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血栓症になりやすい人は内臓肥満型!痩せていても要注意

血栓症になりやすい人は内臓肥満型!痩せていても要注意

現在、日本でいちばん怖れられている病気は、おそらくガンでしょう。しかし、私に言わせれば、ガン以上に怖いのが、脳梗塞や心筋梗塞(脳や心臓の血管が詰まって起こる病気)です。脳梗塞や心筋梗塞の原因となるのが、血栓症です。【解説】浦野哲盟(浜松医科大学副学長、医生理学講座教授)

ガンよりも怖いが、危機感が少ない

現在、日本でいちばん怖れられている病気は、おそらくガンでしょう。
しかし、私に言わせれば、ガン以上に怖いのが、脳梗塞や心筋梗塞(脳や心臓の血管が詰まって起こる病気)です。
最悪の場合、それまで健康だった人が瞬時に命を落とすこともあります。
たとえ命が助かっても、脳梗塞は重篤な後遺症(半身不随や言語障害など)に苦しむことになるケースも多く見られます。

脳梗塞や心筋梗塞の原因となるのが、血栓症です。
大きくなった血栓が血液に乗って飛んでいき、脳や心臓などの重要な血管を詰まらせるのです。

ガンは怖い病気ですが、いきなり体の自由が利かなくなったり、一瞬で死が訪れたりすることもほとんどありません。
死を迎えるにしても、そこに至るまでに時間的な余裕はあります。

にもかかわらず、血栓症に対しては、ガンほど危機感をもたれていないようです。
その理由は、血栓が詰まって発作が起きるまで、まったく無自覚だからです。

では、どういったタイプの人が血栓症になりやすいのでしょうか。

それは、高血圧や糖尿病、脂質異常症、動脈硬化などの病気がある人や、その予備軍の人たちです。
そして、これらの生活習慣病と深くかかわっているのが、肥満です。

太って見えなくても内臓肥満は要注意!

生活習慣病がある上に、太っている人は、血栓症のリスクが高くなります。
ちなみに、この場合の「太っている」とは、内臓の周りに脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」を指します。

内臓にたまった脂肪細胞は、「PAI‐ 1」という悪玉物質を分泌します。
PAI‐1は、血栓を溶かすのを邪魔する物質で、太れば太るほど増えます。

血栓は、血管の内皮細胞から分泌されるtPAという酵素によって開始される線溶系によって溶解します。
PAI‐1は、tPAの働きを阻害するのです。

ですから、PAI‐1が増えれば増えるほど、血栓が溶けにくくなってしまうのです。
内臓型肥満の人は、このPAI‐1が多く、血栓症になりやすいのです。

肥満とは、一般的にBMI(体格指数)が25以上の人をいいます。
しかし、一見すると太っては見えないタイプの内臓肥満もありますから、中性脂肪値の高い人、善玉(HDL)コレステロール値の低い人、ウエスト周りが太い人などは、注意してください。

定期的に頸動脈エコーで動脈硬化をチェックしよう

脳梗塞や心筋梗塞のリスクは、動脈硬化がどれくらい進行しているのかに大きく影響されます。

そこで、動脈硬化の進行具合を判断するのが、頸動脈エコーです。
首の動脈(頸動脈)の状態を超音波エコーでチェックする検査です。
脳や心臓の動脈に比べて、見やすいのが特長です。

この血管壁が厚くなっていたり、内腔が狭くなっていたら、全身の血管も似たような状態だと判断できます。
ですから、定期的に頸動脈エコーを受けることを、私はお勧めします。

頸動脈がきれいなら全身の血管もきれい


動脈硬化が進行している場合は、予防薬(コレステロールを下げる薬や抗血小板薬、抗凝固薬)の処方が必要になってきます。

私はこれまで数多くの頸動脈エコーを見てきました。
中には、コレステロールを下げる薬を30年以上飲んでいる患者さんもいます。
そういう患者さんは、頸動脈がきれいです。
頸動脈がきれいなら、全身の動脈もきれいだと判断できます。

現在の風評では、コレステロールを下げる薬に対する批判が強くあるようですが、動脈硬化が進行している場合は、薬の力に頼るのも大切だと、私は考えています。
薬の副作用よりも、脳梗塞や心筋梗塞によるダメージのほうがはるかに大きいからです。


次の記事では、悪玉物質のPAI‐1を減らして、血栓を溶かす力を復活させるセルフケアをご紹介します。

解説者のプロフィール

浦野哲盟 
浜松医科大学副学長、医生理学講座教授。
浜松医科大学医学部卒業。血栓研究の第一人者で、テレビや新聞、講演会を通じて、血栓の形成と溶解機構を一般の人にもわかりやすく解説している。
国際血栓止血学会の役員として「世界血栓症デー」活動等により、血栓症の啓発に努めている。

●浜松医科大学
https://www.hama-med.ac.jp/index.html

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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