鍼灸の専門学校でも教えられている
私は、仁神術を創始した村井次郎師の弟子である加藤春樹先生(加藤貞樹先生の父)に師事し、仁神術を学びました。
最初の2年間は、東洋医学の基礎を勉強し直すところから始まり、仁神術のすべてを習得するまでに10年以上かかっています。
仁神術は、患者さんの体に手を当てて、東洋医学でいうところの“気”の流れを整え、心身の不調や、体の痛みを治していきます。
鍼やお灸といった道具を使わずに行うことができ、治療効果も高いため、私が校長を務める東洋鍼灸専門学が校でも、課外授業で学生たちに教えています。
「おなかにたまったガスを出す方法」や「熱を下げる方法」など、応急処置として使える手技も多いので、学生からも好評です。
もちろん私も、患者さんへの施術や、自分の健康管理に、仁神術を活用しています。
とりわけ役立ったのは、心臓の痛みを鎮める「指つかみ」です。
これのおかげで、5人の命を救うことができました。
心臓発作の再発が起こらなかった
1人めは、私が往診治療に通っていた家の、高齢の女性です。
ある日、その家で治療していると、隣の部屋から騒ぎ声が聞こえました。
部屋をのぞくと、彼女が胸を押さえ、脂汗をかいて苦しんでいるのです。
即座に私は、加藤先生から教わった指つかみを彼女に行いました。
すると、彼女は大きく息を吐き出し、すぐに脂汗が引いたのです。
落ち着いてからタクシーを呼び、病院に行かせました。
医師から「心筋梗塞(心臓の血管が詰まり、心筋に血液が届かなくなる病気)です。
これでよく助かりましたね」と言われたそうです。
また、彼女は重度の糖尿病で、心臓や腎臓を悪くして入退院を繰り返していました。
「あと10年、生かしてほしい」という願いに応えるため、ご本人や家族に、指つかみのやり方を教え、心臓が苦しくなったときに、実行してもらいました。
結果、それ以来一度も心臓発作を起こすことなく、12年も生き長らえることができたのです。
心臓の苦しさが治まった
2人めは、片道1時間近くかけて電車で通院されていた、男性の患者さんです。
いつも「治療院に通うとき、心臓が苦しい」とおっしゃっていたので、1人めの患者さんと同様、指つかみのやり方を教えました。
この患者さんは毎日、朝昼晩と指つかみを続けるうちに、心臓の苦しさや痛みがすっかり治まりました。
3人めは、狭心症(血流異常で心筋が酸素不足になる症状)の男性です。
夜中に患者さんのご家族から「お父さんが死んでしまう。すぐに来て!」と電話があったので、すぐに駆けつけ、指つかみで応急処置をしました。
4人めは、「胸が苦しい……」と、真っ青な顔でやって来た患者さん。
このかたも、指つかみで楽にしてから、病院に行かせました。
検査結果は心筋梗塞でした。
「指つかみ」のやり方

血管の詰まりを指つかみで応急処置
そして5人めは、私自身です。
私の自宅から最寄り駅までは、徒歩で10分ほどかかるのですが、学校に通勤するとき、いつも駅に着く頃には心臓が苦しくなっていました。
そこで、駅のベンチに座って指つかみを行い、心臓が楽になるのを待ってから特急電車に乗るのが、いつもの日課でした。
3年前の冬、一度きちんと検査を受けておこうと思い、病院で心臓を診てもらいました。
すると、医師から「狭心症のため冠動脈バイパス手術を受けられた、天皇陛下より悪い状態です。
すぐに手術をしないと危ない」と言われるほど、冠動脈が詰まって血流が悪くなっていたのです。
とはいえ、卒業・入学を控えた時期だったので、学校を長期間休むことはできません。
そこで、2泊3日のステント手術を選びました。
手術後は定期的に検査を受けていますが、心臓に問題はありません。
もし指つかみを知らなかったら、遅かれ早かれ心筋梗塞を起こして、命を落としていたと思います。
私や患者さんが行った指つかみのやり方は、上を参考にしてください。
上で紹介した指つかみより、簡単なやり方として、左手の小指と薬指をギュッと強く握る方法もあります。
激しい動悸や胸の痛みに効果的です。
覚えておくといいでしょう。
解説者のプロフィール

竹内廣尚(たけうち・ひろなお)
東洋鍼灸専門学校校長。
柔道整復師、鍼灸師、あん摩・マッサージ師、柔道整復師専門専科教員、鍼灸マッサージ教員。1947年群馬県生まれ。70年に東洋鍼灸専門学校本科を卒業後、75年に竹内鍼灸治療院を開院。81年には同治療院に併設するかたちで竹内整骨院を開設、院長を務める。メディカルトレーナー専門学校教師、東洋鍼灸専門学校助手、講師を経て、2010年より現職。治療や専門学校運営に携わるかたわら、学会発表や講演活動にも精力的に取り組んでいる。
●東洋鍼灸専門学校
https://www.toyoshinkyu.ac.jp/