解説者のプロフィール

大山良樹(おおやま・よしき)
帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科准教授。
目の病気に対する鍼灸の臨床研究や、学童期の近視に対する鍼治療効果に関する研究、鍼通電刺激が瞳孔の自律神経機能に及ぼす影響に関する研究を精力的に行っている。
●帝京平成大学
https://www.thu.ac.jp/teacher_info_admin/profiles/detail/700
目のトラブルに効く最強ツボはコレ!
私たち鍼灸師が、あらゆる目のトラブルの治療に際して、真っ先に選択するツボが「合谷」です。
その対象は広く、近視はもちろん、老眼や眼精疲労、緑内障(※視神経に障害が起こり視野が狭くなる病気)や加齢黄斑変性(※網膜の中心の黄斑が加齢とともに変性し視力が低下する病気)などの重大な疾患にまで及びます。
位置は、左右の手の甲側、人さし指の付け根の出っ張り部分の下にあるくぼみにあります。
合谷を、もう片方の手の親指で押すと、ズンとしたイタ気持ちよさがあるでしょう。
WHO(世界保健機関)の認定では、ツボは全身に361穴あるとされています。
東洋医学では、ツボ治療を行う場合、これらのツボをいくつか組み合わせて、複合的にアプローチします。
このとき、組み合わせの基本になる4種のツボがあり、これを「四総穴」と言います。
合谷も四総穴の1つで、顔面部の病気に関するツボ治療では基本とされ、それにいくつかの補助的なツボ(補助穴)を組み合わせて治療します。
つまり、目や鼻、口など、およそ顔面部に現れる病気・症状に関しては、合谷はオールマイティのツボであり、それだけ効き目が高いという証しでもあるのです。
近視などの目のトラブルは、まさに合谷の守備範囲の中心。
もっとも得意と言えるでしょう。
コンタクトが不要になった人も!
こうした合谷のパワーは、現代の科学的な調査、研究でも、さまざまな形で実証されています。
私たちが行った調査でも、それは端的に現れています。
調査は2回行い、近視の患者さんそれぞれ200名(合計400名)のデータを得ました。
年齢は、1回目の調査が13~25歳、2回目の調査が20歳未満の若年層です。
合谷を中心に、こめかみの下にある太陽、耳の下部後方にある風池、目の下にある承泣を補助穴として鍼刺激をしました。
これを週に1度、10週以上継続したのです。
1回目の調査結果では、治療を開始したときの視力と、治療を終了したときの視力を比較すると、平均で右目0.33、左目0.31も視力が向上しました。
この効果は、半年ほど維持されたことも追跡調査でわかっています。
なかには、視力が0.5も上がり、コンタクトレンズが不要になった人もいます。
そして2回目の調査結果では、患者全体の約7割に、平均で0.3の視力向上を確認できました。
合谷への刺激がこれほど視力改善に効く理由は、自律神経(臓器の働きを調整する神経)に働き、体をリラックスさせる方向に導く副交感神経が優位になったためと考えられます。
副交感神経が活発になり、目の筋肉の血流も促進し、近視のリスクになる緊張も緩和されるのです。
合谷への刺激は、もちろん指圧でもじゅうぶん。
皆さんが予想する以上の効果が得られることでしょう。
お風呂上がりに行うと血行がよく効果的
それでは、合谷のツボ刺激の方法を説明します(下の写真)。
近視だけでなく、老眼やドライアイ、眼精疲労などの目のトラブルにも有効なので、ぜひ試してください。
押す力は、押している親指の爪が白くなる程度が目安。
これくらいが、俗にいう「痛キモチイイ」圧覚で、それ以上強くすると圧痛となり、かえって筋肉がこわばってしまいます。
1回3〜5秒押すのを、3~5回繰り返します。
これを両手に行うのを1セットとし、1日3セット行います。
お風呂上がりの血行がよくなっているときに行うのが、もっとも効果的です。
日に何度行ってもかまいませんが、痛みが残ったり、皮膚が黒ずんだりするほどやりすぎないようにご注意ください。
合谷の押し方
