腸の病気だった私の強い味方
味噌や漬物など、昔から発酵食品は日本人の食の健康を支えてきてくれました。確かな記録のうえで、漬物が日本の歴史に現れるのは、奈良時代に書かれたという木簡(字句などを書き記した木の札)です。そこにはウリや青菜の塩漬けのことが書かれていました。
縄文時代から海水に漬けた海藻を干して焼くことで塩を作っていたという説があります。もしかしたらその頃には、すでに漬物は誕生していたのかもしれません。
それほど昔から日本になじみの深かった発酵食品ですが、実は今、そしてこれからの日本人にとっても発酵食品はなくてはならない食べ物になると思います。
なぜなら、今、日本の自然や社会の環境が変動し、私たちに多大なストレスがかかっているからです。
私自身、そのことが身に染みてわかっています。私は発酵食品を食べることによって、長年の苦しい病を治すことができました。

私は15歳のときに過敏性腸症候群(※大腸の運動および分泌機能の異常で起こる病気の総称。下痢、便秘、腹痛、ガス腹などの症状がある)を発症し、20年近くもの間、治療法がわからずに苦しんできました。
腸にいいといわれる市販のヨーグルトを食べても、腹痛や下痢を起こします。
原因が特定できず、何を食べたらいいのかわからず、病との闘いにも疲れ果てていました。
そして、最終的にたどり着いたのが発酵食品です。
発酵食品を食べるようになって、「私たちは目には見えない菌の働きに助けられて生きているんだ」ということがわかりました。
「自分の腸は善玉菌が少なくなっていたため、消化・吸収がちゃんとできなかったんだ」と気づき、腸内細菌のバランスを整えて善玉菌を増やす発酵食品を自分で作るようになりました。
市販の動物性のヨーグルトは食べられなかった私ですが、豆乳と玄米で作る「豆乳グルグルヨーグルト」なら食べることができ、私の腸はどんどん元気になっていきました。
今では過敏性腸症候群も治まり、いろいろなものが食べられるようになりました。
そして豆乳ヨーグルトと発酵食品を楽しむためのフェイスブックの同好会「TGG豆乳ヨーグルト同好会」の管理人としても活動するようになりました。
この同好会には、現在1万1000人以上ものかたに参加いただいており、熱い情報交換が行われています。
その発酵仲間たちの中で最近ホットなのが「発酵キャベツ」です。
ドイツでは「ザワークラウト」と呼ばれて親しまれています。
ソーセージや肉料理などに添えられているお漬物のような発酵食品、食べたことがあるかたも多いでしょう。
あれは実は、とっても簡単に手作りできます。
キャベツを塩で発酵させるだけなのです。
手軽にできますが、発酵によって乳酸菌が増えて、腸内環境を整えてくれるので、発酵仲間たちから大人気です。
実際に手作りして食べた人からは、「便秘が治った」「肌の調子がよくなった」「体から活力がわいてきた」などの報告が続々寄せられています。
実は私自身、病気を治すために発酵生活を始めた頃、発酵キャベツを作って、スープに入れてよく食べていました。
ほかのものは食べられなくてもキャベツはだいじょうぶだったので、「キャベツは腸に優しいんだ」ということがわかりました。
大航海時代から健康に役立っていた
海外では、発酵キャベツは昔から健康維持のために重宝されていたそうです。
1700年代、「キャプテン・クック」で有名なイギリスのジェームズ・クック船長は、史上初めて壊血病(※出血性の障害が体内の各器官で起こる病気。ビタミンCの欠乏が原因となる)による死者を出さず、世界周航を成し遂げました。
クック船長の船には大量のザワークラウトが積んであったそうです。
発酵キャベツは一度作ると長期保存がききます。
クルーたちは遠洋航海中にザワークラウトを食べたおかげで、壊血病にかからなかったのです。
塩発酵キャベツは、そのまま食べてもおいしいですが、ホットドッグ、マカロニサラダ、餃子、ホイル焼き、お鍋にも合います。
私はチーズと合わせてサンドイッチにして食べるのがお気に入りです。
また、白身魚のホイル焼きに添えたり、トマトと一緒に煮込んだり、ツナとチャーハンにしたりなど、焼く、煮込む、炒めるといったどんな料理法でもおいしく食べられます。
胃腸の弱い人はスープに入れて、温かくして食べてください。ダシやコンソメなどを入れなくても、塩発酵キャベツのうまみでおいしいスープが完成します。
トマトやベーコン、豚肉などを入れたスープはとても美味です。
キャベツはどこでも手軽に手に入る野菜ですが、できれば自分の住んでいるところから近い土地で作られたもの、無農薬のものを選ぶと、よりおいしく、安心して食べられます。
塩は、塩化ナトリウムが成分の精製塩だと発酵が進まないので、天然塩を選ぶようにしてください。
塩の量はキャベツの量の2~3%が目安です。
少なすぎると発酵が進まず、失敗してしまうこともあるので注意しましょう。
また、空気に触れると乳酸菌のほかに雑菌も繁殖してきます。
密封して重石をすることもポイントです。
海外のザワークラウトには「キャラウェイシード」というスパイスが入っています。スパイスには味つけのほか、腐敗から守り、長期保存を助けるという役目があります。
塩発酵キャベツは塩のみでもおいしいですが、私は粒コショウやローリエを入れることもあります。
しかし、今回ご紹介する発酵キャベツの材料は、キャベツと塩だけ。
これだけでじゅうぶんにおいしく出来上がります。
出来上がった発酵キャベツは、冷蔵庫で保存することで、半年~1年間保存することができます。
時間が経つごとに熟成され、どんどんうまみを増していくのも、食べる楽しみの1つです。
塩発酵キャベツの作り方

【材料】
キャベツ…1/2個(約500g)
天然塩…小さじ2(約10g)
ジッパー付き保存袋…1 枚

【作り方】
❶キャベツを洗ってよく水気を切り、千切りにする

❷ボールに千切りしたキャベツを入れ、塩を加える

❸キャベツと塩をよく混ぜ合わせる
※ここでスパイスを入れるといろんな味が楽しめる!

❹ジッパーつき保存袋に③を入れ、空気を抜きながら封をする
※上にペットボトルやお皿をのせて重石をしてもよい(1.5〜2Lの水の詰まったペットボトルくらいが理想の重さ)

❺常温で24〜48時間置く。全体が黄色くなってきたら発酵している証拠

❻全体が黄色っぽくなったら、密封袋ごとそのまま冷蔵庫に保管してもいいし、熱湯消毒した瓶に移し替えて保存してもよい。もういつでも食べられる

※保存の目安は半年。保存が長くなるほど発酵が進み、旨みが増してくる
※明らかににおいが変な場合やカビが生えた場合は、「腐敗」に入っているので作り直す
※③のときに粒コショウやローリエ、鷹の爪、キャラウェイシードなどのスパイスを加えてもOK
※キャベツは色が鮮やかな紫キャベツでもOK
解説者のプロフィール

栗生隆子(くりゅう・たかこ)
発酵生活研究家。
自然素材の暮らし、家庭でできる発酵生活を実践したところ、長年患った腸の病気が完治。目に見えない菌が健康にも環境にもたいせつな役割をしていると知り、菌の世界から発酵への理解を深める。命のリレーをして細胞が続いていくように「つないでいく発酵」がテーマ。会員1万5000人を超えるFacebook「TGG 豆乳ヨーグルト同好会」の管理人。著書にベストセラーとなった『豆乳グルグルヨーグルトで腸美人! 』(マキノ出版)などがある。最新刊は、『からだにおいしい発酵生活』(宝島社)。
●TGG豆乳ヨーグルト同好会
https://m.facebook.com/groups/721334441212364/