解説者のプロフィール
前兆がわかるチェックリスト

動脈硬化は、中高年以上だけに起こるものではありません。実際には、若くても動脈硬化が見られる人が多くいます。
私は体の問題点を見つけ、病気になる前に対策を立てる予防医療を提唱・普及しています。
あなたの血管は大丈夫でしょうか? まずはチェックテストで確かめてみてください。
いかがでしたか? ここで挙げた項目は、いずれも細胞に酸素と栄養素が行き届いていないことによって起こる症状です。
細胞に酸素と栄養素を届けるのは血液です。つまり、これらの症状が思い当たる人は、血流障害が起こっている可能性が考えられるのです。
体を畑(たんぼ)と用水路にたとえてみましょう。畑が細胞だとしたら、用水路はそこに水(血液)を送る血管です。
用水路が詰まると、畑(たんぼ)には水が供給されず干からびてしまいます。また、詰まりがなくても水の量が少ないと、やはり畑は干からびます。
体に置き換えると、血液が十分に行き渡らないため、酸素と栄養素が不足して、細胞が干からびてしまうということです。
その結果、肌が乾燥したり、冷えやむくみ、目の下のクマ、肩こりが生じたり、脳への血流が不足すると物忘れ、心臓への血流が不足すると少し階段を上っただけで動悸や息切れがするなど、さまざまな機能低下が起こってくるのです。
それだけで済めばよいのですが、血流障害を放っておくと、いずれは脳梗塞、脳出血などの脳卒中や、心筋梗塞などにもつながりかねません。
硬くなった血管を伸ばして柔軟にする
血流障害を起こさないためには、動脈硬化を防ぎ、血管を若く保つことが重要です。
細胞に酸素と栄養素を届ける大切な用水路(血管)の長さは、なんと10万km、地球2周半です。
動脈硬化とは、読んで字のごとく、この血管が硬くなっている状態です。ですから、血管を柔らかくする必要があるのです。
血管の周りは弾性線維(血管壁に含まれる結合組織で弾力性に富む)が取り巻いています。これをタテに伸ばすことで、血管を柔らかくすることができます。風船を膨らませるとき、ゴムを引っ張って柔らかくしますよね? あのイメージです。
血管は筋肉と一緒に走っているので、筋肉を伸ばすことで、血管も一緒に伸ばすことができます。
そこで、私がお勧めしているのが、「血管ストレッチ」です。
血管ストレッチは、両足を開いて立ち、両手をパーに開いてバンザイの要領で手を上げ、体を伸ばす体操です。
手を伸ばすときに息を吸い、腕を下ろすときに息を吐くようにすると、なおよいでしょう。 もう少しできる人は、バンザイをして手首を反対の手でつかみ、体をゆっくり左右交互に伸ばします。
硬くなった血管は断裂しやすいので、体を横に倒すときはラベルを慎重にはがすような気持ちで、ゆっくり行いましょう。
たったこれだけのストレッチで、全身の7割ぐらいの筋肉が伸びます。と同時に、体の7割の血管(7万km)も伸びて柔らかくなります。
例えば、自転車は乗らなかったら、タイヤが劣化し硬くなってヒビ割れてしまいます。逆に、走り過ぎても傷んでしまいます。長持ちさせる秘訣は、毎日少しずつ動かすことです。
血管も同様で、毎日適度に動かして柔らかくしておくことが、長持ちさせるためにはとても大切なのです。
毎日少しずつというのは、無理なく続けられるという意味でも重要なポイントです。血管ストレッチは、がんばらなくても短時間で、どこででもできることが魅力です。
血管ストレッチのやり方

血液がサラサラになり血管が詰まりにくくなる
血管ストレッチを行うと、血管の中を流れる血液の量(血流量)が多くなります。すると、血管壁の内側にある内皮細胞からは、一酸化窒素(NO)とプロスタサイクリンという物質が分泌されます。これらは血液をサラサラにして、血管を詰まりにくくすることに役立ちます。
心拍数を上げると血流量はさらにアップするため、血管ストレッチとともに軽い運動を併用することも有効です。
とはいえ、ハードな運動をする必要はありません。少し息が上がる程度でじゅうぶんです。
私は、足を前後に開いて軽くひざを曲げ、上下にリズムをとりながら腕を振る「腕振り体操」をお勧めしています。
毎日少しの心掛けで、血管の老化は遅らせることができます。病気を未然に防ぎましょう。
金城 実
日本予防医療協会代表理事。医学博士、予防医療コンサルタント。岡山大学医学部卒業。医学的な根拠に基づくメディカルダイエットプログラムを展開。著書『粘膜パワーで若返る超健康になる』(プレジデント社刊)、『1日1分、腕ふり健康法』(KADOKAWA刊)が好評発売中。