薬なしで眠れた、顔のこわばりも消えた
頭痛やめまい、不安症といった症状とともに生じる不眠は、睡眠薬などの効果が不十分であることも多く、対処が難しいのが特徴です。
このような不眠に対して、私が5年前から治療に導入して、効果を感じているのが「オルゴール療法」です。
オルゴール療法とは、スイス製のオルゴールの奏でる音色と澄んだ響きを聴くだけで、脳幹の血流を促し、自然治癒力を引き出すという治療法です。
オルゴールの響きをより体に入れるために、療法を受けるときは、専用のヒノキのベッドに横になってもらいます。
そして、クラシックの名曲「カノン」や「ラ・カンパネラ」などのオルゴールを1時間ほど聴いてもらいます。
曲の長さや聴き方は、患者さんの症状や好みに合わせてアレンジします。
これをだいたい、週1回のペースで行います。
それでは、オルゴール療法によって、不眠が改善した症例をいくつかご紹介しましょう。
頭痛、めまい、顔のこわばりを訴えて来院された50代の女性は、「睡眠薬を飲んでも効かず、夜眠れない」とのことでした。
そこで、オルゴール療法を10回行ったところ、薬を飲まなくても眠れるようになりました。
ちなみに、顔のこわばりもよくなり、血圧も安定しました。
次に、70代の女性Sさんは、オルゴール療法のことを雑誌で知り、当院を訪ねてきました。
ジージーという耳鳴りと重度の肩こり、不安感があり、「精神安定剤を飲んでも、夜中にドキドキして何度も目が覚める」とのこと。
Sさんは、オルゴール療法5回目で、まず耳鳴りが軽減。
10回目で肩こりも軽くなり、夜間ぐっすりと眠れるようになりました。
今でも精神安定剤は服用していますが、以前と違って、薬が効くようになり、不安感も軽減しています。
オルゴールを聴いた後は自律神経が整う
私は、オルゴール療法の効果を客観的に検証するために、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)のバランスを指先で測定する検査機器を導入し、オルゴール療法の前後で、自律神経のバランスがどう変化するかを測定しました。
その結果をまとめたものが、下のグラフです。
この検査では数値がゼロに近づくほど、交感神経と副交感神経のバランスが取れていることになります。
療法後は、ほぼすべての患者さんの数値が正常域に近づいていることがわかります。
自律神経のバランスが整えば、全身の機能が正常に働くようになるため、西洋医学での治療困難な症状が軽快していくのでしょう。
不眠やうつ傾向の患者さん、認知症の高齢者では、交感神経の活動度が低いケースが目立ちます。
オルゴール療法は、自律神経の働きが低くても高くても、聴くだけで自律神経のバランスを正常化させる作用があります。
また、私はMRI(磁気の力を利用し、体内の血管や臓器を撮影する検査)で、オルゴール療法による脳の血流の変化を調査したこともあります。
10名の患者さんを測定した結果、オルゴール療法後は、全員、脳幹の血流がよくなることを確認しました。
免疫・自律神経の中枢である視床下部の血流も改善していました。
患者さんからは、「オルゴールを聴いているうちに汗が出てきた」「体がポカポカする」という声がよく聞かれます。
実際、体温を測ると、療法後には0.3~0.5度ほど上昇するので、自律神経を改善することにより、おそらく脳だけでなく全身の血行もよくなっていると考えられます。

星野茂
ほしの脳神経クリニック院長。脳神経外科診療と各種脳神経関連症状に対する診療を行うほか、症状の根本療法を目指し、オルゴール療法、コウノメソッド、東洋医学療法(吸い玉、円皮鍼など)、積極的に治療に取り入れている。