【直腸性便秘】便を出す効果的な方法「考える人のポーズ」 大腸肛門科専門医が実験で確認

【直腸性便秘】便を出す効果的な方法「考える人のポーズ」 大腸肛門科専門医が実験で確認

便秘は①大腸の動きが遅く便がなかなか直腸まで下りてこない②便は直腸まで下りてきているが、うまく排出できない の2タイプです。②を「直腸性便秘」と呼びます。便意を感じにくくなる、便が非常に硬くなる、残便感がある、排便時に痛みや違和感があるなどの特徴があります。【解説】高野正太(大腸肛門病センター高野病院肛門科部長)


高野正太
東京医科大学卒業。慶應義塾大学病院を経て、2005 年(医)高野会高野病院入職。11 年より米国Cleveland Clinic Florida に留学。13年に高野病院に復職。現在、(医)高野
会大腸肛門病センター高野病院肛門科部長、大腸肛門機能科部長。肛門疾患ならびに大腸肛門機能を専門として排便障害(便秘、便もれ)の診療にあたる。日本大腸肛門病学会専門医。

排便しやすい姿勢と実験で証明された

有名なロダンの彫刻「考える人」は、皆さんもご存じでしょう。
ひざの上にひじを乗せ、背中を丸めたあの姿勢。

よく、洋式トイレでいきんでいる姿のようだと言われます。
実は、この「考える人のポーズ」こそが、排便しやすい理想の体位であることが、私たちの研究によって明らかになりました。

昔から医療現場では、前傾姿勢のほうが便を出しやすいことが経験的に知られており、患者さんにも指導してきました。
私たちは、その有効性を初めて科学的に実証したのです。

この研究は、私が2013年当時に勤務していた米国のクリニックで行った実験をまとめ、米国の医学専門誌に論文を発表したものです。
詳しい内容を紹介しましょう。

実験では、便秘など排便の困難を訴えてクリニックを受診した患者さん約50人を対象に、了解を得たうえで、バリウムと小麦粉などで作った偽便(ニセの便)による排便造影検査を実施しました。
直腸(腸の肛門直前の部分)に便がたまった状態を擬似的に再現し、排便のさいの直腸や肛門などの動きをX線で撮影して観察したのです。

実験に参加した人のうち、22人(うち女性17人、平均年齢56歳)は、背すじを伸ばして座った通常の姿勢では偽便を排出できませんでした。
そこで、この人たちに「考える人」のようにひじをひざにつける前傾姿勢をとってもらったところ、半数の11人が完全に偽便を排出することができたのです。

直腸肛門角が開き便が出やすくなる

なぜ「考える人」のポーズで便が出やすくなるのでしょうか。
それは、前かがみの姿勢になることによって、直腸と肛門の角度が開くからです。

肛門から直腸にかけては、まっすぐ直線になっているのではなく、間に曲がり角があります。
この曲がり角を「直腸肛門角(下のイラスト参照)」と呼びます。

立っているときや、あおむけに寝ているときのように、頭からおしりまでがまっすぐになる姿勢では、直腸肛門角はほぼ90度になります。
恥骨直腸筋という筋肉によって、直腸が恥骨側に引き上げられるためです。

こうすることで出口が閉まり、便が外にもれないわけです。
それが前傾姿勢をとると、恥骨直腸筋がゆるんで直腸肛門角が開き、便が出やすくなります。

私たちの実験では、「考える人」のポーズをとると、背すじを伸ばして座った姿勢のときと比べて直腸肛門角が平均で21度広がり、134度になりました。
その分、直腸と肛門の角度が直線に近くなり、便が通りやすくなるわけです。

ちなみに「考える人」の彫刻は、あごを片手に乗せていますが、これは効果には関係ありません。
「ひじとひざが着くように前傾する」ことがポイントなのです。

また、彫刻はつま先立ちのようにかかとが上がった状態ですが、排便のさいは、かかとを床に着けたほうがふんばりが効いて、力が入りやすくなります。
ただし、ひざの位置が上に来たほうがより直腸肛門角が開くので、20cmほどの高さの台をトイレに置き、足を乗せると、よりよいのではないかと考えています。

便秘のタイプにより有効な対策は違う

一口に便秘といっても原因はさまざまですが、大まかにいうと、次の2つのタイプに分けられます。

①大腸の動きが遅く、便がなかなか直腸まで下りてこないタイプ
②便は直腸まで下りてきているが、うまく排出できないタイプ

このうち②のタイプを「直腸性便秘」と呼びます。
直腸性便秘は「便意を感じにくくなる」「便が非常に硬くなる」「残便感がある」「排便時に痛みや違和感がある」などの特徴があります。

一般的な便秘(①の「大腸の動きが遅いタイプ」)には有効な対策が、②では効果として現れにくく、慢性化しやすい傾向も見られます。
例えば、直腸性便秘の人に大腸の動きをよくする薬を用いても、出口に問題があるので、結局のところ便は出ず、かえって腹痛や下痢を起こしたりしてしまいます。

「考える人」のポーズは直腸性便秘、中でも特に、排便時に直腸恥骨筋などの筋肉がうまくゆるまない人や、おなかの筋肉がうまく動かずに腹圧がかけられない人に有効と言えるでしょう。

ラジオ体操が便秘にはお勧め!

便秘改善には日常生活の習慣もたいへん重要ですが、どちらのタイプかによって有効な対策が変わってきます。
まず、①の「大腸の働きが遅いタイプ」の人は、食事の内容と水分の摂取に気をつける必要があります。

よく食物繊維の必要性が言われますが、食物繊維ばかりをとりすぎても、便が硬くなって排出されにくくなってしまいます。
食物繊維と水分をいっしょにとることが大事です。

水分も「1日に1・5~2L」と言われますが、飲み物だけでその量をとろうと思うと、意外とたいへんです。
汁物の料理や、間食にゼリーや果物をとるなど、いろいろな形で水分をとるといいでしょう。

また、腸内環境を整えるために、乳酸菌などを含む発酵食品が推奨されます。
それはよいのですが、同じ食品ばかり続けるより、「昨日は納豆、今日はヨーグルト」といったぐあいに、いろいろな食品をとってほしいと思います。

「あれがいい。これはよくない」とこだわりすぎて偏るより、小鉢の料理をつけるなどして品目を多くし、多彩な食品をとるのがお勧めです。
運動もたいせつと言われますが、便秘の改善には、あまり激しい運動ではなく、ラジオ体操やウォーキングのような軽めの有酸素運動が適しています。

というのも、軽い有酸素運動は、運動中は交感神経(心身を活動的状態にする神経)が優位になりますが、運動の終了後には副交感神経(心身をリラックスした状態にする神経)が優位になってきます。
腸のぜん動運動(腸の内容物を先へと送る働き)は、副交感神経が優位のときに活発になるのです。

特にラジオ体操は体をねじる動きが入りますので、便秘に悩んでいる人にはお勧めです。

毎日決まった時間にトイレに行くのが大事

一方、②の「直腸性便秘」の人は、排便習慣の改善が重要です。
①のタイプの人にも共通して言えることですが、「1日の中で決まった時間にトイレに座る習慣」をつけましょう。

最も理想的なのは、朝食をとってから、しばらく後にトイレに入ることです。
このタイミングには、特に大きな腸のぜん動運動が起こりやすいからです。

便意がなくても、決まった時間にトイレに座るという習慣を続けていると、しだいに「トイレに行くともよおす」ようになる人もいます。
ですから、出ても、出なくても、とりあえずトイレに座ることを習慣として続けてください。

ただし、あまり長いこと座っているのは肛門の血流を滞らせるので、10分を目安に出なければ、次のタイミングを見計らいましょう。
そしてトイレに座ったら、ぜひ排便しやすい「考える人のポーズ」を試してみてください。

私たちの病院は熊本県にありますが、今年4月に起こった熊本地震の後、避難所生活の影響で便秘になってしまったという声もよく聞かれます。
私たちの病院からもボランティアで避難所へうかがい、避難中の便秘対策について書いたチラシを配布したりしています。

「考える人のポーズ」をはじめ、ちょっとした生活習慣の工夫によって便秘が改善したとの声も聞かれています。
少しでも皆さんの苦しみをやわらげることに貢献できれば幸いです。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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