【噛むことの健康効果】誤嚥性肺炎、歯周病、二重顎まで改善する「舌回し」体操

【噛むことの健康効果】誤嚥性肺炎、歯周病、二重顎まで改善する「舌回し」体操

噛む、飲み込む、発音するなど、口の様々な機能を支えているのが、繊細で複雑な舌の動きです。舌の筋肉とあごや口の筋肉との連携について調べたところ、舌を動かすことで、あごのゆがみをある程度予防できることが判明しました。そこで、私が推奨している口周りの運動が「舌回し」です。【解説】小出馨(日本歯科大学新潟生命歯学部教授)


舌骨筋が鍛えられ、たるみが引き締まる

 噛む、飲み込む、発音するなど、口のさまざまな機能を支えているのが、繊細で複雑な舌の動きです。

 私たちが舌の筋肉とあごや口の筋肉との連携について調べたところ、舌を動かすことで、あごのゆがみをある程度予防できることが判明しました。
 そこで、私が推奨している口周りの運動が「舌回し」です。これは、10年前に中国の蘇先生が学会で紹介した舌の運動と、従来示されてきた口周りのトレーニングを参考にしたものです。

 もともと、かみ合わせのずれや、あごのゆがみを防ぐ目的で皆さんに指導してきた舌回しですが、美容や全身の健康増進にも、非常に大きな効果を発揮することがわかってきました。

 舌回しが美容面で高い効果を発揮する理由は、主に三つあります。

 まず一つめは、のどぼとけの上にある舌骨が動くことです。舌骨は舌の根元とつながっており、周囲の舌骨筋とともに動いて、咀嚼や嚥下を助けています。この舌骨をしっかりと動かすことで、舌骨筋が鍛えられるので、二重あごやフェイスラインのたるみをすっきりと引き締めることができます。

 二つめは、顔や首にある70種類もの筋肉が刺激され、鍛えられることです。普段使われない筋肉や、たるみやすい筋肉を引き上げる効果があるので、ほうれい線や顔のたるみが改善されます。シワの予防にも役立ちます。

 三つめは、首から上にある多くの筋肉が同時に刺激されることで、顔と首に約200個存在するリンパ節が刺激され、リンパの流れが促されることです。老廃物を含んだリンパがスムーズに流れることで、顔のむくみやくすみを改善することができます。

睡眠時無呼吸症候群の予防・改善にも役立つ

 美容面以外の舌回しの効果についても、順に見ていきましょう。

●噛む力が強くなる
 舌回しをすると、食物を噛む力が強くなります。これによってしっかりと咀嚼が行え、消化器の負担が軽くなるほか、脳も刺激することができます。

●口呼吸の改善
 舌回しを行うと、口を閉じる筋肉も鍛えられます。このため、さまざまな体の不調を招く口呼吸が習慣となっていた人も、健康的な鼻呼吸に切り替えやすくなります。

●イビキの改善
 イビキの主な原因は、睡眠中に舌のつけ根が沈み込むことです。舌回しをすると、舌を引き上げる筋肉が強化されるため、イビキが改善されます。睡眠時無呼吸症候群の予防・改善にも役立つ可能性があります。

●むせにくくなる
 私たちが食事をするとき、飲食物が気管に入らないように、ふたの役目を果たす器官があります。この働きがスムーズに行われるためには、のどから首にかけて伸びている二つの筋肉(胸骨甲状筋と甲状舌骨筋)がしっかりと働く必要があります。かみ合わせ不良や咀嚼不足があると、これらの筋肉が弱って誤嚥しやすくなります。
 特に高齢者の場合、誤嚥から肺炎を起こし、生命の危険につながる場合が少なくありません。舌回しをすると、これらの筋肉が鍛えられるので、誤嚥を防ぐ効果が期待できます。

●肩こりや慢性頭痛の改善
 現代人の多くは、「左右どちらかの歯でばかり噛む」「横向き寝やうつぶせ寝」などの生活習慣によって、歯のかみ合わせのバランスが悪くなっています。それが、がんこな肩や首のこり、慢性頭痛を引き起こしているケースが多く見られます。
 舌回しをすると、口周りの筋肉のバランスが整い、かみ合わせのずれを予防することができるので、これらの不調が改善する場合があります。ただし、歯に原因があるかみ合わせの異常は、まず歯科医院で適切な治療を受けることが大切です。

●自律神経のバランスが整う
 舌を大きく動かすと、舌の奥やのどの奥の筋肉が働いて、迷走神経(内臓に分布し感覚、運動、分泌を支配する神経)が刺激されます。すると、副交感神経が活性化して、全身の内臓などに作用する自律神経のバランスが整うことが期待されます。

●姿勢がよくなる
 舌回しで口周りの筋肉のバランスが整うと、顔、首、背骨などのゆがみが連鎖的に正されて、姿勢がよくなります。姿勢の悪さが原因で腰や股関節、ひざが痛む人は、それらの改善も期待できるでしょう。

●免疫力が高まり若返る
 舌回しをすると、唾液の分泌が促されます。唾液には、抗がん作用を持つ酵素や抗菌作用を持つ酵素、さらにパロチンなどの若返りホルモンも含まれるので、舌回しの習慣をつけると免疫力が高まり、アンチエイジング効果も期待できます。

●ムシ歯・歯周病・口臭を防ぐ
 食後は、食物中の酸によって歯の表面のカルシウムがはがれ、歯が無防備になります。舌回しによって唾液が十分に分泌されると、唾液中から歯に素早くカルシウムが補充され、ムシ歯予防に役立ちます。
 また、唾液で口の中が洗い流されることで、歯周病や口臭の予防にもつながります。

舌回しのやり方

集中的に行うよりも継続することが大切

 舌回しは1日の中でいつ行ってもいいのですが、できれば朝、昼、晩の食後と、就寝前の4回行うのが理想です。時計回りと逆回りをそれぞれ20回ずつ行うのを1セットとして、2セット行います。

 初めのうちは無理をせず、5~10回ぐらいから始めてください。慣れてきたら30回ずつを目標にしましょう。

 舌回しは、2週間で効果が出始めますが、やめると元に戻ってしまいます。集中的に行うよりも、長い期間継続することが大切です。
 舌回しと一緒に行うとさらに効果的な「上あご押し」と「舌出し」もご紹介するので、あわせてやってみてください。

上あご押しのやり方

舌出しのやり方

こいで・かおる
日本歯科大学新潟歯学部卒業、日本歯科大学大学院修了。歯学博士。日本歯科大学新潟生命歯学部歯学科補綴学第一講座主任教授。 日本歯科大学大学院新潟生命歯学研究科機能性咬合治療学教授。かみ合わせ研究の第一人者としてテレビに多数出演。著書に『ベロ回し体操』(東京書店)などがある。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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