解説者のプロフィール

鎌田芳夫
上野毛眼科院長。
1952年、静岡県生まれ。1977年、東京慈恵医科大学眼科学部を卒業。同大学大学院修了。同大学眼科助教授、同大学附属青戸病院副院長、同大学附属病院(本院)眼科診療部長などを経て、2005年から現職。日本眼科学会認定専門医、日本神経眼科学会認定神経眼科相談医。大学病院での長い勤務医生活から得た経験を活かし、地域医療を行っている。
●上野毛眼科
東京都世田谷区上野毛3-4-17
TEL 03-5752-4111
http://www.kaminoge-ganka.com/index.html
周囲を見ているつもりが実は一部しか見ていない
最近、高齢者による車の事故が相次いでいます。
この原因の一つとして、加齢による目の機能低下があると思います。
年を取るにつれ、動いている目標を見極める能力である動体視力が落ちていきます。
それととともに、目に入る視野の範囲が狭くなります。
私たちは広い範囲を見ているつもりでも、よく見えているのはほんの一部です。
人間の視野は、左右それぞれ100度くらいですが、物の形や色がはっきり認識できる「有効視野」の範囲は4~20度。
それ以外の範囲を「周辺視野」と言い、この広い範囲を見る「周辺視」の機能が年を取るとともに落ちていきます。
加齢によって、動体視力は低下し、周辺視野が狭くなります。
さらに、運動機能も落ちるため、高齢者による車の事故が増加するのです。
車の運転に限りませんが、目の訓練を行い、機能低下を食い止め、改善することは大事です。
そうすれば、目はいつまでも若々しく保てます。
剣豪は俯瞰するように周囲を見る
私たちの目は、ある一点に注視すればするほど、周辺が見えにくくなります。
別所キミヱ選手のお手玉訓練のように、顔を動かさずに広範囲を見るように心掛けていると、周辺視野が見えやすくなります。
これによって、卓球の試合で、思いがけない場所にきた球にも、素早く打ち返すことができるのでしょう。
昔、剣豪は、敵と対峙するときに、全体を俯瞰するような視点を持っていたと言われています。
一点を注視せず、全体を見ることで、周辺視野を確保し、相手の切っ先を見極めていたのだと思います。
これは、視力の問題だけでなく、視力を統合する脳の機能にも影響を及ぼすように思います。
つまり、脳が活性化するのでしょう。
お手玉訓練は、いわば目の上下運動の訓練です。
これにプラスして、遠くと近くを交互に見る目のストレッチもお勧めです。
やり方は、写真を参照してください。
目の遠近ストレッチのやり方

ここで注意したいのは、遠くと近く、どちらを見るときも、きちんと焦点を合わせることです。
一般的に、人間の体に備わる機能は、使えば使うほど高まります。
逆に、使わずにいれば衰えます。
意識して使うことで、加齢による機能低下を食い止め、さらにはその機能を高めることもできるのです。
目についても、この原則は当てはまります。
お手玉や目の遠近ストレッチで、目の若々しさを保ちましょう。