非定型うつ病とは
最近、マスコミで「職場うつ」、「新型うつ病」などといった言葉を耳にします。
これらは病院で診断されるうつ病(定型うつ病)とは違って、「非定型うつ病」と言われます。
学校や会社に行くとなると気分が落ち込んで体が動かなくなるが、遊びには出かけられる。
これは「気分性反応」という非定型うつ病の症状です。
ほかにも「些細なことでキレる、ひどく落ち込む」「ぐっすり眠れないためだらだらと長時間寝てしまう」「イライラして食べ過ぎる」などの症状があります。
非定型うつ病は、遊んだり、食べたりできるので、周囲につらさが伝わらないことも多いですが、実はうつ病より治療が難しい場合もあり、数年単位の時間がかかります。
「会社に行きたくない」に掃除が効く!
こうした非定型うつ病の患者さんに私が勧めているのが「掃除と片づけ」です。
掃除と片づけには、大きく5つのメリットがあります。
①気持ちがスッキリする
②「私にもできた」と満足できる
③不安を忘れて無心になれる
④体を動かすことで程よい運動になり、ストレスも解消される
⑤家族やほかの人から感謝される
特に掃除と片づけはやり始めると、だんだん熱中して無心になりますが、こうした時間は不安を感じることがありません。
過去を悔やまず、未来の心配をしない、「今ここ」に集中する時間を持つことはとてもたいせつなことです。
また、掃除と片づけは程よく体を動かす全身運動にもなります。
適度な運動は全身の血流を促進し、日常生活では使わない筋肉を使ったり、汗をかいたりすることで、心だけでなく体も健康に導きます。
掃除と片づけで心身が見ちがえてくる
「アドラー式お片づけ」は、その掃除を気軽に続けられるような工夫がなされています。
掃除を始める前に、「その部屋で何をしたいのか、イメージする」というのは掃除と片づけへのモチベーションを高めるのに有効です。
「気になる場所から少しずつ始める」というのも、掃除が苦手な人がスイッチを入れるのに最適です。
まずは1つの引き出しから、流し台の上から、というように、少しずつきれいにしていくと満足感が出てきますし、「さらにここも片づけよう」と次への意欲もわいてきます。
「掃除する時間を決める」というのも掃除を習慣にする第一歩です。
できれば朝が理想です。
お寺では朝の座禅を行う前に、必ず掃除をします。
朝日を浴びて、心を浄化して、これから1日が始まる準備になります。
1日10分でもいいので、掃除と片づけを習慣にしてみてください。
体も心も見ちがえてくるでしょう。
解説者のプロフィール

貝谷久宣(かいや・ひさのぶ)
医療法人和楽会理事長・心療内科医。
名古屋市立大学医学部卒業後、ミュンヘンのマックスプランク精神医学研究所に留学。
帰国後、岐阜大学医学部講師、助教授などを歴任。2013年、赤坂クリニックに最新の精神医学であるマインドフルネスを実践する場所として「東京マインドフルネスセンター」を開設する。
●東京マインドフルネスセンター
https://tokyo-mindfulness-center.jp/