解説者のプロフィール

溝口徹(みぞぐち・とおる)
●新宿溝口クリニック
東京都新宿区新宿2-3-11 御苑前311ビル5F
TEL 03-3350-8988
http://www.shinjuku-clinic.jp/
新宿溝口クリニック院長。
1990年福島県立医科大学卒業。
横浜市立大学医学部付属病院国立循環器病センター勤務を経て、神奈川県藤沢市に溝口クリニック(現・辻堂クリニック)を開設。
2003年、日本初の栄養療法専門クリニック『新宿溝口クリニック』を開設。
毎日の診療とともに、患者や医師向けの講演活動を行っている。
飽食の現代のはずがたんぱく質は不足!
糖質・脂質・たんぱく質の三大栄養素のうち、現代人に不足しているのが、たんぱく質です。
日本人の食生活は戦後、劇的に変化し、たんぱく質の摂取量が増加し続けてきました。
しかし近年は、一転して減少傾向にあり、なんと戦後間もない1950年代と同水準まで落ち込んでいるのです。
とりわけ40代以降の人たちに、たんぱく質不足が目立ちます。

タンパク質不足が及ぼす健康への影響
たんぱく質の不足は、健康にも大きな影響を及ぼします。
たんぱく質は、骨や筋肉、皮膚、爪、毛髪など、体を構成する主要な材料で、食べ物の消化・吸収や細胞の再生・修復などに使われます。
また、病原菌などから体を守るために作られる免疫抗体などの成分でもあります。
そのため、たんぱく質が不足すると、筋肉量が減少したり、骨がもろくなったり、肌荒れや抜け毛が増えたり、免疫力が低下してカゼをひきやすくなるなど、さまざまなトラブルにつながるのです。
たんぱく質が足りないと、老化も進行しやすくなります。
人間の体内では常に、たんぱく質の合成と分解が行われていますが、合成される量が分解される量を上回っている時期が成長期です。
しかし逆に体内で合成される以上にたんぱく質が分解されていくと、老化が進みます。
したがって、老化を防ぎ、体を若々しく健康に保つには、毎日の食生活でたんぱく質をしっかり補給する必要があります。

タンパク質が不足がさらなる悪循環を招く
とはいえ、たんぱく質を効果的に補給することは、そう容易ではありません。
たんぱく質が不足している人は、食事からとったたんぱく質を体内で消化、吸収するために必要な消化酵素の分泌も悪くなりがちです。
なぜなら、消化酵素も、たんぱく質からできているためです。
消化酵素の分泌が不十分だと、たんぱく質の含まれた食品を食べても体内でたんぱく質が消化されず、胃もたれや下痢を起こすこともあります。
その結果、肉などのたんぱく質食品を食べる気がしなくなって敬遠してしまい、ますますたんぱく質が不足してしまう、という悪循環を招きかねません。
しかし、「豆乳マヨネーズ」を食生活に取り入れることで、このようなたんぱく質不足の悪循環を断ち切ることができます。
豆乳マヨネーズは豆乳自体に植物性たんぱく質が豊富な上、肉、魚、野菜と味の面で相性がいいので、たんぱく質を効率よくたっぷりとることができます。
植物性と動物性のたんぱく質を食べよう
たんぱく質を含む食品は、大きく分けると、
肉や魚介類、卵、乳製品など動物性の食品と、
豆や穀類、野菜など植物性の食品があります。
一般的に、植物性よりも動物性の食品のほうがたんぱく質の含有量が多く、
動物性たんぱく質のほうが体内での利用効率が高いとされています。
また、たんぱく質を構成するアミノ酸は20種類あり、
このうち9種類は、体内で作り出せず、食品から摂取しなければいけない必須アミノ酸です。
動物性たんぱく質食品には全種類の必須アミノ酸がバランスよく含まれているのに対し、
植物性たんぱく質食品は、一部の必須アミノ酸の含有量が少なくなっています。
そのため、肉類や魚介類、卵や牛乳などの動物性たんぱく質食品を、
豆や穀類、豆乳マヨネーズなどの植物性たんぱく質食品と合わせてとるといいでしょう。
そうすれば、アミノ酸バランスが改善し、体内での利用効率がアップしますが、
肉を食べ慣れていない人は、一度にたくさんの肉を食べると胃もたれや下痢を起こすこともあります。
そんな人に私がお勧めしている料理が、しゃぶしゃぶです。
薄切り肉のしゃぶしゃぶであれば、
ステーキなどが苦手な人も無理せず食べることができ、肉と同時に野菜もとれます。
豆もやしと肉に、豆乳マヨネーズをかける「豚もやしのピリ辛マヨネーズがけ」は、簡単です。
豆乳マヨネーズをゆで卵と合わせたり、
刺し身や蒸し魚にそえたりするのも、動物性たんぱく質を効率よくとれるので、お勧めです。

中高年は意識してたんぱく質をとることが大切
一般に、たんぱく質の必要量は体重1kg当たり1日1~1・5gといわれます。
体重60kgの人であれば、1日60gのたんぱく質が必要となる計算で、
これは肉でいうと300g、卵であれば10個、納豆9パック、食パン10枚に相当します。
ただし、たんぱく質の必要量は人により異なり、
ダイエット中(摂取カロリーの少ない人)、運動不足、運動量の多い人や高齢者は、
より多くのたんぱく質が必要です。
特に、中高年になると若者に比べて消化吸収力が落ちるので、
意識してたんぱく質をとることが大切です。
豆乳マヨネーズと動物性・植物性たんぱく質食品を組み合わせて、
おいしく楽しみながら、たんぱく質の補給に努めていただきたいと思います。