解説者のプロフィール
パソコンやスマホの光で目が疲れると不眠になる
最近、疲れ目やかすみ目といった目の症状と同時に、不眠を訴える人がいます。
よく「眼精疲労」という言葉を耳にしませんか?
眼精疲労とは、目を使うことによって体にさまざまな悪影響が出現し、休んでもそれが解消できない状態のことをいいます。
具体的には、目の痛み、かすみ、まぶしさ、充血といった目の症状だけでなく、頭痛、肩こり、吐きけなどの全身症状まで、すべて眼精疲労に含まれます。
そして、不眠もまた、眼精疲労の症状の一つとして起こることがあります。
他の症状も同様ですが、そこには近年のパソコンやスマートフォンの使う時間の増加が、大きく影響していると考えられます。
というのも、目の疲れから不眠が起こる理由として、パソコンやスマートフォンのLED画面に多く含まれる、ブルーライトの影響が考えられるからです。
ブルーライトが体内時計を狂わす
本来、太陽の光で目覚めて、日が沈むと眠くなるというように、人間の体には体内時計が存在します。
この体内時計は、網膜が太陽光に含まれる青い光を感じることでつくられています。
網膜が青い光を感知すると、メラトニンというホルモンの分泌が抑制され、脳は「朝だ」と判断して、体を目覚めさせます。
一方、青い光がないとメラトニンの分泌が増え、脳が「夜だ」と判断して、眠けを催すのです。
ところが、夜遅くまでパソコンやスマートフォンの画面を見ていると、ブルーライトによって脳は「朝だ」と勘違いします。
その結果、眠れなくなり、体内時計が狂って、やがて睡眠障害へとつながっていくのです。
もう一つ、同じ姿勢を長く続けることで、筋肉が硬直し、血流が悪くなっていることも関係しているでしょう。
目に関していえば、近いところばかり見て作業していると、毛様体筋というピントを合わせる筋肉が緊張し、血流が悪くなります。
筋肉が緊張し、血流が悪くなった状態は、自律神経(心臓や血管など意思とは関係ない働きをつかさどる神経)の交感神経(活動時に働く神経)が優位になった状態です。
そうなると神経が高ぶって、夜になってもなかなか眠ることができません。
その状態が長く続くと、自律神経のバランスが乱れ、睡眠障害の原因になるのです。
ですから、目の疲れからくる不眠を解消するには、夜間、特に睡眠前は、できるだけパソコンやスマートフォンを見ないことです。
また、夜に網膜に入るブルーライトを抑制すると同時に、朝日を浴びることも心掛けるとよいでしょう。
朝、散歩をすれば、朝日を浴びられるだけでなく、体を動かすことで血流改善にもつながります。
血流改善という意味では、ウオーキングやエクササイズなど、軽く汗をかくような有酸素運動を行うのも効果的です。
そして、目の筋肉をほぐし、血流を改善するには、「目の枕」がお勧めです。
目の枕とは、目を温めるためのものです。
目の血流を促して疲れを取る目の枕
手軽なのは、入浴中に行う目の枕です。
湯ぶねのお湯に浸したタオルを軽く絞り、まぶたの上にのせるだけ。
冷めたら、再度お湯に浸せばよいので、常に温かいタオルで目を温めることができます。
お風呂に浸かりながらやれば、体も温まるので、全身の血流もよくなります。
血流がよくなれば、自律神経の副交感神経(リラックス時に働く神経)が刺激され、リラックスモードになって眠りやすくなります。
夜、寝る前にお風呂に入り、湯ぶねに浸かって5分くらい目の枕を行うとよいでしょう。
そのほかにも、最近は温めるタイプのアイマスクが、ドラッグストアなどで市販されています。
これらは一定の温度を維持することができるので、お風呂場以外で目を温めたいときに便利です。
仕事場などで目が疲れたときにやるのもお勧めです。
私の医院では、近赤外線で目を温める温熱治療を取り入れています。
それ以外に、夜はできるだけパソコンやスマートフォンを見ないこと、朝日を浴びること、自分でも目を温めるとよいことなどをアドバイスしています。
これらを実践することで、目の不快症状が取れると同時に、ぐっすり眠れるようになったという人も、実際におられます。
皆さんも、まずは簡単にできて気持ちいい目の枕を、生活の中に取り入れてみてください。
お湯に浸したタオルを軽く絞り、まぶたの上にのせるだけ

松本拓也
松本眼科院長。日本眼科学会専門医。最適の治療、最新の治療をモットーに、丁寧な説明と、患者に
病気の状態を理解し納得してもらうことを大切にしている。治療のかたわら、テレビや新聞、雑誌にも多数登場し、目についての啓蒙に努める。
●松本眼科
http://www.eonet.ne.jp/~matsumoto-eye/pc1.htm