右ひざを立てると飲みこみやすい?
子どものころ、立てひざでご飯を食べて叱られた。
そんな思い出はありませんか。
「立てひざで食事」は、一般常識ではマナー違反とされています。
しかし実は、誤嚥の予防にとてもいい姿勢なのです。
これは試せばすぐわかります。
次の手順で体感してみるといいでしょう。
①つば、もしくは少量の水を飲む
②右ひざを立て、同じようにつばか少量の水を飲むいかがでしょうか。
右ひざを立てたときのほうが、だんぜん飲み込みやすいと感じませんでしたか。
反対に左ひざを立てると、今度は飲み込みづらくなります。
要は右ひざを立てると、ものが飲み込みやすくなるのです。
なぜそうなるかというと、右ひざを立てると胃の位置が上がるからです。
老化で内臓は下垂する
すべての臓器にいえることですが、
胃袋も加齢とともに下垂します。
ところが、下垂した胃袋の位置を上げると、
機能が高まるのです。
逆に、左ひざを立てると胃の位置は下がります。
その結果、胃の働きが悪くなり、
飲み込みづらくなるわけです。
余談ですが、片ひざを立て座る姿勢が、
韓国では正座とされていて、正式な場でもその姿勢で食事をとるそうです。
テレビなどで韓国人が食事をする風景を見ると、
ほとんどの場合、立てているのは右ひざでした。

立てひざの代わりに右足首を回せばよい
そうはいっても、右ひざを立てて食事をするのは、
日本ではマナー違反です。
そこでお勧めなのが、食事の前に胃の位置を上げておくこと。
それを簡単に行える体操が、今回ご紹介する「右足首の内回し」です。
右足首の内回しは、その名のとおり、
右足の足首を内側にグルグルと回す体操です。
行った直後から胃の位置が上がるので、
飲み込みにくさを訴える患者さんには、施術でも使っています。
胃の位置が上がると食欲もわいてくる
施術の前後には水を飲んで変化を確認してもらいますが、
「飲み込みやすくなった」と、誰もが驚きます。
また、胃の位置が上がると、おなかのふくらみの位置も上がり、
肋骨のいちばん下の骨はゆるやかに広がります。
これは寝た状態で確かめるとよくわかります。
胃が下がっている人ほど変化は大きいので、
体操の前後で、みずおちの辺りを触ってみるといいでしょう。
胃の位置が上がると、食欲もわいてきます。
食欲不振を訴える患者さんからは
「食べられるようになった」という報告もたくさんいただいています。
なぜ右足首を内側に回すと胃にいいのか
では、なぜ右足首を内側に回すと胃にいいのでしょうか。
この体操では、足首を回すことで、
胃経という経絡(東洋医学でいう生命エネルギーである気の通り道)を刺激しています。
その結果、胃の働きがよくなるのです。
また、私が施術に用いている
野口整体の一派(整体の創始者といわれる野口晴哉氏が唱えた独自の方法論)では、
体の右側を刺激すると、内臓の働きがよくなると考えられています。
特に右足は、施術でよく使う部位です。
ちなみに、外側に回した場合も効かないわけではありません。
ただ右足首は、もともと内側に傾きやすい構造で、
内方向に回したほうがよく効くのです。
右足首回しのコツ
このように効果が高い右足首の内回しですが、
いくつかコツがあります。
まず、寝た状態で行うときの足の角度ですが、
胃から右足までが一直線になるイメージで足を開きます。
これで刺激がダイレクトに胃に伝わります。
次に、足の裏側が伸びた状態で足首を回すことです。
手を使う場合は、かかとをしっかり支え、
アキレス腱が伸びた状態を維持しましょう。
最後に、大きな円を描くようにつま先を回すことです
。
回すうちに、円が小さくなりがちなので気をつけてください。
高齢者の場合、足首が硬いことが多いので、
そのこわばりをほぐすつもりで行うとよいでしょう。
足首を軟らかくすることは転倒予防にもつながるでしょう。
体力がつき、免疫もアップする
一般的に、誤嚥しがちな人は
食欲、体力とも落ちていることがほとんどです。
そんな人も、食事の20分前に右足首の内回しを行っておけば、
食欲が増します。
すると、食事量が増え、
体力がつき、免疫力(病気に抵抗する力)も上がります。
誤嚥しても肺炎になりにくい体づくりのために、ぜひ役立てください。
飲みこみをよくする「右足首回し」のやり方


解説者のプロフィール

浜田貫太郎(はまだ・かんたろう)
●浜田整体
東京都目黒区緑ヶ丘2-17-24バンヴェール栗山201号
TEL 03-5729-1373
http://seitai.iiyudana.net
浜田整体院長。
石川県生まれ。
整体の創始者・野口晴哉氏が唱えた独自の方法論「整体操法」を伝える整体協会(社)へ入門。
同協会に8年在籍後、独立。
施術のほか講座を開催して整体の普及に努める。著書に『整体操法入門』(たにぐち書店)。