チョコレートやココアを敬遠するのはもったいない!
チョコレートやココアには「甘くて高カロリーの嗜好品」というイメージがついて回ります。
そのため、ダイエットや健康に気を使う人からは敬遠されがちな食品です。
しかし、それはとてももったいないことです。
チョコレートやココアには、健康にいい成分として注目されている「ポリフェノール」が非常に豊富な食品だからです。
自然界には何千種類ものポリフェノールが存在しますが、チョコレートやココアに含まれるポリフェノールは「カカオポリフェノール」といいます。
近年、世界中でカカオポリフェノールについての研究が行われており、老化や病気の原因となる活性酸素を抑える、生活習慣病を防ぐといった報告が多数発表されています。
かくいう私も、20年以上にわたって、カカオポリフェノールの研究を続けています。
昨年は、チョコレートを摂取する前後での健康状態を比較する、大規模な実証実験を行いました。
協力していただいたのは、愛知県蒲郡市在住の45〜69歳の一般の市民347人。
高い血圧が有意に下がった!
4週間にわたって高カカオチョコレート(カカオ成分72%)を毎日25g摂取してもらい、その前後の血圧やコレステロール値などを比較しました。
その結果、健康面にさまざまな好影響が見られたのです。
●血圧が下がった
347人を血圧が正常な人(265人)と高血圧の人(82人)に分け、それぞれの血圧を見てみました。
高血圧の群は、最大血圧の平均が145.6㎜Hgから139.74㎜Hgに改善されていました。
5.86㎜Hgの低下です。
カカオポリフェノールに血管を広げる物質の生産量を高める働きがあることは、以前からわかっていました。
しかし、4週間の短期間でここまではっきり数値化できるほどの影響を与えるとは予想していなかったので、これは驚きの結果でした。
一方、血圧が正常な人のグループでは、最大血圧が平均1.62㎜Hg低下しました。
これは、高い血圧を下げるよう働きかけるものの、血圧が普通の人の場合は血圧が下がり過ぎることはなく、正常の範囲でとどまることを示唆しています。

チョコレートを食べて善玉コレステロールが増えた
さらに注目されるのは、「善玉コレステロール」であるHDLの値が上昇したことです。
ご存じのように、コレステロールには、善玉コレステロールであるHDLと、悪玉コレステロールであるLDLの2種類があります。
悪玉のLDLが増えるとHDLが減少し、血液がドロドロになって血管が詰まりやすくなることが知られています。
また、酸化したLDLは、動脈硬化の原因となります。
つまり、血管の健康を保ち、血液の流れをよくするためには、HDLを増やしてLDLを減らし、さらにLDLの酸化を防ぐことが重要です。
実験では、チョコレートを食べた人のほとんどに善玉コレステロールが増えていました。
またカカオポリフェノールには、強力な酸化抑制効果があります。
これらのことから、チョコレートが血管の健康を保ち、血管と血液の状態を改善するのに役立つことがはっきりわかりました。
純ココアは脂肪分が取り除かれている
ただし、チョコレートには脂肪分や糖分も含まれていますから、カカオポリフェノールが体にいいといっても、極度の食べ過ぎは禁物です。
また、甘ったるいチョコレートが苦手という人もいるのではないでしょうか。
そのような人にぜひお勧めしたいのがココアです。
チョコレートとココア、どちらも原料はカカオ豆です。
カカオ豆に焙煎や粉砕などの処理を施して、カカオマスというペースト状にする過程までは、チョコレートもココアも同じです。
カカオマスから脂肪分のカカオバターを搾り取った後の搾りかすを乾燥し、粉末にしたものがココアパウダーです。
一方、搾り取ったカカオバターには凝固作用があります。
このカカオバターに砂糖や乳製品を加えて固めたのがホワイトチョコレートで、カカオマスを加えて練りあげたのがダークチョコレートです。
搾りかすといっても、ココアにはカカオポリフェノールがそのまま残っています。
しかも、カカオバターが除かれていますから、脂肪はほぼありません。
先の実験のようなカカオポリフェノールの効果が十二分に期待できるうえ、ミルクや砂糖を含まない純ココアなら、糖分の取り過ぎやカロリーをさほど気にしなくていいのです。
ショウガココアは高血圧や高脂血症の人には最適のドリンク
最近では、ココアにショウガを加えたショウガココアが人気のようですが、ショウガも血液の状態をよくすることが知られた食品です。
ショウガとココア、二つの食品の相乗効果が期待できるショウガココアは、高血圧や高脂血症の人には最適のドリンクといえるでしょう。
解説者のプロフィール

大澤俊彦
愛知学院大学教授。
機能性食品の研究、特にカカオポリフェノールをはじめとした抗酸化食品研究の第一人者。食事を要
因とする生活習慣病誘発メカニズムの解明に関する研究を行っている。日本AOU協会理事長、日本食
品安全協会理事、日本酸化ストレス学会理事、名古屋大学名誉教授。著書に『チョコレートの科学』
(朝倉書店。共著)など。