
胃酸が逆流すると食道炎を起こす
「胸やけ、ゲップ、胃もたれ」
こうした症状がくり返し起こるとき、一般には、慢性胃炎などの胃の病気ととらえる人が多いでしょう。
しかし、もう一つ、注意しなければならない病気があります。それは「逆流性食道炎」です。逆流性食道炎は、胃壁から分泌される胃酸が、逆流して食道に流れ、炎症を起こすものです。
私たちが食べた食物は、食道を通って胃で消化され、小腸で本格的に消化・吸収されます。
このとき胃は、胃酸で食物を殺菌しながら溶かします。そのために、胃酸は強酸性になっています。胃壁は、粘膜や粘液で保護されているので、強酸性の胃酸に触れても大丈夫です。しかし、食道壁にはそういう保護機能がありません。
ですから、胃酸がなんらかの原因で食道に逆流すると、食道炎が起こってしまうのです。
本来なら、胃酸は逆流しないしくみになっています。食道と胃の境にある括約筋が締まって逆流を防ぐからです。
ところが、加齢やストレス、暴飲暴食などによって、この括約筋がゆるんだり、胃酸の分泌が過剰になったりすると、胃酸が逆流することがあります。
こうして起こるのが逆流性食道炎で、冒頭の症状のほか、のどの違和感(ヒリヒリするなど)、のどや口が酸っぱい、よくセキ込むといった症状が現れます。
この症状からわかるとおり、胃酸がのどまで逆流することも多く、その場合は気管に入ることがあります。
特に、お年寄りの場合、気管から肺に入って、誤嚥性肺炎を起こすことがあるので要注意です。
逆流性食道炎は、最近は若い人にも増えています。ストレスや食生活の欧米化により、年齢を問わず、現代人に増えているといわれます。
消化機能と深く関係するツボを刺激する
東洋医学では、逆流性食道炎は、「本来は下がるべき胃の気(生命エネルギー)が上がるために起こる」ととらえます。
本来、下ろすべき胃の気が、ストレスなどで上がってしまうのが逆流性食道炎の原因というわけです。
逆流性食道炎は、西洋医学では胃酸の分泌を抑える薬で治療します。同様の働きをする漢方薬もあります。
しかし、より根本から改善でき、しかも患者さんが自分でできる効果的な方法があります。それが「ひじ針」です。
ひじ針は、簡単にいうと自分の腕の手のひら側を、逆の腕のひじで押す方法です。
腕の手のひら側は、「腹部の臓器」に連動しています。また、腕の手のひら側中央には、東洋医学でいう経絡(エネルギーである気の通り道)のうち、消化機能と深く関係する心包経という経絡が通っています。
特に、前腕部手のひら側の手首の近く(手首の横ジワの中央からひじ方向に指幅3本分進んだところ)には、さまざまな消化器症状に効果をもつ有名な内関というツボがあります。
手のひら側の腕中央をひじ針で刺激することにより、いろいろな意味で消化器を整え、逆流性食道炎を予防・改善できるのです。
ひじ針をやってみるとわかりますが、「針」というのがよくわかるほど、ピンポイントで深く強い刺激が入ります。

逆流性食道炎に効く「ひじ針」のやり方

私自身も「ひじ針」で逆流性食道炎を克服
実は、私自身、このひじ針で逆流性食道炎を防いだり、治したりしています。
私は、昔からストレスや疲れが高じると、逆流性食道炎の症状が出ていました。酸っぱい胃液が上がってきて、むせてしまうこともたびたびでした。
昔は漢方薬を飲んでいましたが、ひじ針を考案して以来、速やかに治せるので助かっています。ほかにも、ひじ針で逆流性食道炎を改善した人は大勢います。
私が開催している健康セミナーにみえているMさん(50代・女性)は、いつも胃の調子が悪く、胸やけが続くので困っていました。しかし、セミナーで覚えたひじ針を行ったところ、そうした症状がすっきり消えたそうです。「これは、本当によく効きますねえ」とおっしゃっていました。
大学の教員をされているTさん(60代・女性)は、逆流性食道炎による胸やけや、おなかの張りに悩んで、当研究所にお見えになりました。
自宅療法としてひじ針をお教えしたところ、行っているうちに逆流性食道炎の症状が起こらなくなりました。ついでに便秘と腱鞘炎も治って喜んでおられます。
現代人に増えている逆流性食道炎と、それによる誤嚥性肺炎を防ぐため、ぜひひじ針を取り入れてください。
解説者のプロフィール

孫維良(そん・いりょう)
東京中医学研究所所長。
天津中医学院(現・天津中医学大学)卒業、天津中医学院第一附属病院の推掌科医師として勤務。来日後は東京中医学研究所で施術するかたわら、城西大学での気功指導や講演活動を行う。『1日1分!腕もみで胃腸の不調がみるみる改善する!』(プレジデント社)が好評発売中。
●東京中医学研究所
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TEL 03-3512-0202
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