解説者のプロフィール
肝臓の不調が冷えや生理痛を招く
「生命の化学工場」と呼ばれる肝臓は、実にさまざまな役割を担っています。
胃腸で消化された栄養素の分解と再合成、脂肪の消化吸収を助ける胆汁の生成など、どれも体にとって欠かせない働きです。
そして何より肝臓は、アルコールや食品添加物、有害金属といった、体に取り込まれた毒素を無害化する“デトックス”の重要器官です。
一方、肝臓の働きは複雑で、ありがたみがわかりにくい臓器でもあります。
“沈黙の臓器”と言われるように痛みを感じづらい点も、肝臓の印象が薄い理由でしょう。
「痛みを感じにくい」からといって、「肝臓は疲れ知らず」というわけではありません。
慢性的なストレス、過労、脂肪分・糖分の取りすぎ、お酒の飲みすぎ、薬の飲みすぎなどが続けば、肝臓も当然疲弊します。
そうなれば体に毒素をためやすくなるなど、さまざまな悪影響が起きるでしょう。
不調の原因を調べたら、「実は肝臓が弱っていた」ということも少なくないのです。
特に女性の場合、肝臓の不調は生理前のイライラに現れます。
いわゆる月経前症候群(PMS)です。
肝臓は「エストロゲン」という女性ホルモンを分解しています。
肝機能が低下すると、血中のエストロゲンが過多になり、ホルモンバランスが崩れてしまうこともあるのです。
私の治療院にも、PMSに悩むクライアントがよくいらっしゃいます。
肝臓への施術を行うと、イライラしにくくなったり、生理痛が緩和したりする人がたくさんいます。
肝臓の不調は周辺の筋肉をこわばらせ、さらなる弊害を招きます。
特に、肝臓の真上に密着している横隔膜は、影響を受けやすい筋肉です。
横隔膜がこわばり働きが悪くなると、呼吸が浅くなります。
すると、意志とは無関係に体を制御する自律神経のうち、アクセル役の交感神経が優位になり、全身の筋肉が緊張します。
この状態が続けば、血管が収縮して血流が悪くなり、冷えや肩こり、疲労感を生じやすくなります。
また、全身の緊張は、睡眠障害や精神的な不安定さなど、多くの不調につながります。
肝臓の状態は、全身に大きな影響を与えているのです。
日頃からよい状態に保つことがたいせつです。
頑固な肩こりが改善し老眼の悪化も止まった
今回紹介する「肝臓マッサージ」は、肝臓や周辺の筋肉にアプローチする方法です。
1日2セットの肝臓マッサージで、横隔膜などの筋肉のこりをほぐすことで、肝臓の動きがスムーズになります。
肝機能が改善し、全身のデトックス力が高まれば、生理にまつわるトラブルの緩和、消化機能の改善につながります。
また、横隔膜が柔軟になって、呼吸が深くなり、自律神経のバランスも整います。
それによって、冷えや頭痛といった血流障害や、慢性疲労にも効果を期待できるでしょう。
肝臓周辺のこわばりが取れると、姿勢がよくなり、肩こりや腰痛にも効果的です。
特に、右肩のこりは、肝臓の不調と深い関係があります。
肩こりで悩んでいるかたに、肝臓マッサージをすると、ウソのように改善することがあるのです。
四十肩や五十肩にも効果はてきめんで、痛みが和らぐ人が多くいます。
当院のクライアントで、「老眼が一気に進んで、短期間で何度もメガネを作り変えた」というかたがいました。
話を聞くと右肩に痛みがあるとのこと。
肝臓マッサージをしたところ、老眼の悪化がストップしたこともありました。
肝臓が持つ健康への影響はこのようにとても複雑です。
ぜひマッサージで肝臓をいたわり、不調の改善に役立ててください。
イライラにも効果「肝臓マッサージ」のやり方

石垣英俊
神楽坂ホリスティック・クーラ代表。2004年に開業し、体の痛みや不調に悩んでいる人々へ、よりよい施術、環境、アドバイスを提供すべく研鑽を積んでいる。一般社団法人日本ヘルスファウンデーション協会理事。セラピストカレッジ「ナーチャ」校長。鍼師、灸師、按摩マッサージ指圧師。オーストラリア政府公認カイロプラティック理学士。応用理学士。著書に『健康の「肝」を知るだけで人生が変わる!肝臓の気もち。』(BAB ジャパン)など。