目で見た情報をスムーズに脳へ伝える
目は、とても精密で大切な器官です。
ですから、目の老化や病気を防ぎ、その機能を正常に働かせるためには、当然、たくさんの栄養素が必要になります。
そのために大切なのが、日々の食事です。
食べ物には、目の機能を高めたり、酸化ストレスから目を守ったりするなど、いろいろな目によい成分が含まれています。
目を健康に保つには、バランスのよい食事をすることが基本です。
それを踏まえた上で、特に皆さんに積極的に食べていただきたいのが、魚です。
近年、動物性たんばく質は魚から肉にとって代わられ、世代を問わず、魚を食べる機会が減少しています。
しかし、魚には、肉にはない目によい成分が含まれています。
それが、DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)です。
これらは、どちらも人間の体内では作れない不飽和脂肪酸で、背の青い魚の油に含まれています。
DHAとEPAは似たようなものだと思われていますが、その作用は若干違います。
DHAは脳に多く存在しますが、EPAは脳には存在しません。
脳の入り口には、血液脳関門という関所のようなところがあります。
ここで、脳に必要な物とそうでない物がふるい分けられます。
DHAは脳関門を通れますが、EPAは通れないのです。
このDHAを、脳以上に多く含むのが、目です。
昔から「魚の目を食べると頭や目がよくなる」といわれますが、これは、目にDHAが多いからです。
実は目は、脳の出先機関のようなところです。
胎児が成長する過程で、目は脳と同じ細胞から枝分かれしたものなのです。
したがって、脳に必要なDHAは、目にも必要なのです。
では、DHAは目でどんな働きをするのでしょうか。
目で見た物は、網膜で像を結び、それが視神経を通って脳に伝わることで、初めて視覚情報として認識されます。
DHAは、網膜や神経細胞に多く含まれる大事な成分で、視神経の伝達をよくする働きがあります。
したがって、DHAが目に十分あれば、物をしっかりとらえて、その情報をスムーズに脳に伝えることができます。
それによって、物の見え方の質が上がり、視力の改善や眼精疲労の回復につながるのです。
また、DHAの摂取を心掛けることで、視覚機能の改善はもちろんのこと、年齢とともに低下しがちな脳機能の維持、認知症やうつ病の予防、集中力の向上にも効果があるといわれています。
EPAとの相乗効果で目の機能を高める

一方、EPAには、全身の血流をよくする作用があります。
血中のコレステロールや中性脂肪を減らしたり、血液の凝固を防いで、血液をサラサラにしたりするのです。
これも、目によい効果をもたらします。
まぶたの縁には、マイボーム腺という皮脂腺があります。
ここから油が分泌され、涙の表面に油の層を作って、涙の蒸発を防ぎます。
このマイボーム腺に脂肪がたまって出口が詰まると、目が乾きやすくなり、ドライアイを引き起こします。
しかし、血中脂質が減って、まぶたの血流がよくなれば、マイボーム腺が詰まりにくくなり、油の分泌がスムーズになります。
また、目の血流がよくなれば、目の見え方や疲れなども改善しやすくなります。
このように、魚を食べると、DHAとEPAの相乗効果で、多方面から目の機能を改善できるのです。
DHAやEPAは、先ほども述べたように、青魚の油に含まれています。
イワシ、サンマ、サバ、マグロ、ブリなどに多いので、積極的に食べるといいでしょう。
厚労省の基準では、DHAの一日の目標摂取量は500mg、EPAと合わせて1日1gとされています。
これは、約90gの魚に相当します。
焼き魚ならイワシ1~2匹、マグロの刺し身なら4~5切れ食べるといいでしょう。
もちろん、脂の乗っている魚のほうが、含有量は多くなります。
DHAもEPAも、加齢とともに減少していきますから、40歳を過ぎたらなるべく毎日、魚を食べてください。
魚の缶詰なども利用するといいでしょう。
また、同じオメガ3系の脂肪酸(アマニ油やエゴマ油など)は、体内でEPAやDHAに変わりますから、こうした油で補うこともできます。
DHAやEPAが手軽に取れるサプリメントも市販されています。
忙しい人や、魚が苦手な人は、そういうものを利用してもいいでしょう。
ただし、サプリメントは、副作用や薬との飲み合わせなどが十分検証されていません。
あまりサプリメントに頼り過ぎず、なるべく自然の食品で取ることをお勧めします。
また、目にはビタミンA、C、Eなどのビタミン類、ルテインやアントシアニンのような抗酸化物質、亜鉛などのミネラルも必要です。
冒頭に書いたように、バランスのよい食事をして、目を守ってください。