解説者のプロフィール

鎌田芳夫
上野毛眼科院長。
1952年、静岡県生まれ。1977年、東京慈恵医科大学眼科学部を卒業。同大学大学院修了。同大学眼科助教授、同大学附属青戸病院副院長、同大学附属病院(本院)眼科診療部長などを経て、2005年から現職。日本眼科学会認定専門医、日本神経眼科学会認定神経眼科相談医。大学病院での長い勤務医生活から得た経験を活かし、地域医療を行っている。
●上野毛眼科
東京都世田谷区上野毛3-4-17
TEL 03-5752-4111
http://www.kaminoge-ganka.com/index.html
まぶしさや目の痛み、ぼやけるのも眼精疲労
眼精疲労を訴えてクリニックに来院される患者さんが最近増えています。
その背景には、スマホやパソコンで目を酷使する現代生活の影響があります。
デスクワークの人は、1日じゅうパソコンを見続けるのが日常でしょう。
パソコンを使う仕事は、画面の内容を理解しようとしてモニターを凝視するため、本を見るよりもはるかに目の負担となります。
しかも、パソコンやスマホを凝視していると、まばたきの回数が減り、眼球の表面が乾燥します。
目の乾燥がドライアイや目の疲れを引き起こす有力な要因にもなっています。
さらに、休み時間や通勤電車の中、自宅に帰ってからもスマホを見続けます。
パソコンやスマホが普及する以前の生活を思い出してください。
そのころとは比べものにならないほど、私たちは目を酷使しているのです。
また、仕事や人間関係で、さまざまなストレスを抱えることも、目の疲れを増幅させる要因の一つです。
これらの結果、眼精疲労になってしまった人は、「目が疲れる」「目がかすむ」「目がしょぼしょぼする」「まぶしい」「目が痛い」「ぼやける」「目が充血する」といった多くの症状に悩まされるようになります。
これらの症状が、一晩よく寝ても取れずに継続することが、単なる「眼疲労」ではない、眼精疲労の特徴です。
悪化すれば、肩こりや頭痛、倦怠感や吐き気、めまいといった症状も併発するようになります。
メガネやコンタクトの誤使用が原因?
眼精疲労に悩まされるようになったら、少なくとも一度は眼科で診察を受けることをお勧めします。
緑内障(※視神経が障害されて視野が狭くなる病気)や白内障(※カメラでいうレンズの役割を果たす水晶体が濁る病気)、斜視、眼瞼下垂(※まぶたが垂れ下がってくる病気)などで、眼精疲労を引き起こすかたもいらっしゃいます。
また、メガネやコンタクトレンズが合っていないケースも少なくありません。
きちんとした目の検査を受けずに、メガネやコンタクトレンズを作ってしまい、過矯正のメガネを使っていることが目の負担となっているのです。
眼精疲労のセルフケア
ここで、眼精疲労のセルフケアについて、いくつかご紹介しましょう。
まず、試してもらいたのが、目を温めることです。
方法はとても簡単です。
コーヒーカップ2つにお湯を入れ、その湯気を目に当てるだけです。
その際、まぶたは閉じたままで行います。
湯気を当てる時間は、2~5分程度。
お湯が目にかかったり、やけどしたりしないようにくれぐれもご注意ください。
目を温めることによって、目、および目の周辺の血行が促されます。
血液循環が促進されれば、新たな酸素と栄養分が組織に供給され、老廃物や疲労物質の排出が進むために、疲れが取れやすくなります。
また、ドライアイの改善も期待されます。
ドライアイは、マイボーム腺の機能不全で発生することもあります。
マイボーム腺とは、まつげの生え際に70ほどある皮脂腺で、眼球上に油分の層を作り、涙の蒸発を防いでいます。
マイボーム腺が詰まり、機能低下が起こると、涙に含まれる油が減少し、涙が黒目(角膜)から蒸発しやすくなります。
目を蒸気で温めることで、その機能を回復させる効果が期待できるのです。
コーヒーカップ蒸気法は、この2つの相乗効果で、目の疲れの解消に役立つと考えられるのです。
これが面倒だと思った人は、入浴中、浴槽に入りながらお湯で温めたタオルをまぶたの上に乗せてみるのもいいでしょう。
これならば、タオルを用意するだけで実行できます。
また、市販のホットアイマスクを利用するのもお勧めです。
「ドライヤー温め法」と「コーヒーカップ蒸気法」

ひどい眼精疲労の人は肩こりが多い
ひどい眼精疲労の人は、決まったように肩こりに悩まされています。
目の疲れと、肩や首の筋肉のこりは密接に連動しているのですつまり、肩こり解消は、眼精疲労も楽にする傾向があります。
肩こりを訴える患者さんに私がお勧めしているのが、肩や背中をドライヤーで温める方法です。
肩の中央部分に、「肩井」というツボがあります。
位置は、首を前に曲げたとき、首の付け根にある突起した骨と肩先を結んだ線のちょうど真ん中あたりにあります。
この肩井を中心に、ドライヤーの温風を当てましょう。
ドライヤーは10㎝ほど離して、10~20秒当てます。
肩が温かくなってきたと感じたら、そこでドライヤーをストップさせます。
背中全体を温めるのも、効果があります。
ドライヤーを使わない方法としては、腕を回すのもお勧めです。
大きく肩から腕を回します。
右腕は前回し、左腕は後回しと、右腕と左腕を逆に回すのがポイントです。
このように腕を逆に回すと、肩甲骨がよく動きます。
今回ご紹介した方法は、いずれもご家庭で簡単にできるものばかりですから、ぜひお試しください。