医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営

【血栓症の予防】血栓を溶かすtPAの働きを良くする運動は「ウォーキング」がよい

【血栓症の予防】血栓を溶かすtPAの働きを良くする運動は「ウォーキング」がよい

脳梗塞(脳の血管が詰まって起こる病気)になったとき、血栓を溶かすために使う画期的な薬があります。それは、tPAという薬です。脳梗塞の発作を起こしても、これを4時間半以内に投与すれば血栓が効率よく溶解され、著効例では、ほとんど後遺症が残ることはありません。【解説】浦野哲盟(浜松医科大学副学長、医生理学講座教授)


脳梗塞の後遺症を残さない画期的な薬「tPA」とは

→【前の記事】血栓症になりやすい人は?

脳梗塞(脳の血管が詰まって起こる病気)になったとき、血栓を溶かすために使う画期的な薬があります。
それは、tPA(ティッシュー・プラスミノーゲン・アクティベータ)という薬です。

脳梗塞の発作を起こしても、これを4時間半以内に投与すれば、血栓が効率よく溶解され、著効例では、ほとんど後遺症が残ることはありません。
この薬が画期的なのは、ほかの薬に比べて血栓溶解の効率がよく、出血などの副作用が少ないことです。

ほかのタイプの血栓溶解薬では、大出血が原因で、せっかく治療を受けても命が助からない場合もあったのです。
しかし、tPAは、こうした大出血を起こす危険性が少ないのです。

tPAは体内でもつくられている!

tPAは、実は、体内でもつくられています。血管内皮でつくられており、線溶系を開始して血栓を溶解します。
このtPAを働きやすくするセルフケアがあります。それは、運動です。

血栓が速やかに溶けてつくられにくくなる

私たちは、静岡県袋井市の人たちの協力を得て、運動の効果を調べる調査を行いました。
週に1回、1時間ほどの有酸素運動トレーニングを行い、ほかの日は各自で歩くなどの運動をしてもらいます。

これを3ヵ月続けたところ、顕著な結果が出ました。
体重は平均で1.6㎏の減少にとどまりましたが、コレステロールや中性脂肪が低下し、血栓溶解時間が9時間から7.4時間に短縮され、PAI‐1の値が19.3ng/㎖から16.4ng/㎖に減少したのです。

血栓が溶けるのを阻害するPAI‐1は、運動をすると減って、tPAが働きやすくなります。
そのため、血栓が溶ける時間が速くなり、病的血栓がつくられにくくなります。

しかも運動は、血液をドロドロにするコレステロールや中性脂肪も減らす効果があります。
こうしたドロドロ物質が減ると、血流がよくなり、動脈硬化が進みかけた血管でも、進行を抑えることができます。

このように運動は、血液、血管、血流という血栓をつくる三要因に働きかけて、血管の内皮細胞の状態を改善し、血栓ができにくい環境を作ってくれるのです。

週に4回以上30分ほど歩くだけ「血栓溶かしウォーキング」

では、tPAを体内でつくるためには、どれくらいの運動をしたらいいのでしょうか。
私が勧めているのは、1日30分程度のウォーキングを週に4回以上行う「血栓溶かしウォーキング」です。

私たちは普段、立っていても、イスに腰掛けていても、足を下げています。
足を下げた状態を長時間続けると、足の静脈がうっ滞し、血栓ができやすくなります。

それが肺動脈に飛んで肺血栓塞栓症を起こすのが、エコノミークラス症候群です。
しかし歩けば、ふくらはぎの筋肉のポンプ運動が働いて、足の血流がよくなります。

すると、血栓ができにくくなります。
また運動は、激しい運動よりも、比較的緩やかな有酸素運動のほうが効果があります。

自転車こぎのような激しい運動をすると、一時的に大量のtPAが分泌されます。
しかしこれは一過性のもので、短い時間しか効果がありません。
しかも一度に大量のtPAを使うと、血管内皮に貯められていたtPAが減ってしまいます。

それに対して、有酸素運動は、tPAの分泌を促すわけではありません。
しかし、PAI-1の産生が抑えられ、tPAが働きやすい環境を作ります。
したがって、ウオーキングのような有酸素運動のほうが有効なのです。

体重を減らす以上に多くの効用をもたらす

血栓溶かしウオーキングを行うときは、速く歩く必要はありません。
ゆっくり過ぎると効果はありませんが、人と話ができる程度の速さで十分です。
 
30分というのは、脂肪を燃焼させるのに必要な時間です。
有酸素運動をすると、最初に糖が分解され、次いで脂肪が分解されます。

効率的に脂肪を燃焼させるには、30分くらいは運動を続ける必要があります。
血栓を溶かす動きを邪魔するPAI‐1は、内臓脂肪から分泌されます。

ですから、運動をして内臓脂肪が減れば、PAI‐1の分泌自体も抑えることができます。
血栓溶かしウオーキングはいつやっても構いませんが、時間を自由に使える人は、午後より午前中に歩くといいでしょう。

PAI‐1は午前中多く分泌され、夕方になるほど少なくなります。
したがって、午前中のほうが血栓が溶けにくく、血栓症の発症も、午前中に多い傾向があります。

しかし長期的に見てPAI‐1を減らすことが目的ですから、いつ歩くかということよりも、継続して歩くことが大事です。
継続すれば、動脈硬化の進行を抑えられますし、進行途中の軟らかい動脈硬化巣なら改善する可能性もあります。
 
30分歩くだけの運動では、体重はそれほど減らないかもしれません。
しかし、体重を減らすこと以上の効果が、運動にはあります。

血流がよくなり、血液がきれいになって、血管の機能が改善するのです。
これは、血栓症や動脈硬化を防ぐだけでなく、全身の健康に役立ちます。

ストレスを発散するので血栓もできにくくなる

また、歩くことはストレスの発散にもなり、その点でも血栓をできにくくします。
歩くことによって体にもたらす健康効果は計りしれません。

加えて、メタボを解消する努力も必要です。
糖尿病や脂質異常症がある人は、油っこいものや甘いものを控えるなど、食事にも気を付けてください。

そうした日々の積み重ねが、脳梗塞や心筋梗塞の予防につながります。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


【耳鳴り・めまいが続く】改善効果を上げるセルフケア3原則

【耳鳴り・めまいが続く】改善効果を上げるセルフケア3原則

実際のところ、耳鳴りやめまいは、複数の原因が複雑に絡み合って生じることが少なくありません。ただ、どの症状に対しても多くの場合に共通しているのが、生活習慣の乱れです。そこで私は必ず行ってほしいことを、①睡眠、②水分、③ウォーキングの三つにしぼり、患者さんに伝えています。【解説】板谷隆義(板谷耳鼻咽喉科院長)


血栓予防作用がアスピリンと同じ!ニンニクのにおい成分「MATS」の効果

血栓予防作用がアスピリンと同じ!ニンニクのにおい成分「MATS」の効果

ニンニクは、精力がつくといった強壮作用で知られています。一方で独特なにおいが苦手という人も少なくありません。しかし、ニンニクのにおい成分には、さまざまな健康効果があるのです。私たちは、におい成分の一つであるMATSに「血栓の形成を抑制する働き」があることを突き止めました。【解説】関泰一郎(日本大学生物資源科学部教授)


21kg痩せた医師に聞く糖尿病克服のヒント「生活改善で糖尿病は消せる」

21kg痩せた医師に聞く糖尿病克服のヒント「生活改善で糖尿病は消せる」

転機は、57歳の健康診断でした。ヘモグロビンA1cも血糖値も、すでに境界型ではなく、本格的な糖尿病の兆候を示していたのです。ウォーキングを始めると同時に、10ヵ月後にフルマラソンを走ることを周囲に宣言。そうしてしまったら、もうやらないわけにいきません。【解説】清水一郎(おひさまクリニックセンター北院長)


【心筋梗塞と脳梗塞】予防には軽い運動が効果! おすすめは腕振り(スワイショウ)

【心筋梗塞と脳梗塞】予防には軽い運動が効果! おすすめは腕振り(スワイショウ)

「じっと座ったまま」など、同じ姿勢で動かないでいることを「不活動状態」といいます。この不活動状態を、簡単な運動で適度に中断することが健康維持のカギであることが、明らかになってきています。最適なものの一つが「スワイショウ」という腕ふり運動だと考えています。【解説】塩谷英之(神戸大学大学院保健学研究科教授)


【さとう珠緒さん】隠れ脳梗塞とテレビ番組で判明!私の予防対策は「干し納豆」

【さとう珠緒さん】隠れ脳梗塞とテレビ番組で判明!私の予防対策は「干し納豆」

テレビ番組の企画で、脳のMRI検査を受けたところ、「隠れ脳梗塞」が見つかったのです。隠れ脳梗塞とは、まだ症状はないけれど、画像検査で見つかる小さな脳梗塞のことだそうです。脳梗塞対策に、干し納豆をしっかり食べようと思った私は、通販で取り寄せて、ほぼ毎日食べるようにしたのです。【体験談】さとう珠緒(タレント)


最新の投稿


夜間頻尿改善のために食べた「干しブドウ酢」トイレの回数が減って効果を実感

夜間頻尿改善のために食べた「干しブドウ酢」トイレの回数が減って効果を実感

効果はすぐに実感しました。食べ始めて2~3日で、夜のトイレの回数が2回に、1~2週間で1回に減ったのです。この変化には、自分でも驚きました。私は、毎朝職場で重機をチェックし、点検表をつけています。今は、老眼鏡を使うのは薄暗い曇りの日だけで、晴れた日は老眼鏡を使っていません。【体験談】佐藤徳雄(重機オペレーター・71歳)


歪んだ体を正す「正座あおむけ」でひざ痛が軽減!過剰な食欲も正常に

歪んだ体を正す「正座あおむけ」でひざ痛が軽減!過剰な食欲も正常に

15秒ですらきつかった姿勢の維持も、1分以上維持できるようになりました。徐々に、しかし確実に、体は変わっていきました。腰痛はすっかり消え、右ひざの痛みもいつの間にか消えていたのです。おなかの冷えからくる腰痛もなくなりました。【体験談】朝倉啓貴(派遣インストラクター・49歳)


便秘や痔の改善におすすめ!腸から健康になる食事は「甘酒寒天」

便秘や痔の改善におすすめ!腸から健康になる食事は「甘酒寒天」

便秘を食事で改善しようとする際に、重要なのが、食物繊維です。寒天は、水溶性と不溶性、両方の食物繊維を含むため、機能性食品として、大変理想的です。甘酒は発酵食品ですから、まさに微生物のかたまりです。腸内に入ると、乳酸菌などの善玉菌を増やします。痔の改善にも、いい効果が上がっています。【解説】平田雅彦(平田肛門科医院院長)


傷口は治ったのに古傷が痛む…11円スリッパで腫れが引いて楽になった!

傷口は治ったのに古傷が痛む…11円スリッパで腫れが引いて楽になった!

十数年前に登山中に木の株に足を引っかけて転び、足の腫れと痛みに悩まされていました。11円スリッパをはき始めて3~4日たったころ、「左足のくるぶしの出っ張りが見える! 」と驚きました。というのも、ケガ以来、左の足首の腫れによって、くるぶしの外側の骨が見えなくなっていたからです。【体験談】土田喜代美(仮名・主婦・74歳)


コレステロール値が下がった!バナナ酢で自然に2kgやせてお通じも快調

コレステロール値が下がった!バナナ酢で自然に2kgやせてお通じも快調

バナナ酢を飲み始めて2週間くらいで、毎朝、食後にお通じがあり、よい便が出るようになったのです。おなか周りもすっきりしてきました。体重を量ってみると、飲む前は57kgだったのが、3ヵ月で2kg減り、55kgになっていました。【体験談】佐々木裕子(主婦・56歳)