解説者のプロフィール

髙橋弘
麻布医院院長。
1977年、東京慈恵医科大学卒業85年、ハーバード大学医学部留学ハーバード大学付属マサチューセッツ総合病院にて、フェロー、講師、助教授を経て、ハーバード大学内科准教授となる東京慈恵医科大学教授、セレンクリニック診療部長、医療法人ヴェリタス・メディカル・パートナーズ理事長などを経て、2009年、麻布医院院長に就任食事と病気の関係に着目してファイトケミカルの研究に情熱を注ぎ、ファイトケミカルスープを考案治療の補助として患者に積極的に勧めて成果を上げているファイトケミカル研究家専門はがんの免疫療法と肝炎の治療。
●麻布医院
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スープにしないと有効成分が溶け出さない
1年を通して出回っているキャベツですが、春キャベツは柔らかくて甘みがあります。
千切りやサラダにしてもおいしいですが、私がお勧めしたい調理法はスープです。
スープにするといっそう甘みが増しておいしくなります。
また、キャベツは100gであっても、スープならあっという間に食べられます。
そしてなによりも、別記事で述べたファイトケミカルによる発がん予防の効果を得るには、スープが最も適しているのです。
ファイトケミカルは野菜の堅い細胞壁の中に閉じ込められていて、生のまま食べても細胞が壊れず、吸収されにくいからです。
しかし、加熱すると細胞は簡単に壊れて、大部分のファイトケミカルが外に溶け出します。
キャベツのビタミンCは過熱しても壊れない
キャベツには、ファイトケミカルのほかにも、ビタミンCや食物繊維が豊富に含まれています。
まず、ビタミンCですが、生のキャベツ100gには41mgのビタミンCが含まれています。
ビタミンCは強力な抗酸化ビタミンで、体内に生じた活性酸素を消去する作用があります。
それによって、発がんを阻止したり免疫力を高めたりするなど、さまざまな効果が得られます。
抗酸化以外にも、ビタミンCにはすばらしい働きがあります。
その一つが、コラーゲンの合成を助けることです。
コラーゲンは肌のハリや弾力を保つのに欠かせない成分ですが、コラーゲンを食べれば、それがそのまま皮膚に届くわけではありません。
体内で消化され、一度分解された後、必要なコラーゲンに再合成されます。
その再合成に必須なのが、ビタミンCです。
ビタミンCがないと、分解されたコラーゲンは再合成されず、無駄に燃焼されてしまいます。
コラーゲンは皮膚だけでなく、骨や血管、筋肉などを構成する大事な要素です。
したがって、これらの部位を丈夫にするためにも、ビタミンCは必要です。
ビタミンCの二つ目の働きは、インターフェロンという抗ウイルス作用をもつたんぱく質をつくることです。
体内にウイルスが侵入すると、それに対応してインターフェロンがつくられます。
インターフェロンはウイルスの攻撃から体を防御したり、免疫機能を活性化したり、またウイルスを攻撃する物質にもなります。
しかし、スープにしたらせっかくのビタミンCが壊れるのでは?と心配する人も多いでしょう。
ご安心ください。
キャベツのビタミンCは、煮ても壊れることはありません。
スープにすると、キャベツの葉に含まれているビタミンCはスープに溶け出します。
そのため、葉のビタミンCは減りますが、残りはスープに移行しています。
ですから、スープを飲んで具も食べれば、キャベツのビタミンCを全部とることができるのです。
ビタミンCは、キャベツの芯の部分に多いので、芯もスープに入れて食べてください。
不溶性の食物繊維と水溶性の食物繊維の両方が含まれている
キャベツには食物繊維も豊富で、不溶性の植物繊維と水溶性の食物繊維の両方が含まれています。
水溶性食物繊維は腸内細菌のエサになって腸内細菌を増やし、腸内環境を整えます。
余分な脂質を排泄したり、糖質の吸収をゆるやかにしたりするので、血糖値の急激な上昇を抑え、コレステロールを低下させる作用があります。
不溶性食物繊維は、便のかさを増やし、腸の蠕動運動を促す働きがあるので、便秘に効果的です。
キャベジンで知られる「ビタミンU」
キャベツで忘れてはならないのが、胃の炎症や潰瘍を改善する働きです。
胃薬の名前でよく知られる「キャベジン」は、キャベツの汁から見つかった成分です。
キャベツを難治性の胃潰瘍患者に飲ませたところ治癒したことから、潰瘍(ulcer)の頭文字をとって、「ビタミンU」とも呼ばれています。
水溶性の食物繊維やビタミンC、ビタミンUも、スープに溶け出しています。
一方で、キャベツの葉にもよい成分が残っていますから、キャベツスープは、スープも具も全部食べてください。
キャベツの有効成分とその働き(ファイトケミカルを除く)

有効成分をすべてとれる春キャベツスープの作り方
