解説者のプロフィール

折田 充
日本足部反射区健康法協会会長。鍼灸師。
1988年台北にて台湾式足もみ健康法(若石健康法)を習得。
その後、折田式足もみ健康法を開発。
無痛で行う足の反射区治療で効果を上げている。
失われた言葉がよみがえった
東洋医学では、足に、全身の内臓や器官とつながっている「反射区」というものがあるといわれています。この反射区を刺激することで、滞っていた血液やリンパの流れをよくし、病気や不調を改善・軽減していこうというのが、足もみ健康法です。
この足もみに、全身の血流を改善する足首まわしを加えると、最強の血流改善法になることをご存じでしょうか。
一般に、回復が難しいといわれる脳梗塞などの場合も、例外ではありません。足もみと足首まわしを行うことで回復を助けたり、症状が進まないようにすることは、じゅうぶん可能だと思います。
例えば、次のようなケースがありました。60代のAさん(男性)は突然の脳梗塞で、入院されました。私はご家族からの要望で、週に一度、入院先の病室で出張治療に通うことになりました。
Aさんは前頭葉(大脳の前方の部分で、知的活動や会話・運動・本能などを司る部分)に脳梗塞を起こしていました。初めてお会いしたときは、集中治療室から出たばかりで、顔は無表情。まばたきすらできず、言葉もありません。当然、自分で食事を取るなど遠い夢といった状態でした。
ところが、足もみと足首まわしを始めて15分ほどたつと、Aさんはいきなりまばたきを始めたのです。これには、付き添いの家族も驚愕しました。
さらに、3〜4回めの治療をしたころには、他人からはあまり聞き取れませんが、なにか言葉をおっしゃるようにもなりました。3ヵ月ほどでかなり回復が見られ、流動食から自分で固形食をかめるまでに回復しました。リハビリにも本格的に取り組むようになったのです。
頭や顔の臓器の反射区は足の指に分布しており、前頭葉の反射区は親指の指先にあります。Aさんの場合、親指のつま先、爪のすぐ下のところに、まるでパチンコ玉が埋まっているかと思うほどカチカチになったしこりがありました。
初め、その部分を刺激してもAさんは反応を見せませんでした。しかし回を重ねるごとに、顔を真っ赤にして痛みをこらえるようになりました。初めは感覚がマヒしていて、痛みすら感知できなかったのでしょう。
こうした反射区への刺激を補強し、体全体の血液循環を改善するのが、足首まわしです。
足首まわしのやり方

足首が柔軟になれば血流も改善する
反射区は症状ごとに対応する場所が違いますが、患者さんの足を見ていると、症状に限らず足首が硬くなっている人が大半です。Aさんの足首もガチガチで、はじめはグルリと回すことができないほどでした。
反射区を刺激する以前の問題として、足首の硬さが、さまざまな不調の元になっていると言っても過言ではありません。
体のなかでも、足首や手首などのくびれている部分は、元来血流が滞りやすいところです。特に足首は、足背動脈や後頸骨動脈など重要な血管が通っているにもかかわらず、全体重を支えて動かなければいけないため、硬くなりやすいのです。
とりわけ、アキレス腱の内側、外くるぶしと内くるぶしの周辺が硬くなりやすく、この部分にコリコリとしたしこりができている人を多く見ます。するとしこりがくさびとなり、ますます足首の柔軟性が失われます。
足首まわしには、緊張して硬くなっている足首の筋肉をほぐす効果があります。筋肉が柔軟になると、足先と心臓をつなぐ重要な血管も柔軟になり、全身の血流が改善されます。
また、心臓から遠いところの血液の流れをよくすると、頭や腕など、心臓に近い部分の血流がもっとよくなることも、経験的に知られています。
つまり、足首が柔軟になれば血流が改善され、血流障害に伴うさまざまな症状も緩和されるわけです。実際、足首まわしを行うと、冷たかった手の指先が一瞬で温かくなることもよくあります。
足首まわしを実行する前に、まず準備運動としてアキレス腱を伸ばしてください。アキレス腱が硬いままだと、足首もじゅうぶんに回せないからです。
足首まわしの基本的なやり方は、次のとおりです。
①イスに腰かけて、左足首を右足のひざの上にのせ、左手でくるぶしと内くるぶしを強めにつかむ
②右手の人さし指から小指までの4本の指を、足の裏側から甲に向けて、それぞれ足の5本の指の間に入れ、つけ根の部分を押さえるように持つ
③右手を動かし、気持ちいい強さでゆっくりと内まわしを10回、外まわしを10回行う。このとき、足がグラグラ動かないよう、左手は
足首をしっかり支える
④左右の足と手を逆にして、同様に①〜③を行う