耳鼻科医の私は「高麗手指鍼」の考え方を活用
私は耳鼻咽喉科のクリニックを開設して40年以上になります。
その開設当初から、耳、鼻、のどなどと、症状の現れている体の一部分だけを切り離して診察・治療する方法に、違和感を抱いてきました。
人間の身体は機械ではないので、悪い部分だけを治せばいいというものではありません。
体はすべてつながっており、全身の状態を把握して治療に当たるべきです。
そこで私は、体を全体的に診る、統合医療を取り入れるようになりました。
その一つが、東洋医学における鍼灸です。
必要に応じて「高麗手指鍼」の考え方を活用して治療に当たっています。
高麗手指鍼とは、「手や指を鍼で刺激することで、全身の病気を治療できる」という、1970年代に韓国で創始された新しい鍼法です。
全身の経絡とツボが手に反映されている
この鍼法が生まれた背景には、「手は体の縮図」という考え方があります。
高麗手指鍼では、全身に分布する経絡(生命エネルギーの通り道)とそのエネルギーの出入り口であるツボが、そっくりそのまま、手にも反映されていると考えます。
手のひらが体の腹側で、手の甲が体の背中側に当たり、中指の第一関節が頭、第二関節が首となります。
右手の薬指が右手、小指が右足、人さし指が左手、親指が左足になります。
施術においては、不調のある体の部分に相応する手の部分を刺激します。
両方の手に、それぞれ左右の手足があることになりますが、原則的に、痛みや不調がある側の手を使って治療することになっています。
セルフケアでは鍼の代わりに「輪ゴム」を使うと良い
「手指を刺激すると、病気や体の不調が改善する」ということは、理にかなっていると思います。
私たちの体は一瞬たりとも生命活動を止めることなく、常に変化をしています。
気も絶えず流れ続けているのです。
絶えず流れている川を想像してみてください。
そこに石を投げ込むと、微妙に流れが変わりす。
同様に、全身の経絡やツボが集約された手指に刺激を与えれば全身で気の変化が起こるのです。
もし、肩が痛いといった症状があったら、手の中で肩に相応する人さし指や薬指のつけ根に刺激を与えます。
すると、肩によいエネルギーが流れるようになり、私たちの体に本来備わっている自然治癒力が上がって、痛みが改善していきます。
この手指を使った治療のいいところは、簡単にできて、苦痛がなく、副作用もなく、手早く病気の治療ができるという点にあります。
私は鍼を使って手指を刺激しますが、一般のかたは鍼を用いるわけにはいかないでしょう。
そういう場合は、気になる症状が出ている身体の部分に相応する手指を、もう片方の手指で押したりもんだりして刺激を与えるといいでしょう。
輪ゴムを使って刺激を与えるのも、手間いらずでとてもよい方法だと思います。
重要なコツは、「手と全身はつながっている」というイメージを持ちながら、刺激することです。
手を眺めながら、自分の全身がそこにあるように想像し、治したいところを意識して、痛みや不調の消えた状態を感じてみましょう。
「病は気から」とよく言いますが、心の中で起こることは、すべて体の現象に影響を与えています。
心は「目に見えない体」であり体は「目に見える心」なのです。
意識の力が気の流れを強く後押しして、よい影響が体に届けられ、痛みや不調の改善効果が高まります。
究極の主治医は、医者ではなく、あなた自身です。
手指から全身の自然治癒力を高め、日々の健康に役立ててください。

解説者のプロフィール

樋田和彦(ひだ・かずひこ)
●ヒダ耳鼻咽喉科クリニック
愛知県尾張旭市向町3-3-31
TEL 0561-53-2290
http://www.holistic-hida.jp/
ヒダ耳鼻咽喉科クリニック院長。
1938年、愛知県生まれ。医学博士。日本高麗手指鍼療法学会名誉会長。
’63年、名古屋市立大学医学部卒業。
’68同大学大学院卒業後、ヒダ耳鼻咽喉科クリニックを開業。
〝こころとからだ”を全人的に診る統合医療を取り入れ、心と体と環境から総合的にアプローチする本来の医療を追求。