MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
【脳神経外科医】手のツボ「合谷」への刺激で 痛みが消えるしくみ

【脳神経外科医】手のツボ「合谷」への刺激で 痛みが消えるしくみ

ツボ刺激は、伝統的な治療法として現代医学よりはるかに古い歴史を持ち、その効果についても経験的によく知られています。にもかかわらず、いまだに謎を秘めた療法とされています。なぜツボ刺激が効くのか、その根本のところが、いまだによくわかっていないのです。【解説】樋口敏宏(明治国際医療大学脳神経外科教授)

合谷の位置はココ

合谷への刺激を最新技術で測定

 ツボ刺激は、伝統的な治療法として現代医学よりはるかに古い歴史を持ち、その効果についても経験的によく知られています。にもかかわらず、いまだに謎を秘めた療法とされています。なぜツボ刺激が効くのか、その根本のところが、いまだによくわかっていないのです。
 解明が難しいのは、その効果のしくみを生体内で医学的にとらえることが容易ではないからです。

 そこで、私たちは最も古くから多くの人たちに愛用されてきたツボのひとつである合谷に、現代医学の最も新しい測定法であるMRI(磁気共鳴画像法)を用いて、脳機能の面からその秘密を探ってみました。
 合谷を選んだのは、以下のような理由からです。まず、合谷は幅広い効果を持つツボであること。たとえば、頭痛、歯痛、疲れ目、鼻炎、肩こりなど、上半身の多様な症状に効果を発揮するばかりか、精神的なストレスの軽減にも効果があるといわれています。
 中でも有名なのは、痛みへの効果です。私は脳神経外科を専門としていることから、頭痛などの痛みに定評があるこのツボに、以前から興味を持っていました。

 また、MRIを用いて脳を調べる研究では、手の合谷は非常に便利なツボです。測定のときに、脳から遠く離れた手という場所にあり、しかも刺激が容易なために、ツボ刺激をしながら脳への影響をその場で確かめることができます。
 外界と接している皮膚には、日常生活でたえず刺激(感覚刺激)が加わっています。そうした刺激は、神経を介して感覚の中枢である脳に伝えられますが、そうした一般的な刺激と鍼などによるツボ刺激とではどのように違うのかをMRIで調べてみました。

痛みの軽減に関係する脳の領域が刺激される

 まず、MRIで得られた画像①(下の図)を見てください。これは一般的な刺激として、被験者の合谷を化粧ブラシでこすった場合に現れてきた反応です。
 中心後回(一次感覚野)、縁上回(二次感覚野)、視床、島などと呼ばれる脳の部位の血流が増し、そこが賦活(活性化)されているのが画像からわかります。こうした変化は、合谷ではない部位に同様の刺激を加えても起きてきます。

 ところが、捻鍼刺激(痛みを伴わない鍼刺激のこと)、電気鍼刺激、高温温熱刺激などのツボ刺激を合谷に与えたところ、一般的な刺激とは違った、脳の部位が賦活されたのです。特にハッキリとしているのは、帯状回と内側前頭回(補足運動野)などの脳の部位です。画像②(左の下の図)は、そうしたツボ刺激で得られた画像のひとつです。
 実は、これらの領域の変化は、痛覚の処理をするさいに賦活される脳の領域と重なってきます。つまり、このことから、ツボ刺激が一般的な刺激と違って、痛みを軽減する効果があると推察できるわけです。

合谷を刺激したときの脳の反応(MRI画像)

適度な刺激でも効果的で持続する

 また、痛みなどの刺激を脳が受け取るには、受容器と呼ばれる器官を介して、神経が刺激を受けなければなりません。そうした痛みを伴うような刺激を受け取る受容器のひとつに、「ポリモダール侵害受容器」があります。

 実は、ツボ刺激の効果を説明する理論のひとつに、このポリモダール侵害受容器の反応(鎮痛作用)がかかわっているという説があります。
 簡単に述べると、ポリモダール侵害受容器が刺激を受けると反応し、脳の鎮痛システムが賦活されて痛みが軽減されるという説です。

 ポリモダール侵害受容器に反応を起こさせる刺激は強いものである必要はありません。ほとんど痛みを感じないような刺激でも、反応を起こさせることができます。
 今回行った鍼刺激、電気鍼刺激、高温温熱刺激は、実際の治療の現場で行われているのと同様の、ほとんど痛みの伴わない刺激です。私たちの研究は、痛みの受容体を直接刺激するような実験ではありませんが、脳の痛覚の処理系が賦活された事実から考えるなら、このポリモダール侵害受容器説を側面から支持したことになるかもしれません。

 ポリモダール侵害受容器は、指圧、マッサージなどの刺激にも反応します。このことから、一般のかたが自分の指を使って合谷を刺激しても、確かな手応えがあるでしょう。
痛くない適度な刺激で、合谷を5秒間押すことを5回繰り返すだけでも、頭痛などの痛みを軽減する効果があると考えられます。
 しかも、その効果は持続性があり、刺激が終わったあとでも続きます。今回の研究の解析から、そうした従来の説を支持する結果が得られています。

解説者のプロフィール

ひぐち としひろ
京都府立医科大学卒業。明治国際医療大学脳神経外科教授、明治国際医療大学保健医療学部救命救急学科学科長、京都府立医科大学客員教授、医学博士。研究テーマは、磁気共鳴装置を用いた脳機能・脳代謝・内臓機能・骨格筋機能・骨格筋代謝の研究。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

関連記事
症状の原因ははっきりとはわかりませんが人工透析を行う人には老若男女問わずよく現れるものです。これに薬で対応しようとすると体にもっと大きな負担がかかってしまいますし、副作用も心配です。少しでも患者さんの体に負担をかけずに症状をやわらげるのに「手のひら押し」が有効だと思っています。【解説】佐藤孝彦(浦安駅前クリニック院長)
更新: 2019-04-05 10:20:35
東洋医学には五行思想というものがあり、人の体に起きるあらゆることは五臓につながっていると考えられています。涙がすぐに出るのは、「憂い、悲しむ」感情からです。 これは、五臓の中の「肺」の弱りから発する感情です。肺が弱い体質、もしくは肺が弱っているのかもしれません。【解説】田中勝(田中鍼灸指圧治療院院長)
更新: 2019-04-05 10:21:05
手のひら押しのよいところは、いつでもどこでも自分でできて、効果がその場でわかることです。悪いところは手のひらに表れており、そこを押せば、その刺激が手から末梢神経を通り、脊椎を介して、対応する器官や臓器に届きます。それが、全身の回復につながります。【解説】足利仁(手のひらデトックス協会代表理事)
更新: 2019-01-29 18:00:00
2018年3月、腰椎椎間板ヘルニアの症状を注射により軽減する、日本発で世界初の薬剤がついに承認されました。5月には保険適用となり、8月から学会指導医のいる病院で治療を受けられるようになったのです。その薬が「コンドリアーゼ」です。【解説】松山幸弘(浜松医科大学整形外科学教授)【取材】山本太郎(医療ジャーナリスト)
更新: 2019-05-08 13:48:43
テレビでは飲料水メーカー各社によるアスリートを起用した炭酸水のCMがさかんに流れています。この夏にはNHKの『あさイチ』でも炭酸水の特集が組まれ話題沸騰。炭酸水はいまや一大ブームなのです。消費者の健康志向や自然志向がより高まったことで、支持を集めているのでしょう。【レポート】土橋彩梨紗(美容健康ジャーナリスト)
更新: 2019-01-22 18:00:00
最新記事
見たいものにピントを合わせる「目の調節力」は25歳を過ぎる頃からどんどん低下し、30代後半から近くが見えづらくなる老眼になってきます。目の疲れや調節力の低下を改善するためにお勧めなのが、目の周囲を温める「温熱療法」です。私は、温熱療法の効果を多くの実験で確認しています。【解説】高橋洋子(みたにアイクリニック院長)
更新: 2019-05-21 18:00:00
これまで、入院患者さん向けの、いわゆる「リハビリ体操」はありましたが、外来の患者さんが希望するような体操はありませんでした。そこで私たちは、血圧を上げる要因である、末梢の「血管抵抗」を減らす筋トレを考案することにしました。【解説】金子操(自治医科大学附属病院リハビリテーションセンター室長・理学療法士)
更新: 2019-05-21 17:53:18
「脊柱管狭窄症」「椎間板ヘルニア」などの改善のために行われる従来の脊椎手術は体への負担が大きく、後遺症が生じることもあります。そうした中、後遺症をほとんど残さない、新たな手術法が注目されています。【解説】白石健(東京歯科大学市川総合病院整形外科教授)【取材】山本太郎(医療ジャーナリスト)
更新: 2019-05-20 18:00:00
頭痛、肩こり、腰痛、生理痛、耳鳴り、めまい、うつ、眼瞼けいれん、味覚障害、高血圧、逆流性食道炎──。一見、脈絡なく感じられるこれらの症状は、実は「食いしばり」が元凶となって起こっているという共通点があります。患者さんたちに、私は「10秒、口を開けるくせをつけてください」とアドバイスをしています。【解説】吉野敏明(誠敬会クリニック銀座院長)
更新: 2019-05-19 18:00:00
慢性的なひざ痛の原因はさまざまですが、なかなか完治しにくい上、少し無理をすると痛みがぶり返すので、かなり厄介です。今回ご紹介する「ひざと足の裏の温冷・温温湿布」は、慢性的なひざ痛に対して、自宅で簡単に痛みを解消することができる方法です。【解説】岡田明三(神宮前鍼療所院長)
更新: 2019-05-18 18:00:00

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt