体の状態は心の声と密接に関係している

私は学生時代、西洋医学を学ぶかたわら、東洋医学も探求してきました。
医師になってからも、東洋医学を大いに治療に役立てています。
東洋医学の考え方の基本として、「気・血・水」というものがあります。
この3つが、滞りなく体内を流れていれば、健康を維持できるとされているのです。
なかでも私たちの健康を大きく左右するのが「気」。
気の流れがよければ、おのずと血(血液)や水(リンパなど)もスムーズに流れるようになるからです。
気とは、体内の生命エネルギー。
東洋医学ではこの気の流れる道すじを経絡と呼んでいます。
その気の流れを詰まらせる原因の1つが、ストレスです。
多くの現代人は、ストレスによって気の流れが滞り、さまざまな病気に陥りやすくなっていると考えられます。
また、体の冷えも、気を滞らせる大きな原因です。
そこで、気をじゅうぶんに巡らせるために、ぜひお勧めしたいのが、今回ご紹介する「お気楽気功」です。
一般的に、気功というと、かなり修行や訓練をしないとできないのではないかと思われがちですが、そんなに難しく考える必要はありません。
お気楽気功の詳しいやり方は、別記事でご紹介しますが、誰でも簡単にできるものばかりです。
この一連の気功を行うことで、気の詰まりを取り去り、全身に巡らせることができます。
すると、血流やリンパの流れ、体の代謝がよくなり、ひざ痛や腰痛、肩こりなどの痛みから、糖尿病や高血圧といった生活習慣病、近視・老眼などの視力低下やドライアイ、さらにはシミやシワ、たるみなどの美容からダイエットに至るまで幅広い効果が得られるのです。
お気楽気功を行ううえでたいせつなのが、イメージ力です。
私たちの体の状態は、心の声と密接に関係しています。
例えば、自分は冷え症だと思うと、体がその声を察知して気の流れが悪くなり、ほんとうに冷え症になってしまいます。
すると水の流れが滞って体の各所にたまるようになり、さまざまな痛みが現れます。
その逆に、体が温かいと思うと、自然と体が温まってきます。
実際、心療内科で使われる自律訓練法(自己催眠療法)などでも「右手が温かい、左手が温かい、右足が温かい、左足が温かい、右足の裏が温かい、左足の裏が温かい」と意識するだけで、血管が開いて血流が増すのが実証されています。
気功をやるときには、心地よいイメージ、気が滞りなく流れていくイメージを持って行ってください。
自分をほめ、認め、ゆるす。気を楽にする「お気楽気功」

さて、お気楽気功のいいところは、経絡上のツボを効果的に刺激することができることです。
これにより気の詰まりが取れて、血液やリンパなどもスムーズに流れるようになり、健康に大きな効果を及ぼします。
そして、気持ちもリラックスすることができ、自律神経(※意思とは無関係に血管や内臓の働きを調整している神経。興奮をつかさどる交感神経と休息をつかさどる副交感神経が拮抗的に働く。)の副交感神経が活性化します。
お気楽気功でいちばん初めにするのは、大きく口を開けること。
これを行うと、体の緊張がほどけて、副交感神経が優位になり、血流がよくなります。
この動作をするだけでも、血圧が10~20mmHgくらいはすぐに下がることがわかっています。
その後、頭部から足に向かって、軽くたたいたりさすったりしながら、体じゅうのツボを刺激していきます。
そうすると、気や水がスムーズに動いて、体の中の悪いものが流れていくようになります。
さて、お気楽気功でメインとなるのは、鎖骨の下に手を交差して当ててさすりながら、自分をほめ、認め、ゆるす気功です。
「○○ちゃん(自分の名前)、いつもありがとう」「よくがんばっているね」「でも無理しなくてもいいんだよ」「大好きだよ」などと自分に優しい声をかけながらやるのです。
すると、体が「あー、そうなんだ」と認識して、ふーっと気が緩んで楽になり、副交感神経が優位になって、気が流れ始めます。
「もっとがんばらなくては」とか「自分はダメだ」といった自分を追い詰める思いを持つのは禁物です。
そうすると、交感神経が興奮して、気の流れが悪くなってしまいます。
特に若い世代は、自分とうまくつきあえない人が増えています。
自分を追い詰める気持ちが、気の流れを悪化させ、うつなどの心の病気を発症させるのです。
もっと、自分を認め、かわいがってあげることで、こうしたうつ症状も取り除かれます。
ぜひ、お気楽気功で、体の不調を改善し、明るくいきいきとした生活を送ってください。
次の記事では「お気楽気功」のやり方をご紹介します。
解説者のプロフィール
能見登志惠
都筑ふれあいの丘クリニック院長