【アンチエイジング】「納豆」の健康長寿物質 “ポリアミン” が老化予防に役立つ

【アンチエイジング】「納豆」の健康長寿物質 “ポリアミン” が老化予防に役立つ

アンチエイジングや健康長寿に役立つ物質として、私たちが注目しているのが、「ポリアミン」です。ポリアミンの多い食べ物を摂取すれば、遺伝子の異常メチル化が抑制されて、生活習慣病の発生を予防できる可能性があるでしょう。【解説】早田邦康(自治医科大学大学院教授・さいたま医療センター循環器病臨床医学研究所所長)


マウスが健康で寿命が延びることを確認

アンチエイジングや健康長寿に役立つ物質として、私たちが注目しているのが、「ポリアミン」です。
ポリアミンは、すべての生物の細胞内で、アミノ酸の一種であるアルギニンから合成される物質です。

細胞の増殖や生存に深く関わっており、ポリアミンがないと生物は成長できません。
成長期には体内で盛んに合成されますが、年を取ると合成能力が低下していきます。

私たちの研究グループは、ポリアミンが長寿に関与している可能性を世界で最初に指摘しました。
ポリアミン濃度の高いエサでマウスを飼育すると、血中のポリアミン濃度が高まり、普通のエサを与えたマウスより寿命が延びることを確認したのです。
しかも、ポリアミンをたくさん食べて長生きしたマウスは、高齢になっても活発で、毛並みがよく、普通のエサで飼育したマウスより体重が重い傾向にありました(下の写真参照)。

私たちが最初にポリアミンに注目したきっかけは、ポリアミンには炎症を抑え込む働きがあることを発見したことでした。

炎症とは、簡単にいうと、体内に入ってきた異物に対する、白血球などの免疫細胞による攻撃の結果、生じるものです。
侵入してきた細菌などを免疫細胞が攻撃するときに、さまざまな物質が体内に放出され、炎症が起こります。

炎症は、免疫細胞の表面にある「LFA–1」というたんぱく質が血管の内貼りの細胞にくっつくことによって免疫細胞が活性化され、活性化した免疫細胞から炎症性サイトカインというたんぱく質が産生されて生じます。
ポリアミンは、免疫細胞のLFA–1を減らし、炎症性サイトカインの産生を抑制して、炎症を抑えることがわかったのです。

加齢とともに、体内で生じた老廃物や変性した細胞などに免疫細胞が反応して、体内の至るところで弱い炎症が持続的に発生します。
また、加齢に伴い、体内のLFA–1が増加することもわかっています。
つまり、年を取れば取るほど、炎症が起きやすい状態になっていくのです。

近年のさまざまな研究で、こうした慢性的な炎症が、糖尿病や動脈硬化、血管障害をはじめとする生活習慣病の要因となることが明らかになっています。
私たちは、当初ポリアミンは、炎症の元となるLFA–1を抑えることで、老化や病気を抑制するのではないかと考えました。

納豆はポリアミンを豊富に含み食べやすい!

研究を進めると、ポリアミンがLFA–1の量を減らすのは、遺伝子に作用するからだということがわかりました。
遺伝子情報は、遺伝子の本体であるDNAからRNAへの転写によって伝達され、その情報が翻訳されてたんぱく質が合成されます。
同じ遺伝子からは同じたんぱく質が合成されますが、外的な刺激や食べ物などの要因によって、遺伝子情報の読み取りに差が生まれることがあります。

生物には、周囲の環境に対応して遺伝子の発現を調整する「遺伝子装飾」という仕組みが備わっています。
この遺伝子装飾の一つに、「メチル化」という機構があります。
遺伝子の一部にメチル基がくっつくと、遺伝子情報が伝わりにくくなり、反対にメチル基が外れる脱メチル化が起こると、遺伝子情報が伝わりやすくなります。

メチル化や脱メチル化が過剰に起きた状態を「異常メチル化」といい、加齢とともに異常メチル化は進行し、生活習慣病やガンの発病、老化の原因になると考えられています。

私たちは、冒頭に紹介したマウスの実験で、遺伝子のメチル化の状態を調べました。
その結果、普通のエサを食べた高齢マウスでは異常メチル化が進行していましたが、ポリアミン濃度の高いエサを食べたマウスは高齢になっても異常メチル化が抑えられ、若いマウスとほとんど変わらない状態だったのです。

私たち人間も、加齢とともに体内のポリアミンは作られにくくなります。
しかし、ポリアミンの多い食べ物を摂取すれば、遺伝子の異常メチル化が抑制されて、生活習慣病の発生を予防できる可能性があるでしょう。

ポリアミンは、穀物の胚芽、大豆や小豆などの豆類、キノコや野菜、魚介類(特に内臓を含んだ小魚、魚卵、貝)、熟成した発酵食品などに多く含まれます。

その中で特にポリアミンを豊富に含み、毎日摂取しやすいのが「納豆」です。
私たちの研究では、納豆を毎日1パック(60g)ずつ食べ続けると、約8週間で血中のポリアミン濃度が高まることが確認されています。

納豆に限らず、ポリアミンの多い食品は、日本食によく使われています。
また、健康長寿で知られる地中海沿岸の人々が食べる地中海食にもポリアミンが豊富に含まれています。

日々の食事を納豆などの豆類や魚を中心とした伝統的な日本食に敢行することで、健康長寿につながっていくと思います。

早田邦康
自治医科大学医学部卒業後、出身地の佐賀県で9年間の離島へき地医療に従事。平成元年より自治医科大学さいたま医療センターに勤務。現在ポリアミンの寿命延長効果に関する研究を行っている。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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