体と心は表裏一体!総合的に診ることが大事
「人間のいちばん基本的なことは、心と体と生活のバランスだ」私が30代の頃、沖ヨガの創始者、沖正弘先生の講習会での言葉です。
これを聞いた私は、体に電気が走ったような感動を覚えました。
現代医学では、体の各部をそれぞれの専門家が診ますが、誰も全身を診ません。
私は、全身を診る医師になりたいと考え、以来、沖先生のヨガ道場に定期的に通い、人間として、医者として、非常に貴重な学びと体験を得ました。
沖道ヨガ指導者の佐藤松義先生は、この頃、沖先生から一緒に指導を受けた仲間です。
私は沖ヨガを通じて、体を臓器や器官の集まりとしてではなく、心と表裏一体の生命ある存在ととらえられるようになりました。
体を部分としてとらえるなら、人体はロボットと同じになります。
人の体をほんとうに治すには、部分の治療も必要ですが、最後は総合性が大事です。
ヨガでは、総合性を何より重視します。
ヨガの学びを通じて、私も総合性という視点を身につけることができたのです。
このことは、私の医師としてのあり方に大きく影響しました。
足裏たたきは体と心を同時に整える
沖ヨガのなかで重要な位置を占めるのが、足を使った健康法です。
沖ヨガでは、その日の修養の初めには、必ず足を刺激します。
「足裏たたき」に始まり、足全体を念入りにたたいたりもんだりするのです。
こうした足を使った刺激法をやるだけでも、とてもよい健康法になります。
沖ヨガに限らず、古くからの自然法則として、「部分即全体」という考え方があります。
足や手や耳、果ては髪の毛1本でも、その人の全身と深い関係があるという考え方です。
ですから、足を刺激することで、全身を整えたり治療したり、体質を改善したりできるわけです。
現代医学(西洋医学)が広く普及したいま、薬こそがすぐれた治療法だと思いがちですが、それは錯覚であり、思い込みです。
人間は、よほどのことがない限り、自分で自分の体を治す力を持っています。
足の刺激法などのほうが、薬よりはるかに上であって、まず試すべきものです。
足を刺激することによって、その人が本来持っている、治る力を活性化させることができるからです。
そして、体だけでなく心まで整えられることも、こういった方法のすぐれた点です。

解説者のプロフィール

樋田和彦
ヒダ耳鼻咽喉科院長・医学博士・日本ホリスティック医学協会顧問・IMUNET(統合医療利用者ネットワーク)代表・日本高麗手指鍼療法学会名誉会長。西洋医学や東洋医学にしばられることなく、“こころとからだ”を全人的に診る統合医療を取り入れ、心と身体と環境の面から総合的にアプローチする医療を追求する。著書に『癒しのしくみ』(地湧社)など。