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心房細動から脳梗塞を起こした私が実践する「二度と血栓を作らない」秘策

心房細動から脳梗塞を起こした私が実践する「二度と血栓を作らない」秘策

私は18年ほど前に脳梗塞を起こしました。早期治療と早期リハビリテーション(機能回復訓練)のかいがあって、後遺症も少なく、職場に復帰することもできました。【体験談】加藤博(無職・70歳)

体験者のプロフィール

加藤博さん
早稲田大学商学部卒業後、ぺんてる株式会社入社。
2005年に退社。
脳梗塞の体験は『脳梗塞からの復活』(小社刊)で詳しく紹介。
ホームページ『いぶき爽太郎の「お父さんと脳梗塞仲間」』では、同病に悩む多くの患者やその家族と情報交換に努めている。

通勤電車の中で血栓が飛んだ

 私は18年ほど前に脳梗塞を起こしました。早期治療と早期リハビリテーション(機能回復訓練)のかいがあって、後遺症も少なく、職場に復帰することもできました。

 私の場合、読売巨人軍の元監督・長嶋茂雄さんが倒れられた脳梗塞と同じタイプで、不整脈(心房細動)で心臓の拍動が乱れて血栓が飛ぶ「心原性脳塞栓」でした。

 3月の朝。私は、いつものように地下鉄で会社に向かっていました。すし詰めの車内は、むせ返るように暑かったことを覚えています。

 電車が駅に着いたときです。私の腕を、見知らぬ若者が抱え、「一緒に降りましょう」と叫びました。私は、自分に何が起こったのか理解できず、乱暴な若者に腹を立てるだけでした。ホームに引きずり降ろされると、そのまま倒れ込んでしまいました。
「大丈夫ですか?」「救急車を呼べ!」いろいろな声が飛び交っていたようです。それからのことは霧がかかったようで、断片的にしか思い出せません。

 一つだけ、会社のある茅場町を口にすると、どうしても「ららばちょう」となってしまうのです。それだけは、妙にハッキリ覚えています。
 診断の結果、病名は脳梗塞。前述のように、心臓(心房)にできた血栓が血管を伝わって脳に飛び、脳の動脈を詰まらせてしまったのです。

 それでも、私は運がよかったようです。地下鉄の中で倒れたため、初期治療を早く受けることができたからです。
 初期治療が遅くなればなるほど症状も重くなり、運が悪ければそのまま命を落とすこともめずらしくないそうです。電車から私を引きずり出してくれた若者に対して、今では心から感謝しています。

 とはいえ、事態は決して甘くありませんでした。梗塞が起こった右側頭葉では、脳細胞が広さ7×6cm、深さ4cmにわたって壊死したのです(MRIの写真を参照)。
 3週間後には退院できたものの、それからは後遺症と再発防止との闘いに明け暮れる日々が続きました。

▲加藤さんの頭部MRI写真
矢印の白いところ(右側頭葉)が、心房細動による脳梗塞部分(広さ7×6cm、深さ4cm)。この梗塞で左半身の運動機能や神経機能にマヒが生じた。

左半身のマヒと冷えの後遺症に苦しむ

 後遺症で最も悩まされたのが、左半身のマヒや冷えです。

 マヒしたところは、しびれに近い感覚がありました。大まかな動きはいいのですが、手で何かを持ったり操作したりといった細かい動きができません。また、無意識のうちに左手が震えていることもよくありました。

 左の手足の冷えも、生半可なものではありません。指が氷のように冷たくなって、こわばってしまうのです。特に、左足の第3指〜5指の3本の冷えはひどく、内側に曲がったまま霜焼けができ、そのため歩行が困難になりました。

 そのほか、ものを食べていると舌や口の中をイヤというほど噛んでしまう、口がよく閉まらないので、食べ物やよだれがこぼれ出てしまう、意識して話さないと声がどんどんか細くなってしまうなど、気になる症状を挙げたらきりがありません。

 一方、再発にも大きな不安を感じていました。脳梗塞の原因はさまざまといわれていますが、私の場合は原因が複数考えられたので、予防も簡単にはいかないように思えたのです。
 強いていえば、以前から心房細動があったこと、高脂血症の傾向があったことが引き金になったのかもしれません。

足の裏のツボ刺激のやり方

再発なく今年で19年目に突入

 後遺症の改善や再発予防のためには、自分なりにずいぶん努力しました。
「今度倒れたら危ないですよ」という医師の声も耳にこびりついていたし、何より、一日でも早く社会復帰したい、職場復帰したいという一心でリハビリに専念しました。
 そのかいあってか、脳梗塞の再発もなく、19年目を迎えようとしています。
 後遺症もまだ完全とはいえませんが、ずいぶんよくなりました。念願の職場にも復帰でき、仲間の温かい応援のなかで仕事もなんとか普通にこなせるようになりました。
 私が脳梗塞の再発防止のために心掛けていることは、大きく分けると次の四つです。

・疲労をためない
・ストレスを解消する
・血液の状態をよくする
・不整脈(心房細動)による血栓を作らないようにする
 では、その対策の一部をご紹介しましょう。

①テイク イット イージー!
「気らくに行こう」「カッカするのはやめよう」「くよくよしない」などという意味です。
 私は、根がまじめな性格で、ものごとをいい加減に済ませたくない、と無理をしていました。それが、疲労やストレスをため込んでいたのでしょう。根本的な発想の転換として「テイク イット イージー」を常に心がけています。これを「適当偉人」と迷訳した人がいて、気に入っています。

②よく寝る
 夜11時~朝6時までの7時間はきちんと睡眠を取ります。また、昼食後には30分前後、必ず昼寝をします。

③ストレッチと腹式呼吸
 起床時とお昼、夜は入浴中と就寝前に、下半身から上体まで、入念にストレッチします。いずれも、腹式呼吸で息をゆっくり吐きながら行います。

④水をこまめに飲む
 血液をキレイにして、流れを滞らなくするには、水分補給がいちばんです。夜寝る前にコップ一杯の水を飲み、枕元に300㎖の水を置いておきます。そして、トイレに起きたときや、朝の起床時にコップ一杯ほど飲みます。また、入浴の前後にも一杯ずつ、外出時にも携帯してこまめに飲むようにしています。

⑤豆腐を食べる
 高脂血症対策にと、毎日のように取っているのが豆腐です。豆腐に含まれるレシチンという成分がコレステロール値を下げてくれるそうです。

⑥足の裏のツボ刺激
 足には体のすべての内臓・器官のツボ(反射区)が集まっているとのこと。これらを念入りに刺激すると、全身の機能訓練につながるそうです(図解参照)。

 私は今も月一回病院に通い、検査を受けています。現在、処方してもらっているのはワルフ
ァリン(抗凝固薬)という薬だけです。
 これからも自分でできる脳梗塞の再発予防を行い、「テイク イット イージー(適当偉人)」で、人生を楽しく過ごしていくつもりです。

ホームページで当事者の側から脳梗塞の情報提供や情報交換などで交流を深めている、加藤さん

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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