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【名医に聞く不整脈の手術】心房細動のカテーテルアブレーション

【名医に聞く不整脈の手術】心房細動のカテーテルアブレーション

心房細動における薬物療法(抗凝固薬)に対して、心房細動そのものの根治を期待できる治療が「カテーテルアブレーション」です。これは、太ももの静脈などから直径2mmほどのカテーテルを入れ、その先端から高周波電流を流して、心臓内の不整脈の元となる異常な部分を焼いて治療するものです。【解説】山下武志(心臓血管研究所所長)

解説者のプロフィール

山下武志
 心臓血管研究所所長。1986年東京大学医学部卒業。不整脈診療の第一人者で、循環器系疾患のオピニオンリーダーとして、高度な医療の提供や医療機関への指導を行うほか、心房細動の診療と治療に力を注ぎ、一般の人に正しい知識を啓蒙している。著書『心房細動に悩むあなたへ』(NHK出版)が好評発売中。

画期的な新薬が登場し脳梗塞の予防が容易に

 心房細動といわれたら、積極的に治療を受けることが必須です。治療は、薬物療法と手術に大別されます。
 薬物療法は、心房細動の状態をコントロールしたり、脳梗塞などの合併症を予防する目的で行われます。
 一般に、心房細動の発作を抑える薬(抗不整脈薬)と心臓の中で血栓ができるのを予防する薬(抗凝固薬)が使われます。

 抗凝固薬では、長年、「ワルファリン」という薬しかありませんでした。
 ワルファリンは、血液を固める物質(凝固因子)の働きを抑えますが、ワルファリン自体にその効果があるわけではありません。凝固因子は、肝臓でビタミンKを使いながら作られますが、ワルファリンはこのビタミンKを阻害します。
 そのため、ワルファリンの効果はビタミンKの摂取量に左右されます。体内のビタミンKの量が多いと、血が固まりにくくなりません。逆にビタミンKが少ないと、出血が止まりにくくなる副作用につながります。

 そのため、服用のさいは、納豆などビタミンKの多い食品を制限する必要があります。また、受診時に毎回採血検査を行い、服用量を調整しなければなりません。他の薬との飲み合わせにも要注意です。
 しかし2011年から、新しい薬が続々と利用可能になりました。直接経口抗凝固薬と呼ばれていますが、「ダビガトラン」「リバーロキサバン」「アピキサバン」「エドキサバン」の4種類があります。これらの薬は、脳梗塞の予防効果がワルファリンと同等以上で、しかもワルファリンで最も困る副作用の頭蓋内出血が減ることがわかっています。

 この直接経口抗凝固薬はビタミンKの働きは阻害せず、直接的に血液の凝固に関わるフィブリンの生成を抑えます。ビタミンKや他の薬との飲み合わせを苦慮せずとも、一定量を服用すれば血が固まりにくくなるので、受診時に毎回、採血検査をする必要もありません。

 患者さんからは「服薬がらくになった」「納豆がまた食べられるようになってうれしい」といった声がよく聞かれます。
 ただし、新しい薬は、デメリットもあります(表参照)。値段も高価で、自己負担3割の場合、ワルファリンが1日10円程度に対し、新薬は1日約150円前後になります。

抗凝固薬のメリットとデメリット

心房細動を根治するカテーテル治療

 薬物療法に対して、心房細動そのものの根治を期待できる治療が「カテーテルアブレーション」です。
 これは、太ももの静脈などから直径2mmほどのカテーテルを入れ、その先端から高周波電流を流して、心臓内の不整脈の元となる異常な部分を焼いて治療するものです。

 不整脈を引き起こす異常な電気の発生源やその経路を焼いて、正常な電気の流れに悪影響を及ぼさないようにします。
 カテーテルアブレーションによって心房細動がまったく起こらなくなる確率(成功率)は、1回の治療で約5~7割、その後にもう1回行うことで約8~9割に上昇します。
 動悸や息切れといった自覚症状から解放されて、性格が明るくなる患者さんもいらっしゃいます。「発作が不安で乗れなかった飛行機に乗れるようになり、うれしい」と語っていた人もいました。

 動悸などの症状が強く、抗不整脈薬で十分な効果が得られない場合など、カテーテルアブレショーンを考慮されるといいと思います。特に65歳以下であれば、積極的に推奨します。
 推奨しないのは、自覚症状がない場合、75歳以上の場合、心房細動と診断されて5年以上が経過している場合です。
 安全性が高いとはいえ、カテーテルアブレショーンは、危険がないわけではありません。血管の損傷や、血栓が生じて脳梗塞を引き起こすといった合併症を起こすことがあります。年齢が高くなるとリスクも高まるので、熟慮すべきでしょう。
 カテーテルアブレーションは、初期の段階で行うほど治療効果が高く、慢性心房細動になると成功率が低下します。診断から5年以上も経過すると、十分な効果が期待できません。

 なお、カテーテルアブレーションを受ける病院を探す際は、目安として年間100例以上の実施をしている医療機関を選ばれるといいでしょう。
 日本不整脈学会の「不整脈専門医」認定を受けた医師のいる医療機関は、一定数のカテーテルアブレーションを実施している可能性が高いでしょう。
 心房細動の患者さんで、動悸や息切れなど、つらい自覚症状のある場合は、積極的に治療を受けてくれ、予後も好調です。

 しかし、症状を自覚していない場合は、途中で治療をやめてしまう人が少なくありません。それで脳梗塞を引き起こすケースを私は何例も見てきました。
心房細動といわれたら、必ず治療を受けてください。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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