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 【耳たぶのシワ】足がだるい 瞼の脂肪の塊は病気の前兆 動脈硬化の症状と予防

【耳たぶのシワ】足がだるい 瞼の脂肪の塊は病気の前兆 動脈硬化の症状と予防

動脈硬化の予兆は、外見に現れることがあります。チェックリストに当てはまるものがある人は、動脈硬化が進行している可能性が考えられます。脳梗塞、心筋梗塞といった病気のサインが潜んでいることがあるので注意が必要です。耳たぶにシワができたケースを写真付きで紹介しましょう。【解説】重松宏(都庁前血管外科・循環器内科理事長)

耳たぶのシワの一例

爪や毛の伸びの左右差、足がだるい、重い、つるは危険サイン

 動脈硬化は、怖い病気です。動脈硬化が進むと、血流が悪くなり血管が詰まって、脳梗塞や心筋梗塞(脳や心臓の血管が詰まる病気)、足の組織が死んでしまう壊疽など、重篤な病気を引き起こします。ときには、突然死を起こすこともあります。

 動脈硬化の予兆は、外見に現れることがあります。表をご覧ください。
 当てはまるものがある人は、動脈硬化が進行していると考えられるので要注意です。

 では、なぜこのような症状が起こるのでしょうか。
 動脈硬化があると、血液の流れが悪くなり、血流障害が起きます。血流が悪いと栄養が届きませんから、皮膚の温度が下がったり、皮膚のハリがなくなったり、細かいシワができやすくなったりします。また、爪や毛が伸びにくくなります。

 表の①②は、頸動脈の病変が疑われる兆候です。
 頸動脈は、首から脳や顔に行く血管で、狭くなると顔の血流が悪くなり、シワができやすくなります。
 また、まぶたのコブは、遺伝性の脂質異常症に多い兆候です。体質的にコレステロールを分解する能力が低いと、血液中にLDLコレステロールがたまって、まぶたの細い血管に脂肪腫ができやすくなります。
 こうした変化とともに、立ちくらみや脳貧血なども起こしやすくなります。

 ③〜⑥は、足の太い動脈に起こる閉塞性動脈硬化症の兆候です。両方の足を比べて、爪が伸びない、毛が生えない、皮膚の温度が低い、皮膚にハリがない、足が細いなどがあれば、その足の血管が狭い、または詰まっているなどして、血流が悪くなっている可能性があります。

 また、蚊は皮膚から出る炭酸ガスをかぎつけて寄ってきます。ですから、蚊に刺されないほうの足は血流が悪く、代謝が落ちている可能性があります。
 閉塞性動脈硬化症があると、少し歩いただけで、足がだるい、重い、痛い、つるといった症状が出て歩けなくなります。

 これは足の筋肉に乳酸などの代謝産物がたまるためですが、しばらく休むと回復して、歩けるようになります。これを、間歇性跛行といいます。
 足の血流不全が強くなると、ちょっとした傷でも治りにくく、潰瘍(皮膚や粘膜がただれて欠損した状態)をつくりやすくなります。さらに悪化する
と、足の先の組織が壊死する壊疽になり、足を切断するはめになります。

 問題はそれだけではありません。足に動脈硬化があるということは、全身に動脈硬化が起きていると考えられるのです。

動脈硬化の進行を外見からチェック

末梢の動脈硬化もわかるABI検査

 そこでお勧めしたいのが、下肢の動脈に狭窄や閉塞がないかどうかを調べる「足関節上腕血圧比(ABI)検査」です。

 ABIは、上腕と足首で血圧を計り、足首の最大血圧を上腕の最大血圧で割った数値です。通常は、手より心臓から遠い足の血圧のほうが高くなります。しかし、動脈に狭窄があると、その先に血液が行かなくなり、足の血圧が低くなります。

 ABIが1.0〜1.4なら正常範囲です。1.0を切ると足の血流障害が疑われ、0.9を切ると、明らかな閉塞性病変が疑われますから、0.9が一つの基準になります。

 さて、もう一つ怖い数値を紹介しましょう。
 ABIが0.7なら5年後の生存率は7割、0.5なら5割に下がるというデータがあります。さらに低くなると、10年後の生存率は限りなくゼロに近づきます。
 なぜこんなに生命予後が悪いのかといえば、足の動脈が詰まっている人は、心筋梗塞や脳梗塞を合併している割合が多いからです。

 ちなみABIが0.7だと、間歇性跛行が出る段階、0.5を切ると傷の治りが悪くなり、潰瘍になりやすくなります。
 こうしたことから、現在では閉塞性動脈硬化症や心筋梗塞、脳梗塞を別々の病気と考えるのではなく、全身的な動脈硬化症の一部分症と捉えるようになっています。

 高血圧や糖尿病などの合併症や喫煙のある人は50歳から、合併症のない人でも65歳以上の人は、ABI検査はお勧めで
す。
 この検査によって、閉塞性動脈硬化症だけでなく、脳卒中や心筋梗塞の危険度もわかります。ぜひ一度、専門外来で検査を受けてみてください。

解説者のプロフィール

重松 宏
 都庁前血管外科・循環器内科理事長。血管疾患に対する外科的治療のエキスパートで、経皮的血管形成術や大動脈瘤に対するステントグラフト治療、静脈瘤に対するレーザー治療などの低侵襲的血管内治療の先駆者でもある。「未病に勝る治療はない」と考え、心・血管健診の重要性を啓発している。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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