
口から肛門まで消化器全般の弱まりが原因
私が治療のベースにしている東洋医学では、逆流性食道炎は「脾」の弱まりと考えます。
脾とは、現代医学でいうところの消化器系全般を指します。
消化器は、胃や腸だけを指すのではありません。口から肛門まで、すべてが消化器です。もちろん食道もです。
脾の働きが弱まると、消化液の分泌に異常が生じます。胃酸が過多になって食道に逆流すれば、逆流性食道炎という症状になります。反対に、胃酸の分泌が悪くなると、消化不良を起こします。
逆流性食道炎は、胃からの逆流を防ぐ弁が閉まりにくくなることにより、吐き気や胸のムカつきが起こる病気ですが、これは、胃腸の調子が悪ければ、誰にでも起こりうることです。
それは例えば、建物で火災が起こると、火元ではないほかの階まで空気が汚れるように、消化器のどこかで異常が起これば、口から肛門まで、すべてに悪影響が及ぶのです。
今回は、逆流性食道炎という診断名にかかわらず、吐き気や胸のムカつきに困ったときに特効の方法をご紹介します。名付けて「サイダーのスプーン飲み」です。
ゆっくり1さじずつ飲むのがコツ
やり方は、サイダーを深めの皿かお椀に入れ、スープを飲むようにスプーンで一口ずつすくってゆっくり飲み込みます。
1さじ飲むごとに自分の状態を観察し、症状がらくになってきたら、飲むのをやめます。だいたい100ml以内で治まることが多いようです。
このとき、炭酸水ではなく、甘みのあるサイダーがお勧めです。なぜなら、胸やけは胃が過剰に収縮している状態です。
「甘いものは別腹」とはよくいったもので、砂糖には組織をゆるめる作用があります。そのため、甘みのあるサイダーを飲むと、収縮した胃がゆるんで、胸やけが治まるのです。
また、炭酸の刺激が胃壁の刺激となって、血流もよくなります。血流がよくなると、リラックスします。
東洋医学では、「思い憂う」感情が、脾に負荷をかけるとされています。つまり、クヨクヨしたり、考えすぎるなどのストレスが、胃を収縮させ、血流を悪くして逆流性食道炎を招くのです。炭酸のリラックス作用で、こういった症状も緩和されます。
重要なのは、サイダーを一口ずつゆっくり飲むことです。一気に飲むとゲップが出て逆流を助長するので、よくありません。少量をゆっくり飲めば、炭酸は胃壁で吸収され、血流改善に作用します。少しゲップが出たとしても、少量であれば逆につかえ感が取れて、すっきりします。
サイダーのスプーン飲みのやり方

その場しのぎの療法で病気が改善することも
サイダーのスプーン飲みは、胃酸過多のときにお勧めの方法なので、消化不良の場合は行わないでください。
また、胃がゆるみすぎると胃もたれが起こるので、症状がらくになったら、それ以上は飲まないよう注意しましょう。100~150mlが目安です。
実は私は、18歳のときに重篤な悪性の消化器疾患を患い、生死の境をさまよいました。そのとき苦しめられた胸やけの症状をなんとか和らげたくて、情報を収集し行き着いたのが、サイダーのスプーン飲みでした。
その後、病気が回復して鍼灸の道に進んでからは、胸やけに悩む患者さんには必ずサイダーのスプーン飲みを勧めて効果を得ています。
驚くのは、吐き気やムカムカだけでなく、逆流性食道炎自体も改善することがあることです。私の母も胃が弱く、50代のときひどい吐き気に襲われ、よく胃液を吐いていました。病院に行っていないので、病名はわかりませんが、今思うと、逆流性食道炎だったのかもしれません。
母にもサイダーのスプーン飲みを勧めたところ、そのつど症状がらくになり、1週間後には吐き気の症状自体がなくなったのです。
最後になりますが、逆流性食道炎を根本的に改善するには、胃腸全体をよくするという視点で、生活改善に取り組むことが重要です。よく嚙むことを心がけ、早食いや、食後すぐ動くなどは控えましょう。そのうえで、サイダーのスプーン飲みをお試しください。
解説者のプロフィール

藤井清史
1968年北海道生まれ。鍼灸師。18歳のときに大病にかかり、19歳のときに「余命いくばくもなし」と宣告を受ける。鍼灸および玄米食養に出合い、九死に一生を得る。以後、「自分のような人の手助けをしたい」という一心から鍼灸の道を歩み始める。「病の原因は心にある」をモットーに、開業当初よりさまざまな治療法を導入し、日本全国から難病を抱えた患者が来院するようになる。著書『耳鳴・難聴・めまいは治ります』(白順社)が好評発売中。