日本人の死亡原因第3位肺炎患者が急増中!
2011年、我々、日本人の死亡原因のトップ3が入れ替わり、医療関係者の間に激震が走りました。
1位のがん、2位の心臓病は同じままでしたが、長年3位に君臨していた脳卒中を抜き、肺炎がランクインしました。
それから6年たった現在も、肺炎による死亡者数は増えています。
その勢いは衰えず、団塊の世代が75歳以上になる2025年には、死因の2位になる可能性もあるかもしれません。
このように肺炎が増加した理由をひとことで言えば、高齢者が増えたからです。
肺炎は「老人の友」という言葉もあるほど、高齢者には密接に関係した恐ろしい病気で、肺炎で命を落とした高齢者(75歳以上)の7割以上が、「誤嚥」が関係した肺炎になっています。
「誤嚥」という言葉に聞きなれない人も多いでしょう。
誤嚥とは、飲食物や唾液などが誤って気管に入ることを言います。
なぜ誤嚥しやすくなるのか
気管に飲食物や唾液などが入ると、それに含まれる細菌やウイルスが肺に入り込み、誤嚥性肺炎になるのです。
では、なぜ誤嚥しやすくなるのでしょう。
それは、加齢とともに「飲み込む力」が衰え、食道を通るべき飲食物や唾液などが、呼吸で空気を出し入れするための気管に、誤って入り込みやすくなるためです。
「肺炎」は、喫煙や空気汚染が原因だと思われがちですが、実はこの誤嚥が、日本人を脅かす「肺炎」の正体です。
そんな恐ろしい誤嚥性肺炎ですが、努力で予防できる肺炎でもあります。
その最大のポイントは、「のどの筋力」を鍛えることです。
のどの筋力と、誤嚥性肺炎が、いったいどう関係するのかを、簡単にご説明しましょう。
飲み込むという行動は、反射運動として、無意識のうちに行われます。
私たちののどには、食道と気管の入り口が前後に並んでいます。
そして、普段は気管で呼吸をしながら、飲食物をとったときや何かを飲み込もうとしたときだけ、喉頭蓋という「フタ」がパタンと気管を閉じる仕組みになっています。
その間、わずか0.8秒です。
こうして一瞬のうちに、のどで空気と飲食物の「交通整理」が行われます。
喉頭蓋が閉じるには、のどの喉頭という部分が瞬間的にせり上がらなければならず、その喉頭を引っ張り上げるのが、のど仏を吊り下げている筋肉(喉頭挙上筋群)です。
のど仏は正式には「甲状軟骨の喉頭隆起」といい、これは女性ののどにもあって、手で触ると見つけられます。
話を戻すと、食べ物を正しく飲み込むには、このようにのどの器官同士の絶妙な連携プレーが不可欠です。
しかし加齢とともに、のどの筋肉が衰えたり、のどを動かす神経の働きが鈍ったりして、この連携プレーにズレが生じて、飲み込みが下手になります。
すると、飲食物や唾液などが、誤って気管に入ることが増えます。
こうして「誤嚥」が起こりやすくなるのです。
それでも、のどの筋力が健在なら、セキをしたり、むせたりして、誤って入った気管から、飲食物などを吹き飛ばすことができます。
しかし筋力が衰えて、それも十分にできなくなると、誤嚥した飲食物や唾液などが気管に残り、肺に入ってきます。
また、脳梗塞の後遺症によって、口やのどの付近にマヒがあったり、神経の働きが弱くなったりすると、よりいっそう連携プレーがうまくいかなくなり、誤嚥のリスクが高まります。
こうなると、免疫力が低下した高齢者や病人は、誤嚥性肺炎になってしまいます。
のどの構造と仕組み

20~30代の若い人にも増えている誤嚥性肺炎は要対策!
誤嚥性肺炎の3大原因は、食物、唾液、逆流性食道炎です。
飲食物だけでなく、我々の口内に常にある、唾液の飲み込みも原因になります。
ですから、口の中は歯磨きを徹底して清潔にしておくのが大切です。
そして三つめの原因の逆流性食道炎とは、胃の内容物が、逆流して食道に流れ、炎症を起こすもので、胃酸を誤嚥することがあります。
逆流性食道炎は最近、20~30代の若い人にも増えています。
逆流性食道炎があるなら、若くても誤嚥に注意しましょう。
誤嚥性肺炎を防ぐために、逆流性食道炎を治療することは大切ですが、より根本的な対策は、やはり「のどの筋肉を鍛える」ことです。
のどの筋肉は、何歳からでも鍛えられるので、あきらめないようにしましょう。
自分の「飲み込む力」をチェック!
飲み込む力は高齢になってガクンと衰えるわけではなく、40代からゆるやかに衰えだします。
しかし「飲み込みが弱くなった」と自覚する人はほとんどいません。
だからこそ、自分の飲み込む力を確認してみましょう。
3つ以上当てはまる人は要注意!
のどの筋肉を鍛える「おでこ体操」を読んで飲み込む力を鍛えましょう。


次の記事では、のどの筋肉を鍛える「おでこ体操」について解説しましょう。
解説者のプロフィール

西山耕一郎
西山耳鼻咽喉科医院院長。
1957年福島県生まれ横浜育ち。医療法人西山耳鼻咽喉科医院理事長。東海大学客員教授。北里大学医学部卒業。病棟医時代に「術後の誤嚥性肺炎の危険性」に気づき、嚥下治療を専門の一つにし、運動として、無意識のうちに行喉頭という部分が瞬間的にせり約30年間で1万人の嚥下治療患者を診療。
●西山耳鼻咽喉科医院
神奈川県横浜市南区中里1-11-19
TEL 045-715-5282
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