冷やすほうが血行はよくなる
「おでこを冷やす健康法」と聞いて、みなさんはどう思いますか?
おそらくほとんどの人は「それは、熱を下げる方法では?」と考えるでしょう。
しかし、私が氷嚢でおでこを冷やす「おでこ冷やし」を勧めるのは、そのためではありません。
おでこを冷やすと、みなさんが思ってもいないような健康効果が得られるのです。
実際、おでこを冷やしても熱は下がりません。
むしろ、体が温まってきます。
冷たいシャワーを浴びると、そのときは冷たくても、後でカーッと体が熱くなった、という経験はないでしょうか。
おでこ冷やしもそれと同じで、冷やした後は、体がポカポカしてきます。
これは血流がよくなるからです。
人間の体には、体を常に一定の状態に保とうとする働きがあります。
ですから、体が急激に冷えると、そこを温めようとして、血流がよくなります。
そのため、冷やすとかえって体が温まるのです。
「冷やすと逆に体が温まる」ことを理解していただいた上で、なぜおでこ冷やしが健康によいのか、お話ししましょう。
おでこ冷やしが健康にいい5つの理由
①脳の血流がよくなる
おでこを冷やすと、脳をダイレクトに冷やすことができます。
正確には直接冷やしているわけではありませんが、おでこのすぐ裏には脳(前頭前野)があります。
しかも、おでこは脂肪や筋肉が少なく、髪の毛もないので、脳に直接冷たさが伝わります。
脳を冷やせば、そこに血液を集めようとして血流がよくなり、脳の機能が活発になります。
特に前頭前野は、思考やコミュニケーション、集中力、感情抑制などをつかさどっており、人間が人間らしく生きる上で、非常に重要な部位です。
前頭前野の奥には、「天然の痛み止め」と呼ばれるオピオイドという鎮痛物質や、ドーパミンやセロトニンといった「幸福ホルモン」を分泌するところがあります。
脳の血流がよくなればそれらのホルモンも増えて、痛みの軽減や情緒の安定に役立つと考えられます。
②脳脊髄液の流れがよくなる
脳の血流がよくなると、頭を覆っている頭皮や筋肉がほぐれて、頭蓋骨の動きがよくなります。
それによって、頭蓋骨と背骨の中を循環している、脳脊髄液の流れがよくなります。
頭蓋骨は小さな骨が組み合わさってできています。
骨と骨は「縫合」といって、縫い合わさるように接合しており、その間に小さなすき間が開いています。
それが呼吸や咀嚼に合わせてわずかに動くことにより、脳脊髄液が流れていきます。
しかし、頭皮や頭の筋肉が硬くなると、頭蓋骨が固まって縫合のすき間がなくなり、脳脊髄液が流れにくくなります。
脳脊髄液は、脳や脊髄の神経に栄養を送る大事な液体で、この流れが滞ると、中枢神経だけでなく自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)の働きも悪くなります。その結果、さまざまな不調が出てきます。
③全身の筋肉がゆるむ
筋肉は、筋膜という薄い膜に覆われており、連動して動いています。
頭や顔の筋肉がゆるめば、全身の筋膜や筋肉もゆるんで、体を動かしやすくなり、全身の血流がよくなります。
実際に、おでこ冷やしをした前後で屈伸運動をすると、冷やした後のほうが、明らかに体が柔軟になります。
④肝・腎のツボが活性化する
おでこには大事なツボが集中しており、特に肝経と腎経のツボがたくさんあります。
肝経は目、腎経は耳の機能に関係するツボなので、それらのツボがおでこ冷やしで刺激されると、目や耳の症状が改善します。
また、どちらのツボも下半身の症状によく効くので、腰痛、下肢のしびれ、むくみ、痛みなどを緩和します。
⑤肌の老化を予防する
顔と頭は1枚の皮でつながっています。
ですから、頭の筋肉がゆるめば顔の筋肉もゆるみ、顔の血流がよくなります。
すると、皮膚細胞に酸素や栄養が行き渡り、肌が健康になります。
また、肌の老化は保湿に左右され、水分が減るほど肌は老化します。
しかし、血流がよくなって細胞が水分で満たされれば、肌にハリが出て、シワやたるみなどを抑えられます。
このように、おでこ冷やしにはさまざまな効果があります。
なかでもよく聞かれるのは「ぐっすり眠れるようになった」「腰痛や肩こりが改善した」「冷え症が改善した」というものです。
ほかにも「うつ症状が改善した」「薄毛だったのが、髪の毛が増えてきた」といった喜びの声もいただいています。
試しに、1回やってみてください。終わった後の頭のスッキリ感にビックリするはずです。

脳の血流がよくなる!体が温まる!おでこ冷やしのやり方

POINT
●冷やす時間は1分まで。タイマーなどを使うと便利。
冷やし過ぎは凍傷などのおそれがあるため、厳禁。
●朝晩1日2回行うと効果的。
●入浴前や脳の疾患がある人は行わない。
●保冷枕や保冷剤でも代用可。おでこに密着するものを選ぶこと。
●熱冷まし用のシートは不可。
おでこ冷やしQ&A
Q:おでこ冷やしをやってはいけない人はいますか。
A:脳腫瘍、脳梗塞など脳に病気のある人や、血栓のできやすい人(エコノミークラス症候群や塞栓症など)はやらないでください。
また、おでこ冷やしをした後でお風呂に入ったり、お酒を飲んだりするのは控えてください。
血流が急激によくなり過ぎて、危険な場合があります。
Q:氷嚢が落ちてしまうのですが、手で持ってもいいですか。
A:基本的には、横になって手のひらを上に向け、リラックスした姿勢でするのが、いちばん効果があります。
枕を変えて頭を水平に保ったり、ソフトタイプの冷却枕のようにおでこに密着するものを使ったりなど、落ちない工夫をしてください。
しかし、片手で氷嚢を持っても、やらないよりは、やったほうがずっといいです。
Q:気持ちがいいので何回もやりたいのですが、問題はありませんか。
A:やればやるほど効果があるわけではないので、1日の回数は、2回までにしてください。
血流がよくなり過ぎると、立ち上がったときにふらついたりして、倒れる危険性があります。
また、1分以上続けて冷やすと、凍傷を起こすおそれもあるので、長くても1分までにしてください。
Q:おでこを冷やす氷嚢(ビニール袋)に塩を入れるのはなぜですか。
A:氷でも水の温度は下がりますが、塩を入れるとさらに下がり、氷点下(マイナス1~2℃)になります。
それによって効率的におでこを冷やすことができ、冷刺激も強くなります。
塩はどんな塩でも構いません。
Q:冷却枕(商品名:アイスノンなど)や、熱冷まし用のシートを使ってもいいですか。
A:冷却枕ならいいですが、熱冷まし用シートはおでこの表面しか冷やさないので、あまり効果はありません。
冷却枕を使う場合、おでこに密着するソフトタイプがお勧めです。
大判のもので、なるべくおでこの全面を覆ってください。この場合も、冷やす時間は1分までです。
Q:冷た過ぎて1分も続けられません。どうしたらいいでしょうか。
A:できる範囲でやってください。
また、ティッシュペーパーをおでこに2~3枚のせ、その上から氷嚢を置くと、冷たさが和らぎます。
Q:おでこにニキビやアトピーの症状がありますが、やっても大丈夫ですか。
A:基本的には大丈夫です。
ただ、まれにチクチクしたり痛くなったりすることがありますから、そういうときは様子を見て、症状が落ち着いてからするといいでしょう。
また、上の回答にもあるように、ティッシュペーパーを氷嚢の下にはさんで行うと、刺激が間接的になります。
解説者のプロフィール

小林敬和(こばやし・のりかず)
タンタン整骨院院長。
柔道整復師、頸椎セラピスト。
患者が自分自身の手で不調を根本から改善していくためのアドバイスには定評がある。
著書に『「おでこを冷やす」だけで心と体が元気になる!』(三笠書房)などがある。
●タンタン整骨院
東京都豊島区東池袋2-31-14リヴェール102 号
TEL 03-3590-0556
http://www.tantan-seikotsuin.net/