
腸と脳をつなぐ神経網を活性化
現代の日本では、便秘に悩む人が増えています。便秘になると、肛門付近にかたい便が滞り、肛門が切れたり(切れ痔)、血流が悪くなって内痔核や外痔核(イボ痔)になったり、毛細血管が破れて細菌が入り、痔瘻になったりします。
また、便秘になると、腸内の悪玉菌が増殖し、腸内環境が悪化します。腸内が劣悪な環境になると、いくら体にいい物を食べても吸収されにくく、薬を飲んでも効果を得にくくなります。したがって、健康を維持・増進するためには、腸の健康がなんといっても基本なのです。
皆さんのなかには、食事や運動に気を配ってもお通じがよくならない、という人も多いのではないでしょうか。これは、腸から脳への指令がうまく伝わっていないことが考えられます。
腸は「第二の脳」と呼ばれるように、独自の神経ネットワークを持っており、脳からの指令がなくても独立して活動することができます。例えば、体内に侵入した外敵やストレスに対して、脳が考えるよりも先に反応するのは、まさに第二の脳としての働きです。
腸は、排便や排尿の信号を脳に送っています。それに対して、その信号をキャッチして、「トイレに行く」という行動を起こすのが、脳の役目です。
ところが、腸の反応を無視し、便意を我慢してトイレに行かないと、腸からの信号が脳に伝わらなくなり、慢性の便秘になります。特に女性の場合、便意を抑えることがきっかけで便秘になる人が多いようです。
そうした便秘を改善するには、腸と脳の神経ネットワークを活性化することが大切です。そこでお勧めしたいのが、「足の裏もみ」です。
「足の裏もみ」のやり方

フットマッサージは、長い伝統を誇る治療法の一つで、足の反射区やツボ、経絡(生命エネルギーである気の通り道)などを刺激して、体調を整え、自然治癒力を高める療法です。特に、足の裏には、全身のあらゆる器官とつながる反射区やツボが密集しています。
足の裏を刺激することで、それぞれの反射区やツボに対応する器官の機能が調節され、病気を予防したり、症状を改善したりすることができます。
それでは、腸内環境を整え、便秘を改善する足の裏もみのやり方をご紹介しましょう。
床かイスに座り、もむ側の足を上にして、足の裏を上に向けます。
手の親指で、母趾球から土踏まずにかけて、少しずつ移動しながら押しもみしていきます。親指が土踏まずの下方(かかとの近く)に達したら、両手の親指を重ねて、今度は下から上へ土踏まずをまんべんなく押していきます。反対側の足も同様に刺激します。
1回につき1往復行えばけっこうです。1日に何回行ってもかまいません。朝起きたときと、お風呂上がり、夜寝るときの1日3回行えば十分です。
足の親指の根もとにある膨らみ(母趾球)から土踏まずにかけての区域に、消化器の反射区が集まっています。詳しくは上の図を見てください。反射区を厳密に探り当てて刺激する必要はありません。だいたいの場所を押しもみしてみて、かたかったり痛かったりするところを、じっくり刺激してください。
足の裏の土踏まず近辺を押しもみすると、消化器への間接的な刺激となり、便秘や下痢などの症状を改善する効果があります。
この足の裏もみを毎日継続することで、小腸や大腸の働きが活性化し、脳との連携もスムーズになって、排便しやすくなります。腸内環境も改善し、体調もよくなるでしょう。肌もキレイになります。
なかには、足の裏もみをしている最中に便意を感じる人もいるかもしれません。そのときは我慢せず、すぐにトイレに行ってください。
足の裏もみと並行して、入浴中に肛門近辺を押しもみするセルフケアもお勧めです。肛門周辺の血行がよくなって柔軟性が増すため、便秘と痔の改善につながります。
解説者のプロフィール

劉勇(りゅう・ゆう)
中国で外科麻酔医として活躍後、拠点を日本に移す。1985年、東京に鍼灸治療院を開設。西洋医学と東洋医学双方の観点から、理論と臨床技術を適用した鍼灸治療が評判となる。政財界、スポーツ界からも信頼が厚く、北野武氏の顔面神経マヒを回復させたことでも有名。