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動脈硬化予防には血管のアンチエイジングを!血管年齢を下げる「腹式呼吸」のやり方

動脈硬化予防には血管のアンチエイジングを!血管年齢を下げる「腹式呼吸」のやり方

脳梗塞や心筋梗塞の予防には、アディポネクチンというホルモンの分泌が重要です。アディポネクチンには、傷ついた血管を修復し、血管のプラークを抑制する働きがあることがわかっています。さらに、アディポネクチンには、インスリンの働きをよくして、糖尿病を防ぐ働きもあります。【解説】杉岡充爾(すぎおかクリニック院長)

解説者のプロフィール

杉岡充爾(すぎおか・じゅうじ)
●すぎおかクリニック
千葉県船橋市夏見台3丁目9
047-406-7272
https://sugioka-clinic.jp/

すぎおかクリニック院長。1965年、千葉県生まれ。千葉大学医学部卒業。97年より2014年3月まで船橋市立医療センター心血管センター循環器内科副部長として勤務。第一線で脳梗塞や脳出血、心筋梗塞など数多くの血管障害の患者の治療に当たる。14年にすぎおかクリニックを開業。

呼吸で筋トレと同様の効果が得られる

脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な病気を招く動脈硬化は、食事や運動をはじめとした生活習慣の改善で防ぐことができます。血管の老化を完全に止めることは不可能ですが、老化の進行を遅らせることは可能です。つまり、血管のアンチエイジングです。

方法はいろいろありますが、年齢に関係なく、誰でも簡単にできて継続しやすいという点から、私が患者さんに勧めているのが「腹式呼吸」です。

腹式呼吸とは、息を吐くときにおなかをへこませ、吸うときにおなかを膨らませる呼吸法のことです。

腹式呼吸は通常の呼吸と異なり、横隔膜を大きく動かします。おなかから呼吸をすることでインナーマッスル(体の深部の筋肉)が鍛えられて、筋トレと同様の効果を得ることができるのです。

私が患者さんに勧めている腹式呼吸は、内臓脂肪を燃焼させて、血流をよくすることを目的としています。いわば血管の若返りを目指した「血管若返り呼吸」です。

内臓脂肪は、血管にさまざまなダメージを与えます。内臓脂肪が増加すると、血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪が増えます。

これが、血管の内壁を肥大させて内腔を狭くするプラークの原因となります。プラークとは、血管の内膜にできたコブのようなものです。

プラークが壊れると、血液の塊である血栓ができます。血栓が血管内を浮遊し、血管を詰まらせると、脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な疾患につながります。

また、血栓までいかなくとも、プラークができることで、血管は硬くなります。内臓脂肪が多いと、動脈硬化の治療を行って一時的に回復したとしても、またプラークが再発してしまいます。

そして、一過性脳虚血発作といって、短時間で治まる脳梗塞を起こすことがあります。これは、小さな血栓が脳の動脈の血管を詰まらせて、一時的に症状が現れるものです。

一過性とあるように、すぐに血栓がはずれて再び血液が流れるので、現れた症状も消えてしまいます。症状としては、急にろれつが回らなくなったり、手に持っていたはしを突然落としたりといったものが多く見られます。

症状が数分から数十分で治まってしまうため、治療を受けない人が多いのですが、この一過性脳虚血発作を起こした人の15〜20%が、3ヵ月以内に脳梗塞を起こしているという報告もあります。つまり、危険因子は元から断たないとだめだということです。

アディポネクチンの分泌が促されて血管が修復される

そのためには、血管のプラークの原因となる過剰な内臓脂肪を減少させてプラークを取り除き、血流の改善を行う必要があります。

そこで重要になってくるのが、「アディポネクチン」というホルモンの分泌です。

アディポネクチンには、傷ついた血管を修復したり、プラークを抑制する働きがあることがわかっています。さらに、アディポネクチンには、インスリンの働きをよくして、糖尿病を防ぐ働きもあります。

実は、このアディポネクチンを分泌するのは、内臓脂肪の中にある脂肪細胞です。脂肪細胞とは、脂肪の分解や合成を行う細胞のことです。その一つ一つの脂肪細胞が、適正なサイズで正しく活動することで、アディポネクチンが分泌されます。

しかし、内臓脂肪が増え過ぎると、アディポネクチンの分泌は逆に低下してしまいます。アディポネクチンを分泌するために適度な内臓脂肪は必要ですが、過剰な内臓脂肪は不要どころか、あっては困るものなのです。

血管の若返り呼吸では、余分な内臓脂肪を燃焼させ、脂肪細胞を小さく細かくします。その結果、アディポネクチンの分泌が促されて血管が修復されると考えられます。

過剰な内臓脂肪が減少しますから、動脈硬化や高血圧、高脂血症の改善と予防につながり、ひいては脳梗塞や心筋梗塞などを防ぐことができます。

血管の若返り呼吸のやり方

【コツと注意点】
肩の力を抜き、リラックスした状態で行う。
3種類の腹式呼吸を、1日5セットを目標に行う。ただし、日々取り入れることが大事なので、少なくてもOK。
鍛える部分を意識しながら呼吸をする。

呼吸1「おなかの左右を鍛える」

鍛える部位:腹横筋

腕を上げてバンザイをする。おなかを膨らませながら鼻から息を吸う。胃を上げて肋骨を動かすようなイメージで行うとよい。
口から息を吐きながらおなかをへこませる。吸った空気を出しきるために1回セキをする。息を吐き切った状態を3秒キープする。

呼吸2「おなかの上部を鍛える」

鍛える部位:横隔膜、多裂筋

片方の手の指先をおへそに当て、おなかを膨らませながら息を吸う。
口から息を吐きながらおなかをへこませる。吸った空気を出しきるために1回セキをする。息を吐き切った状態を3秒キープする。呼吸をするときにおへそを意識し、息を吐くときはおなかの上部をへこませる。

呼吸3「おなかの下部を鍛える」

鍛える部位:骨盤底筋群

片方の手の指先を下腹に当て、下腹を膨らませながら息を吸う。
片方の手の指先を下腹に当て、「呼吸2」と同じように息を吐く。

高血圧や高血糖の人は細くても内臓脂肪が多い

誤解されやすいのですが、内臓脂肪が多いのは、肥満の人ばかりではありません。

一見細く見えても、高血圧や高血糖の人は内臓脂肪を過剰に蓄えていがちです。また、加齢による血管の老化は誰にでも起こっていますので、自覚症状がない人でも、普段から血管のアンチエイジングを心掛けることが大切です。

3種類の呼吸法をそれぞれ5セット行うのが理想的なのですが、続かなくては意味がありません。回数を減らしても構わないので、毎日の習慣にすることをお勧めします。継続してこそ、血管のアンチエイジング効果が得られるでしょう。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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