海外の医師や看護師から問い合わせがくる
私は、世界中の近代医療に、伝統医学を組み合わせた“統合療法”を、医師や医療関係者に指導する「国際医療スペシャリスト」として活動しています。
私が仁神術の「指つかみ」について知ったのは、10年ほど前のこと。
自然療法を勉強するためにフランスに留学していたときでした。
日本で生まれた仁神術は、戦後にアメリカで発展して、イギリス、ドイツ、フランスなど、ヨーロッパ各国にも広まっているのです。
指つかみは、指をつかむだけという、とてもシンプルな方法ですが、不安、緊張、怒り、悲しみといったマイナス感情を鎮め、全身のエネルギーの流れを整えて、体の不調も解消してくれます。
指つかみはメンタルコントロール法として、また、患者さんの心身を癒す方法として、とても効果的なので、海外の医療関係者からも注目されているのです。
実際、フランス人の医師から、「学会発表で緊張してしまう。あがり症を克服するために、指つかみのやり方を教えてほしい」と頼まれたり、看護師や介護士から「患者さんのケアに使いたい」と問い合わせがあったりして、彼らに指つかみを指導したこともあります。
叫ぶほどの痛みが治まり笑顔が戻った
私も、不調に悩むかたに指つかみを取り入れたマッサージを行って、喜ばれた経験が多くあります。
特に印象的だったのは、イギリスのガン専門病院に行ったときのことです。
末期ガンの患者さんは、耐えがたい痛みに襲われます。
私がマッサージを行った患者さんも、痛みのあまり絶えず叫び声を上げて、夜も眠れない状態でした。
ところが、指つかみを行い、鎮痛作用のある精油をつけて手指をマッサージすると、氷のように冷たかった手がだんだん温かくなり、叫ぶのをやめて「気持ちいい」と言ってくれたのです。
マッサージが終わる頃には顔に血色が戻り、笑顔まで見せてくれました。
翌日、看護師さんはうれしそうに「指つかみを受けたあとは落ち着いて、夜もぐっすり眠られていましたよ」と報告してくれました。

東日本大震災でも指つかみが活躍!
日本で指つかみが注目されるようになった1つのきっかけは、2011年に起きた東日本大震災だと思います。
震災後、私も所属する「国際アロマセラピスト連盟」の認定セラピストたちが、ボランティアとして被災地入りし、被災者の方々にアロマトリートメントを行ったのです。
避難所ではスペースや物資が限られているため、全身のトリートメントを行うのは難しいケースもありました。
そこで、指つかみなどの手軽にできるハンドマッサージを行い、被災者の方々から、たいへん感謝されたと聞いています。
不安や悲しみなど多大なストレスにさらされている、被災者の心のケアに、指つかみはまさに最適だったのだと思います。
手が持つ癒しの力は偉大です。
治療を意味する「手当」という言葉は、もともと、痛いところに手を当てる動作が由来なのです。
最近の研究では、手や指をマッサージすると「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンの分泌が増えたり、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が減ったりすることがわかっています。
また、脳の血流がアップするため、認知症の予防にもよいと言われています。
冷たい指に不調が現れる
私が指つかみを行うときは、まず、すべての指をまんべんなく触ってみて、どこが冷たいか、不快感があるか、痛いところはないかをチェックします。
「長期的なストレスや体調不良を抱えている人は、親指が冷たい」
「怒りやイライラ感など、交感神経(※体を活発にさせるときに働く神経。動脈の太さを調整する作用もある)が優位になっている人は、中指が冷たい」
「寂しさや孤独感の強い人は、小指が冷たい」
といった傾向があるのです。
冷えや不快感のある指を、そっと優しくつかみ続けていると、だんだん気持ちが落ち着いていきます。
指つかみは、自分で行うのはもちろん、入院中の人や高齢者、多動で落ち着きがない子ども、うつ傾向の人や不安感の強い人などにしてあげると、とても効果的です。
赤ちゃんの夜泣きも、指つかみを行うとピタリと治まります。
また、家族やパートナーに指つかみをしてあげると、心の絆が深まり、関係性を強化してくれるので、お勧めです。
最後に、人に指つかみを行うときは、最初に両手のひらをすり合わせて、手を温めてから行うと効果が高まってよいでしょう。

解説者のプロフィール

森田知恵
「国際医療スペシャリスト」として、統合療法を医師や医療従事者に指導するほか、アメリカ・フランスの医師や研究者と、商品の共同開発や、医療セミナーを行っている。テ㆑ビや雑誌で専門家として医療や美容のコメンテーターを勤める。医療の最先端であるニューヨークやフランス、ドイツで日々発表される学会報告や最新情報などの医学的見地に基づいた健康法は、専門分野からも高い評価を受けている。