多くの気づきや新しいアイデアを生む
「マインドフルネス呼吸法」は、子どもから高齢者まで、いつでもどこでも行える心のエクササイズです。
「今、ここ」に集中することで、心のモヤモヤが晴れ、ときには自分の気づかなかったことを発見することができ、多くの効果ももたらします。
マインドフルネスの大きな効果の1つに、ストレスの軽減があります。
人は、大きなストレスにさらされると、そのことにとらわれて身動きが取れなくなります。
がんじがらめになって心が硬くなると、他人に心を閉ざすようになり、次第に心身ともに弱くなっていきます。
こうした状態では、対人関係がスムーズにいきませんし、仕事の能率は落ち、自由な発想もなくなります。
さらに自分を追い込めば、「自分はダメな人間だ」と自己評価が低くなり、うつっぽくなってしまう人も出てくることでしょう。
マインドフルネスを実践すると、冷静に今の自分を観察できるようになります。
マイナスの感情を引きずらず、その場でストレスを軽減できるのです。
すると、他人の目を必要以上に意識しなくなり、過剰な気負いが消えます。
人との摩擦も減り、今までできなかったことなどもスムーズにできるようになります。
「いつも通りの自分、シンプルな自分に戻れる」といってもいいかもしれません。
思考がシンプルになれば、自分が今、何を感じて、何を考えているのかを具体的に絞り込めるようになります。
それがさらに多くの気づきを引き出し、自分なりの着想や新しいアイデアをもたらすのです。
また、マインドフルネスの継続的な実践で、試験やプレゼンなど、大事な場面で能力を発揮できるようになります。
集中力が高まり、仕事の効率や学力もアップするでしょう。
うつや、不安、過度の緊張を和らげる
また、うつや不安症状、過度の緊張を和らげる効果も期待できます。
うつの人は、一度、怒りや悲しみなどの否定的な感情が湧くと、マイナスの思考や感情にとらわれる傾向があると言われています。
マイナス感情にとらわれ続け、症状が悪化する場合も少なくありません。
マインドフルネスを行うと、マイナス感情にとらわれなくなり、その感情を観察できるようになります。
つらい感情でも、逃げずに見守っていけば、それはやがて自然に小さくなっていきます。
継続していけば、否定的な感情の嵐の中にいる自分を静かに見つめられるようになるのです。
それが、マイナスの思考の連鎖を断ち切り、うつや不安症状の軽減へとつながっていきます。
マインドフルネスは、あなたの生活を大きく変化させるきっかけとなるはずです。
ぜひお試しください。
「マインドフルネス」の効果

「マインドフルネス呼吸法」のやり方

場所を選ばず2~4 分で実行できる
初めのうちは、集中できるように、静かで落ちつく場所や時間を選んで行いましょう。
慣れてきて集中する感覚がわかると、場所を選ばずにできるようになります。
行う時間は、2~4分間程度です。
ポイントは、「今、ここ」の感覚に気づくために、体の動きをできるだけ大きくすることです。
腕を天に向かって伸ばすように、ゆっくり、しっかり行うことを心がけてください。
「体は今、どんな感じ?」「気分は今、どう?」「どんな考えがあるかしら?」と、体と心に静かに意識を向けて行いましょう。
「肩がだいぶこっているな」「胃が重たい」「理由はよくわからないけどイライラする」など、不快な感覚が出てくるかもしれませんが、それもがまんしないこと。
出てきたものはすべてそのまま、あるがままに受け止めてください。
心と体は連動していますから、心が緊張したり、気持ちが沈んでいたり、ストレスがあったりすると、体にもその影響が現れています。
大抵は背中が丸まり、体全体も縮こまって、肩や背中などの筋肉が硬くなっていることが少なくありません。
マインドフルネス呼吸法を行って、心がやわらかくなると、筋肉もほぐれていきます。
心と筋肉の緊張をほぐすためにも、できるだけ大きな動きをしましょう。
マインドフルネス呼吸法は、ウツウツとするときや、クヨクヨするときに行えば、気持ちを切り替えることができます。
また、軽いうつの人であれば、症状が軽減すると言われています。
マインドフルネス呼吸法は、自転車に乗るのと同じで、一度身につければいつでもどこでも使えます。
継続することで体が覚え、必ず効果が現れていきます。
毎日の習慣にすれば、人間関係に限らず、多くのストレスをうまく処理できるようになります。
心と体の疲労がたまりにくくなるでしょう。
さらに、多くの気づきが生まれ、日々の行動がよい方向へと変わっていくはずです。
解説者のプロフィール
石井朝子
心理学博士。日本認知療法学会理事、日本不安障害学会評議員。欧米では多くの実証的研究報告のある、ストレス軽減法の1つ「マインドフルネス」を、米国の精神療法家のマーシャ・リネハン博士から直接指導を受ける。DV被害親子のためのマインドフルネスを活用したケア介入プログラムや、子育て中の母親に対するストレス対処法の確立にも取り組んでいる。監訳書に『家庭と学校ですぐに役立つ感情を爆発させる子どもへの接し方』『パートナー間のこじれた関係を修復する11のステップ』(ともに明石書店)などがある。