MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
【トラウマを解消】つらい記憶を癒す心理療法「バタフライ・ハグ」のやり方

【トラウマを解消】つらい記憶を癒す心理療法「バタフライ・ハグ」のやり方

バタフライ・ハグは、イグナシオ・ジャレーロ博士らによって1998年に考案されました。当時、心理療法の世界では「目や耳、腕といった体の一部を、左右交互に刺激することには、トラウマの解消効果がある」という研究が注目を集めていました。【解説】藤本昌樹(東京未来大学子ども心理学部准教授・臨床心理士)

左右の肩を「トントン」で自信のなさを解消できる

 あなたの自信のなさが、ある動作をするだけで、簡単に解消されると聞いたら驚かれるかもしれません。
 早速、その動作を紹介しましょう。

 まずは、自分を抱きしめるように、両腕を胸の前で交差させてください。両手のひらは、肩に軽く添えます。
 次に、あなたが「安心を感じるもの」を思い浮かべてください。「心地いいなぁ」「リラックスするなぁ」と思うものでもかまいません。
 具体的なものでなくても、好きな人や場所、たいせつな思い出、自分だけの想像の世界を、思い浮かべてもかまいません。

 思い浮かべたら、そのまま目をつむり、胸の前で両腕を交差したまま、左右の肩を、両手で交互に、ゆっくりたたきましょう。
 強くたたく必要はありません。安心のイメージを味わいながら、「トン・トン・トン」と、左右の肩を、ゆっくり交互にたたきます。

 左右1回で1往復です。12往復したら、一度動きを止めて、目をつむったまま、ゆっくり深呼吸してください。
 深呼吸でリラックスしたら、もう一度、左右の肩を両手で交互にたたきます。
 12往復したら、もう一度、深呼吸してください。

 おそらく、体から力みが抜けて、胸のあたりが楽になるような感覚が得られたかたも、少なくないかと思います。
 その感覚を、しみじみと味わいながら、深呼吸してください。

バタフライハグのやり方

自然災害や銃撃事件のトラウマ解消に活用

 ご紹介したのは「バタフライ・ハグ」という、誰でも、どこでもできる心理療法の1つです。

 バタフライ・ハグは、イグナシオ・ジャレーロ博士らによって、1998年に考案されました。
 当時、心理療法の世界では「目や耳、腕といった体の一部を、左右交互に刺激することには、トラウマの解消効果がある」という研究が注目を集めていました。
 そして、世界各地で、左右交互刺激を使った心理療法が、次々と開発されるようになりました。バタフライ・ハグもその1つです。

 1998年にメキシコで起きたハリケーン災害の被害者に、バタフライ・ハグを試してもらったところ、トラウマの解消に非常に効果があったことから、世界的によく知られるようになりました。
 以来、地震などの自然災害や銃撃事件などに巻き込まれた人たちの、つらい記憶を癒す方法として、バタフライ・ハグは世界各国で活用されています。

安心・安全のイメージはトラウマの消化を助ける

 バタフライ・ハグのポイントは、「安心・安全を感じるもの」を思い浮かべながら行うことです。
 自分が好ましく感じるものや人、場所や思い出……。家族や友人でもいいですし、映画やアニメのキャラクターでもかまいません。

 こうした安心・安全を感じられるイメージを、心理療法の世界では、「リソース(資源)」と呼びます。
 リソースとのつながりは、つらい過去を乗り越えるのに、欠かせないものです。
 つらい過去をたくさん抱えた状態を例えると、「食べすぎで胃がパンパンに膨らんだ状態」と言うことができます。これでは消化がなかなか進みません。

 リソースとは「胃薬」のようなものです。つらい過去の消化を助けてくれるので、胃にゆとりが生まれ、本来の消化力を発揮できるようになります。
 そうなれば、嫌なことが起こっても、今度は消化できます。

 バタフライ・ハグを行うと、リソースが活性化するので、リソースとのつながりが強くなります。
 普段から、リソースとしっかりつながっておけば、トラウマやストレスを消化する力も強まります。
 その結果、困難があっても「自分はだいじょうぶ」と思える自信を持てるようになるのです。

嘔吐がなくなり登校できた!情緒が安定し仕事に復帰!

 私が担当したクライアントに、登校中に嘔吐してしまうため、学校に行けないお子さんがいました。
 実は彼は、ある人への強い怒りを抱えていました。
 その怒りは、体に不調を起こすほど強烈で、それが嘔吐の原因になっていたのです。

 本人は、怒りを感じる相手について、考えることさえ避けたいようでした。そこで私は、彼のリソースを高める方法を選びました。
 彼には、「心地よく感じる場所を思い浮かべて」と伝えました。
 最初は「う〜ん」と悩んでいましたが、しばらくして彼は、家族旅行で行った九州や沖縄のことを思い出しました。
 家族旅行の思い出を味わっているとき、彼は心地よさに包まれているようでした。
 そして、この日以来、彼の怒りは消え、嘔吐もしなくなったのです。

 リソースとつながることが心の安定をもたらす、いい例です。
 家族からDVを受けた女性が、リソースとつながることで、情緒が安定し、仕事に復帰できたケースもありました。

 心理療法の中には、トラウマになっている記憶を、クライアントに思い出させる方法もあります。
 こうした方法にも効果はありますが、トラウマが強すぎて、逆効果になることも少なくありません。
 その点、リソースに注目するバタフライ・ハグは、トラウマを思い出す必要はなく、困難を乗り越える力が自然と高まっていく、安心・安全な方法と言えるでしょう。

解説者のプロフィール

藤本昌樹(ふじもと・まさき)
東京未来大学こども心理学部准教授・臨床心理士。
 1973年、東京都生まれ。東京学芸大学大学院教育学研究科心理学講座修了。東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科博士後期課程修了。静岡福祉大学准教授、桐生大学准教授を経て、現職。社会福祉士、精神保健福祉士。トラウマケア専門カウンセリングルームSeeding Resource代表。nico株式会社エグゼクティブアドバイザー。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

関連するキーワード
関連記事
私の場合、いろいろなプログラムを受けた後、交感神経の数値は下がっても、副交感神経にはほとんど変化がありません。施術直後でこの状態なのですから、普段はもっと緊張しているのだと思います。施術を受けた後、あくびが何度も出たのは、交感神経の緊張が取れ、リラックスした証拠だと思います。【体験談】西野博子(仮名・主婦・53歳)
実は定年で退職してから、家の中で我慢することが多くなっていたのです。夫が自宅で仕事をしているのですが、納期が近づくと空気が張りつめてきます。1日じゅう一緒にいる私もその空気に巻き込まれて、いつも緊張していました。それをずっと我慢していたのです。【体験談】白石友子(仮名・主婦・66歳)
人間は社会を生き抜くため、生きがいを得るために痛みや不調など、体が発する少々のサインなら無視して、我慢して生きようとします。こうして体と脳との間にズレが生じていきます。自分の脳の疲労を「疲労感」として受け取れていないかたがとても多いです。【解説】長田夏哉(田園調布長田整形外科院長)
念仏の念の字は「今の心」と書きますが、過ぎ去った過去を悔やんだり、まだ来ない未来を心配したりしないで、今の心を感じて生きるのは、まさに心の安定を得る秘訣です。手振り瞑想は、そのためにもピッタリで、「動く念仏」とも言えます。【解説】樋田和彦(ヒダ耳鼻咽喉科・心療内科院長)
上司のイライラした様子や、昔、よく目にした母のつらそうな表情などの断片が浮かんでは消え、頭の中は常にザワザワしていた状態でした。そのため頭が休まるときがなかったのです。脳マッサージを受けた瞬間、頭の中を騒がせていた雑念がすっかり消え、無になりました。【体験談】森若奈(会社員・45歳)
最新記事
まずチェック項目で自分の足の指がどんな状態かチェックしてみましょう。はだしになって、自分の足の指をよーく見てください。足の指をチェックして気になる項目があっても、あきらめることはありません。「きくち体操」でこれから足の指を育てていけばよいのです。【解説】菊池和子(「きくち体操」創始者】
私は、60歳の今も左右の視力は1・0を保っています。これまでメガネの世話になったこともありません。老眼知らずの状態をキープしている秘密は、私が毎日行っているトレーニング「目のスクワット」にあるのです。毛様体筋をほぐす効果があります。【解説】本部千博(ほんべ眼科院長)
体重100kgの人なら3kg、80kgの人なら2.5kg程度の減量で、条件付きですが糖尿病の改善は可能です。体重が3%減少すると、ヘモグロビンA1cが3%程度下がることがわかったからです。例えば、ヘモグロビンA1cが9%の人なら、だいたい6%程度まで下がります。【解説】吉田俊秀(島原病院 肥満・糖尿病センター長)
これまで、入院患者さん向けの、いわゆる「リハビリ体操」はありましたが、外来の患者さんが希望するような体操はありませんでした。そこで私たちは、血圧を上げる要因である、末梢の「血管抵抗」を減らす筋トレを考案することにしました。【解説】金子操(自治医科大学附属病院リハビリテーションセンター室長・理学療法士)
1日の疲れを取るには、就寝時間や睡眠時間ではなく、「眠りに就いて4時間以内に、深睡眠を取ること」がたいせつなのです。しかし現代人の多くは、深夜にテレビやスマホを見たり、ストレスで体の緊張が取れなかったりして、本来の睡眠リズムが狂い、深睡眠を取りづらくなっています。【解説】白濱龍太郎(睡眠専門医)