【歯周病と病気の関係】歯周病を放置するとどうなるか? 糖尿病 脳梗塞 認知症のリスク増

【歯周病と病気の関係】歯周病を放置するとどうなるか? 糖尿病 脳梗塞 認知症のリスク増

歯周病は、今や成人の約8割がかかっているとされる「国民病」です。早い人では10代から、歯周病の初期段階である歯肉炎が始まり、40代、50代で患者数が最も多くなります。歯周病も生活習慣病の一つだと私は考えています。【解説】森永宏喜(森永歯科医院院長、米国抗加齢医学会認定医)


森永宏喜
1963年、千葉県生まれ。1988年、東北大学歯学部卒業。東京医科歯科大学第一口腔外科を経て、1992年より現職。薬に頼らず食事と栄養素を用いて歯科から生活習慣病の改善を目指し、歯科医師として日本初の米国抗加齢医学会認定医となる。著書に『全ての病気は「口の中」から!』(さくら舎)がある。

自覚症状が現れるのは症状が進行したとき

歯周病は、今や成人の約8割がかかっているとされる「国民病」です。
早い人では10代から、歯周病の初期段階である歯肉炎が始まり、40代、50代で患者数が最も多くなります。

歯周病は、歯肉(歯ぐき)と歯の根の間にある歯周ポケットから細菌が侵入し、歯を支えている骨を溶かしてしまい、最終的には歯が抜けてしまう病気です(歯の構造は下の図参照)。

とはいえ、初期の段階では、自覚症状がほとんどありません。
「歯がグラつく」「歯ぐきが痛い」といった自覚症状が現れたときには、病気がかなり進行していて、治療が非常に難しくなっていることが多いのです。

歯周病の正体は、口の中にいる細菌(歯垢)による感染症です。
歯垢は単なる食べカスではなく、何百種類もの菌が集まった細菌の塊で、1g中に1億個もの細菌がいるといわれます。毎日の歯磨きを上手にしているつもりでも、歯と歯の間や歯の根元などに歯垢は残りがちです。

歯垢は、歯と歯ぐきの溝である歯周ポケットの奥深くにも入り込み、そこでさらに歯周病菌が増殖します。
そして、歯周病菌が出す毒素によって、歯を支える歯槽骨という骨を溶かしていきます。

支えを失った歯ぐきは下がり始め、歯の根っこが露出してくるのです。
こうなると、すでに歯周病は中等度から重度に進行しており、さまざまな自覚症状も出てきます。

「鏡で見ると歯が以前より長くなったように見える」「歯肉に痛みやムズがゆさを感じる」「歯が浮いたような感じがする」「手で押すと歯がグラつく」「水を飲むと歯や歯ぐきにしみて痛い」といった症状のある人は、歯周病がかなり進んでいる可能性が高いので、早急に歯科を受診してください。

一方、歯周病の初期症状として代表的なものは、歯肉の腫れや出血です。
健康な歯肉はピンク色で、歯と歯の間の歯肉は三角形に引き締まっています。

しかし、歯周病の初期段階である歯肉炎になると、歯ぐきが腫れてやや暗い色調になり、歯と歯の間の歯肉がふくらんで丸みを帯びてきます。
歯を磨いたときに、歯肉から出血することも多くなります。

このほか、起床時に口の中がネバついたり、歯に爪を立ててかき取ると白っぽいものがついたりする人は、歯垢が十分に除去されておらず、歯周病が進みやすい状態です。
これ以上歯周病が悪化しないよう、きちんと対策を講じる必要があります。

なぜなら歯周病が怖いのは、歯を失うだけでなく、全身の健康にも大きな悪影響を及ぼすからです。

毒素が口の中から全身に広がる

歯周病の患部は、慢性的に炎症を起こしています。
炎症とは簡単にいうと、病原菌など体に有害な物質を排除するための防御反応です。

血液中の免疫細胞などが歯周病菌と戦っているわけですが、その過程で生理活性物質というものが生まれます。
生理活性物質は、体内でなんらかの作用をもたらす化学物質の総称です。

有害な生理活性物質は、体内で増え過ぎると細胞を傷つけ老化の一因となる活性酸素や、たんぱく質の一種などがあります。

その生理活性物質や、歯周病菌、歯周病菌が出す毒素などが、血流に乗って全身に広がります。
その結果、体のあちこちで小さな炎症が長く続き、病気や不調を引き起こすのです。

これまでの研究で、歯周病と関連があることがわかっているのは、以下のような病気です。

●糖尿病
歯周病により、歯肉に炎症があると、TNF‐αという物質が血液中に増えます。

この物質は、インスリンの働きを阻害し、血糖値の調節作用を悪くしてしまいます。
糖尿病やメタボリックシンドロームの人は、歯周病になるリスクが高く、反対に、口の中の状態が悪いと、糖尿病やメタボリックシンドロームのリスクが高くなることが、証明されています。

糖尿病の人が歯周病治療を行うと、糖尿病の指標であるヘモグロビンA1c(過去1~2ヵ月の血糖値の状態がわかる数値で、正常値は6.5%未満)が改善した、との研究報告もあります。

●動脈硬化
歯周病の患部からは、炎症性サイトカインというたんぱく質が放出され、血管を通じて全身に運ばれます。

これが動脈の中に入ると、血液中の免疫細胞が活性化し、「慢性の小さな炎症」のために酸化したLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を取り込んで塊を作ります。

これが血管壁に沈着し、血液の通りを悪くしたり、動脈硬化を進行させたりするのです。

●脳梗塞、心筋梗塞
血管壁に沈着した「悪玉コレステロール」の塊は、血管から離れて流れていき、血栓となって血管を詰まらせることもあります。
脳や心臓の血管に血栓が詰まれば、脳梗塞や心筋梗塞を招くことになります。

●認知症
アルツハイマー型認知症は、アミロイドβという特殊なたんぱく質が脳内に増えることが原因です。

マウスを使った実験では、歯周病菌に感染すると脳内にアミロイドβが増えることが判明しています。
また、アルツハイマーで亡くなった人の脳を調べた結果、歯周病菌が出す毒素が高い割合で見つかっており、歯周病と認知症の発症には深い関係があると考えられているのです。

●骨粗鬆症
骨粗鬆症は全身の骨だけでなく、歯を支えている組織ももろくなります。
骨粗鬆症の人は、そうでない人に比べて歯周病の割合が高いとの調査結果もあります。

●関節リウマチ
歯周病菌が、関節リウマチを引き起こす原因の一つであることが、わかってきました。

関節リウマチ患者は健常な人に比べ、歯周病になるリスクが8.05倍も高く、患者に歯磨き指導と歯周病治療を行った結果、リウマチの症状が改善したという調査結果もあります。

歯周病は生活習慣病

こうして見てみると、歯周病は実に多くの生活習慣病と、深いかかわりがあることがわかるでしょう。
ですから、歯周病も生活習慣病の一つだと私は考えています。

そこで、歯周病の予防と改善には、生活習慣の見直しが欠かせない、ということになるわけです。
つまり食事、睡眠、運動など生活習慣の改善です。

食事は、歯の健康や血糖調節に悪影響をもたらす、ジャンクフードや糖類入り飲料などの精製度の高い糖質を控え、肉や魚、大豆製品などに野菜を加えた食事で、たんぱく質、ビタミン、ミネラルをたっぷり取るのが理想です。

免疫力(病気に対する抵抗力)は睡眠時に盛んになるため、夜ふかしを避け、質のよい睡眠を取ることも必要です。
さらに、適度な運動もするとよいでしょう。

私は患者さんの口の中を見ていますが、同時に全身の状態を見ています。
というのも、先に挙げたような全身の疾患は、口の中に現れているからです。

歯の治療を受けても、生活習慣の改善がなければ、生活習慣病である歯周病が治ったことにはなりません。
一時的によくなったとしても、再発の危険が高くなります。

全身の健康と、口の中の健康は常にかかわり合っているのです。
生活習慣の見直しとともに実践していただきたいのは、直接の原因である歯周病菌、つまり歯垢をきれいに除去することです。

そのためには、適切な方法で行う歯磨きが必要です。
歯垢は時間がたつと硬い歯石になり、歯科医院で歯石除去を行わないと取れません。

歯石を除去し、正しい歯磨き方法の指導を受ける意味でも、歯科で一度きちんと診てもらうことをお勧めします。
「歯医者は痛いから嫌い」という人も少なくありませんが、痛みのない段階で行けば、怖くありません。

何も問題がないと思われる人でも、半年に1回は歯科医でチェックを受けるとよいでしょう。
歯科医院は、歯周病の管理に力を入れている歯科医師や、歯石除去・歯磨きのアドバイスを得意とする歯科衛生士のいるところがお勧めです。

定期的に歯科に通っている知り合いがいれば、紹介してもらうのもいいでしょう。
私は「口の中から健康寿命を延ばすこと」を目標に、治療や歯科からの健康指導にあたっています。

皆さんもぜひ、歯と口の健康づくりに取り組んでください。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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