解説者のプロフィール
日本は世界で最も塩分を取っている国
日本の食は全般的にヘルシーですが、一つ、大きな難点があります。
それは塩分が過剰だということです。
WHO(世界保健機関)の塩分摂取目標値が1日5g未満なのに対し、日本人の平均的な塩分摂取量は10〜11gです。
諸外国では7〜8gのところが多く、日本は世界で最も塩分を多く取っている国の一つなのです。
子どものころからの習慣なので、日本人は意識しないで多量の塩分を取っています。
このことの弊害は大きく、日本人に多い病気の元凶にもなっています。
減塩することはとても重要ですが、高塩分に慣れた人が塩分を減らそうとしても、物足りなさを感じて難しいものです。
そこで、まず簡単にできる減塩の入門として私が提唱しているのが「しょうゆスプレー」です。
しょうゆスプレーについて詳しく述べる前に、塩分の弊害について、もう少しお話ししておきましょう。
過剰な塩分は血管を傷め病気へとつながる
塩分といえば、高血圧を思い浮かべる人も多いでしょう。
高血圧は、わが国でいちばん多い病気で、大人の2人に1人は高血圧です。
なぜなら、日本人には食塩を食べると血圧が上昇する「食塩感受性」という体質の人が多いからです。
高血圧になると、血管が傷んで動脈硬化が進み、血管が詰まりやすくなって、脳梗塞や心筋梗塞(脳や心臓の血管が詰まって起こる病気)、そしてそれに続く死亡や寝たきり、認知症のリスクが高まるのです。
一方、食塩感受性が低ければ高塩分食を取ってもよいかというと、そうではありません。
近年の研究では、過剰な塩分を取ると、たとえ高血圧にならなくても、直接、血管が傷み、やはり脳梗塞や心筋梗塞などになることがわかってきました。
また、食塩過剰が胃ガンや骨粗鬆症の原因になることも最近、判明しました。
食塩感受性の高い人はもちろん、そうでない人も、日本人なら誰でも健康な血管を保ち、多くの病気にならないためには、減塩が大切です。
美容の面でも、高塩分食は、顔や足のむくみの原因になります。
小顔やスッキリ足を望む人には、減塩をお勧めします。
減塩すれば、高血圧や動脈硬化を防いでしなやかな血管を保ちやすくなるうえ、多くの病気を防ぎ、健康効果も得られます。
日本高血圧学会では、1日6g未満を推奨しています。
全体にしょうゆが広がりおいしく減塩できる
そのために、おおいに役立つのがしょうゆスプレーです。
しょうゆスプレーは、小形のスプレー容器にしょうゆを入れたものです。
しょうゆ入りの商品もありますが、容器だけのものは、日ごろ使い慣れたしょうゆを入れて使います。
使い方は簡単です。しょうゆ差しの代わりに、しょうゆスプレーを使って、食品や料理に噴きかけるだけです。
しょうゆが細かい霧状になって素材の表面全体につくので、少量でもおいしく味わえます。
しょうゆの香りもふわっと広がり、それも満足感をもたらします。
商品によりますが、私が製品開発にアドバイスしたしょうゆスプレー(商品名「減塩ちょっとかけスプレー」)は、目詰まりや液だれしにくく、1プッシュで出るしょうゆの量は、わずか0.1ccで、食塩相当量は、0.015gです。
それに対し、しょうゆ差しでたらすと、どんなに注意深く少なくしても、0.7ccは出ます。
油断するとすぐ1〜2cc出て、素材に染み込んでしまいます。
しょうゆスプレーの場合、例えば刺し身なら、1プッシュで十分、おいしく味わえます。
もの足りなくて2〜3プッシュしても、しょうゆ差しに比べて3分の1以下です。
微妙な調整もできるので、しょうゆのかけ過ぎによる余分な塩分摂取が抑えられ、楽しくおいしく食べながら減塩できるのです。
煮物や炒め物なども、調理のときはごく薄い味つけにしておき、調理の仕上げか食べる前にしょうゆスプレーで味を調えると、効果的に減塩できます。
注意点を言うと、噴きかけたときにしょうゆが広がるため、食卓にかかってしまうことがあります。
食材は大きめの容器に盛るとよいでしょう。
できれば、このしょうゆスプレーをきっかけにして、減塩の味を覚え、食生活全般の減塩につなげられれば理想的です。
特に、これから成長する子どもたちが減塩して薄味に慣れると、それが生涯にわたって普通の味になり、将来の病気を防いでくれます。
そのためにも、しょうゆスプレーを、家族全員で使ってみてください。
これが「しょうゆスプレー」だ!

日下美穂
日本高血圧学会減塩委員会委員。獨協医科大学卒業、同大大学院終了。医学博士。1994年に広島県呉市で日下医院を開業。減塩による健康維持を提唱し、新聞やテレビなどでも活躍。著書『3日間塩抜きダイエット』(宝島社)が好評発売中。