
麻痺の患者さんは頭痛を訴える人が多い
私はこれまで、数多くの患者さんを見てきましたが、いわゆる「頭痛持ち」の人には、共通点があります。
それは、ふくらはぎがこり固まっていることです。そして、興味深いことに、このふくらはぎのコリをほぐすことが、頭痛の改善につながるのです。
頭痛をふくらはぎから治すとは意外なようですが、この治療法は、私自身の経験から生まれました。実は私も、今から10年ほど前、20代の初めのころに、ひどい片頭痛に苦しめられていたのです。
ほぼ毎月、吐き気を伴う頭痛があり、ひどいときには1週間連続で、吐きながら寝込む始末でした。もちろん、心配になり、病院を受診しました。MRI(核磁気共鳴画像)やCT(コンピュータ断層撮影)の検査を受けましたが、脳に異常は見つかりません。
このときに思ったのは、西洋医学は、原因がはっきりしない症状に対しては、お手上げだということです。例えば、めまいの症状があり、その原因が高血圧だとわかれば、血圧を下げる薬が処方されます。それを飲むことで、めまいは治ります。
しかし、私のように、症状の原因がはっきりしない場合、それ以上、手の施しようがないのです。けっきょく、病院では痛み止めを処方されただけで、根本的な頭痛治療は望めませんでした。
では、自分の頭痛は何に原因があるのか。当時、すでに理学療法士として病院に勤務していた私は、脳梗塞などによりマヒが生じた患者さんたちのリハビリを手伝いながら考えました。
そのとき、マヒの患者さんには、頭痛を訴える人が多いことに気がついたのです。
ふくらはぎに痛みがあれば入念にほぐそう!
マヒの患者さんは、体の一部が機能しないため、左右対称の姿勢を取ることができません。どうしても、体が傾いてしまうのです。
それでも脳は、物をまっすぐに見るために、頭部を地面と垂直に保とうとします。当然、無理な姿勢になり、体によけいな負荷がかかります。これが長期にわたると、負荷がかかっている部分が緊張して、血流や神経の流れが滞ります。
こうした一連の過程が、頭痛を招いているのではないかと考えたのです。マヒの患者さんに限らず、体の傾きを矯正し、姿勢の左右バランスを整えれば、頭痛は治るはずです。
どの部位に負荷がかかるかは人それぞれですが、自分の体で探ってみたところ、ふくらはぎが異常にこっていることがわかりました。そして、重点的にほぐしたところ、驚いたことに、毎月発症していた頭痛が、全く起こらなくなったのです。
私は試しに、頭痛持ちの患者さんのふくらはぎを見せてもらいました。やはり、筋肉がカチカチにこっています。ここをほぐしてもらったところ、私同様に頭痛がよくなる人が続出しました。こうしたことから、頭痛の改善に、ふくらはぎを利用するようになったのです。
頭痛がある状態でいらした患者さんは、「痛みが引いて助かった」と、喜んでくださいます。私は、「ご自分でほぐしても、似たような効果が得られますよ」と、セルフケアをお教えしています。それが「ふくらはぎこすり」です。やり方は、図をご覧ください。
ふくらはぎこすりのやり方

セルフケアとはいえ、きちんと実践すれば、よく効きます。施術を10割として、6~7割程度の効果があると思います。
基本的には、両足のふくらはぎを同じようにほぐしますが、利き足が右の人は、左足のふくらはぎのほうが痛みやこわばりを感じるかもしれません。利き足が左の人は、その逆です。
というのも、利き足が自由に動く際、もう片方の足が体を支えているため、そちら側に過剰な負荷がかかっている場合が多いからです。痛みやこわばりがあるところは、入念にほぐすといいでしょう。
印象的な患者さんの例を、ご紹介しましょう。70代後半で、会社を経営しているアメリカ人の男性です。仕事柄、飛行機や新幹線の移動が多く、気圧の変化によって起こる頭痛に悩まされていました。
施術と並行し、ふくらはぎこすりをお教えしたところ、熱心に実践。3回ほどの来院で、すっかり頭痛が解消しました。
ふくらはぎこすりは、このように、さまざまな頭痛に効果があります。ぜひ試しに、実践してみてください。
解説者のプロフィール

中村光太郎
JITAN BODY代表。操体師、理学療法士、介護福祉士。老人保健施設や病院勤務を経て2014年に整体院を開業。延べ3万人以上の施術経験を持つ。短時間でより効果が上がる施術を目指しセラピストスキルアップ実践会を立ち上げ、代表に就任。後進の育成に力を入れている。