【不眠症】眠れない悩み“不眠恐怖”とは?服薬する前に知っておきたい「睡眠の定義」

【不眠症】眠れない悩み“不眠恐怖”とは?服薬する前に知っておきたい「睡眠の定義」

寝付きが悪い、夜中に何度も目が覚める――。日本人の5人に1人は、こんな睡眠の悩みを抱えているといわれています。「自分は不眠症だ」と思っている人もいるでしょう。しかし、必ずしも「眠れない」=「不眠症」とは限らないのです。【解説】小曽根基裕(東京慈恵会医科大学精神医学講座准教授)


「眠れない」イコール「不眠症」とは限らない

寝付きが悪い、夜中に何度も目が覚める――。
日本人の5人に1人は、こんな睡眠の悩みを抱えているといわれています。

「自分は不眠症だ」と思っている人もいるでしょう。
しかし、必ずしも「眠れない」=「不眠症」とは限らないのです。

睡眠障害国際分類第2版では、下の図の3点を満たした場合を、不眠症と定義づけています。

①は、残業が多くてまとまった睡眠時間が取れないなど、睡眠を妨げる条件がないのに、眠れないということです。
②は、入眠困難や中途覚醒などの不眠の症状が、1ヵ月以上続く状態をいいます。
③は、日中に、眠気やふらつき、倦怠感、集中力の低下などの異常があり、生活に支障をきたす状態です。

例えば、夜中に何度も目が覚めてしまっても、日中は問題なく過ごすことができていれば、不眠症ではないので、基本的には治療は必要ありません。

そうはいっても、「眠れない」ことに悩む人が多いのも、また事実です。

その原因として、若い人に多いのは、睡眠衛生上の問題です。
働き盛りの人は、残業などで帰宅が遅くなる場合が少なくありません。
神経が高ぶったままでは、床についても眠れないのは当たり前です。

高齢者によくみられるのは、身体的な原因です。
睡眠時無呼吸症候群や、むずむず脚症候群で眠りが妨げられる場合もこれに該当します。
うつ病や認知症などの精神疾患が、不眠を合併する例も少なくありません。

ほかにも、加齢による変化や、退職や子育て後の社会的立場の変化によるストレス、服用している薬物による不眠など、さまざまな背景があります。

「睡眠時間は8時間必要」は大きな誤解

しかし、高齢者でいちばん多い不眠の原因は、「不眠恐怖」です。
不眠恐怖は「不眠は心身に悪影響を及ぼす」といった思い込みによって生じます。

例えば、寝付きの悪さが2〜3日続いたとします。
こうした一時的な不眠は、状況によっては誰にでも起こりうる現象です。
しかし、「不眠=悪」と思い込んでいると、「今夜もまた眠れないのでは」と恐れてしまったり、床につくと条件反射で身体が緊張したりして、ますます眠れなくなります。

不眠に対する恐怖がさらに不眠を招くという、悪循環に陥ってしまうのです。

不眠恐怖は、睡眠に関する誤解が原因で生じます。
例えば「人間に必要な睡眠時間は8時間」と考えている人は少なくありません。
しかし、これは誤解です。

必要な睡眠時間は、人によって異なります。

「10時間寝ないと日中がつらい」という人もいれば、「6時間以下で十分」という人もいるのです。
厚生労働省の発表した『健康づくりのための睡眠指針2014』でも、必要な睡眠時間は、人によって異なると結論づけています。

「若いころよりも睡眠時間が短くなった」と不安を訴える人もいます。
これは、加齢による当たり前の変化です。
高齢になれば、睡眠のリズムは誰でも変わります。

夜中に目が覚める中途覚醒や、日中を含めて細切れ睡眠をくり返す多相性睡眠などは、めずらしくはないのです。
起きている時間に、日中の眠気や作業能力の低下、ふらつきや倦怠感などの支障がない限り、基本的に今の睡眠に問題はないと考えてください。

定義に該当しない限り治療は基本的に不要

睡眠は、意思とは無関係に起こる生理現象です。
がんばっても眠れるわけではありません。

ですから、眠れないときは「時間をもらった」と考えてはいかがでしょうか。

夜中に目覚めてしまう人は、あらかじめラジオを聞く、雑誌を読む、などと、もらった時間に何をするかを決めておけば、「眠れない」という事実が、あまり気にならなくなるはずです。

日常生活の工夫も、睡眠の改善に役立ちます。
就寝の1時間ほど前に入浴やストレッチをして体温を上げると、その後の体温の低下とともに眠りやすくなります。

また、日中の運動量を増やすと、眠りが深くなります。

私たちの体は、朝日を浴びた約15時間後に眠くなる仕組みになっています。
ですから朝は、できるだけしっかりと朝日を浴びてください。

アルコールの摂取は、かえって眠りが浅くなるという悪影響があります。
カフェインやタバコのニコチンは、就寝前に取ると、不眠の原因となります。

医療機関での治療は、不眠症の定義に該当しない限り、基本的には不要です。


ただし、激しいイビキや脚の違和感、意欲・食欲の低下などの症状を伴う場合は、心身の病気が原因で睡眠障害が起こっている可能性がありますので、その場合は、一度医療機関にご相談ください。

小曽根基裕
1964年生まれ。89年東京慈恵会医科大学卒業。専門である睡眠障害治療の名医として著名。睡眠に対する正しい知識を広めるため、治療と並行して、講演活動やテレビ・雑誌などへの出演も積極的に行っている。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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