガンの発生を遅らせることが報告されています。
国立がん研究センターらが1990年から、19年間にわたり、約9万人を対象に緑茶と死亡・死因について調査した結果では、緑茶を飲む量が多くなるほど死亡率が下がると判明しました。

朝は温かいお茶、夜は水出し茶が◎
緑茶に含まれるカテキンには、血糖値の上昇を抑制する作用も認められています。
カテキンで糖質の消化吸収がゆっくりになると、糖が血液中に吸収されるのが遅くなって、血糖値の上昇もおだやかになります。
結果、糖尿病の予防・改善効果が期待できるのです。
実際に静岡県立大学での研究で、緑茶を1日に7杯分ほど飲むことで、血糖値が改善されたことが報告されています。
カテキンは、80℃以上のお湯で入れると茶葉から溶け出しやすく、またそのときに覚醒効果のあるカフェインも一緒に溶け出ます。
頭と体がシャキッとするので、一日の始まりである朝に飲むとよいでしょう。
一方、就寝前は安眠をもたらす「水出し緑茶」がお勧めです。
水で出した緑茶には、緑茶の旨み成分テアニンが多く溶け出ます。
テアニンは、副交感神経を優位にして、心身をリラックス状態に導きます。
夜は水で入れた水出し緑茶を飲むと、ぐっすりと熟睡できるでしょう。
暑い時期は、水出し緑茶を冷水ポットに作っておき、こまめに飲めば水分補給となり、熱中症にもなります。
最後に少々余談になりますが、私は現在、北海道積丹町で茶葉を育てる試みを始めました。
これが成功すれば、積丹は世界最北端の茶処になります。
町興しの目的もありますが、すでに完成している老人介護施設の入居者の方々の健康維持に、地元で取れた緑茶が役立てば、素晴らしいことだと思うのです。
まさに緑茶の可能性は無限大です。
日本が世界に誇る、スーパードリンクといっても過言ではないでしょう。
