MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
【名医の明快解説】男性と女性「頻尿・尿漏れの悩み」No.1は夜間頻尿

【名医の明快解説】男性と女性「頻尿・尿漏れの悩み」No.1は夜間頻尿

実は、あらゆる排尿障害の中で、最も悩んでいる人の数が多いのがこの夜間頻尿なのです。【解説】関口由紀(女性医療クリニックLUNAグループ理事長・LUNA骨盤底トータルサポートクリニック院長)

解説者のプロフィール

関口由紀
 1989年、山形大学医学部卒業。泌尿器科専門医、漢方専門医、横浜市立大学大学院医学部 泌尿器病態学 非常勤教授。2005年、横浜元町に女性医療クリニック・ LUNAを開設。中高年女性のトラブルに多方面から対応している。女性泌尿器科、女性内科、婦人科、乳腺外科による内的な健康サポートとともに、美容皮膚科によるアンチエイジングを気軽に楽しめる医療空間の提供をめざしている。主な著書に『女性ホルモンの力でキレイをつくる本』(朝日新聞出版)、『女性外来の骨盤底筋トレーニング』(宝島社)などがある。

「尿量」増加と「容量」低下

 もしあなたが、おしっこがしたくて、夜に何度も起きてしまい、そのことに困っているのなら、「夜間頻尿」という排尿障害の一つだといえます。

 この「困っている」「悩んでいる」というところがポイントで、一度起きるとなかなか寝付けなかったり、睡眠不足で翌日の生活に差し支えたりする場合を指します。

 実は、あらゆる排尿障害の中で、最も悩んでいる人の数が多いのがこの夜間頻尿なのです。
 そもそも頻尿とは、「尿が近い、尿の回数が多い」症状のことです。頻尿は加齢とともに増加しますが、夜間頻尿も40代では約4割、70代になると約8割の人に症状が見られるというデータが出ているのです。

 夜間頻尿と聞くと、前立腺肥大症(膀胱下にあるクルミ大の器官である前立腺が加齢とともに肥大する男性特有の病気)との関係から、男性に多いというイメージを持たれがちです。

 しかし実際は、男女差はほとんどなく、夜間頻尿は中年以降になると、男性も女性も多くの人が悩まされる症状なのです。

 夜間頻尿の原因はさまざまですが、大きく、次の二つに分けることができます。

・睡眠中に尿量が多くなる「夜間多尿」
・少量しか尿をためられなくなる「膀胱異常収縮」

 後者の膀胱異常収縮は、膀胱が収縮したり、過敏になったりしておしっこをためておく「容量」が低下し、それが頻尿につながります。これらは、男性の前立腺肥大、女性に多い過活動膀胱(膀胱に尿がじゅうぶんたまる前に強い尿意切迫感が起こり尿をもらしてしまう病気)、脳や脊髄の病気などで引き起こされます。

 一方、前者の夜間多尿は、まぎれもなく「尿量」が多くなる症状です。しかも、本来、夜間に増えるはずのない尿量が、夜間に増え過ぎてしまう状態を指します。こういった患者さんが、かなり増えてきています。

夜間の排尿回数(年齢別と性別)

寝る前に足のむくみを取ること

 この「夜間に増えるはずのない尿量が、夜間に増え過ぎる状態」はなぜ起こるのか。

 その正体は、むくみ(浮腫)です。なかでも、足のむくみは、夜間頻尿へ直結しやすいので注意が必要です。
 体のむくみとは、細胞間質液(細胞と細胞のすきまを満たす液体)と、血液に含まれる水分の浸透圧のバランスがくずれたことで、細胞間質液が増え過ぎてしまうことによって起こる症状です。
 むくみの原因は、腎臓や肺、心臓などに疾患がある場合もありますが、冷え、運動不足、出産、水分や塩分の取り過ぎでも起こります。ほかに、加齢とともに血管が硬くなる動脈硬化が進んだことで起こることもあります。

 では、足のむくみが、なぜ夜間頻尿に直結しやすいのでしょうか。
 通常、私たちが睡眠をとるときには、それまで立って活動していた体を、横にします。こうなることで、足より高い位置にあった心臓が、足の高さと同じ位置になります。
 その結果、足から心臓に戻る血液(静脈)の流れが一気によくなります。このとき足がむくんでいると、たまり過ぎていた細胞間質液が血管内にどんどん流れ込んでいきます。

 足のむくみにとっては、それが解消されることはいいことなのですが、この多量に流れ込んだ水分(細胞間質液)が尿となり、夜間多尿の原因となってしまいます。入眠して数時間後、膀胱におしっこがたまっていっぱいになり、尿意で目が覚めてしまうのです。

 長く夜間頻尿に悩まされてきたかたは、まずは足のむくみを疑ってみるべきです。
 思い当たることがあるようなら、次の二つを心がけてみましょう。
・就寝前に、足のむくみを取る ようにすること
・そもそも、日中に足がむくま ないようにすること

 このような工夫をすることで、夜間頻尿を改善に導くことができるでしょう。

むくみのメカニズム

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この記事のエディター
関連するキーワード
関連記事
骨盤底筋を鍛えるための体操は、現在多くの医療機関で推奨されています。しかし、やり方をプリントされた紙を渡されるだけなど、わかりずらく続けにくい場合がほとんどです。そこでお勧めしたいのが、おしぼり状に巻いたタオルを使った「骨盤タオル体操」です。【解説】成島雅博(名鉄病院泌尿器科部長)
足の甲に包帯を巻いて2~3日後には、足がむくまなくなりました。以前のように、足がむくんで靴が痛いということもありません。むくみが解消したおかげか、明け方に尿意を感じて目が覚めることがなくなりました。そのため、従来どおり、熟睡するリズムが戻ったのです。【体験談】上田雅代(仮名・看護師・57歳)
効果はすぐに実感しました。食べ始めて2~3日で、夜のトイレの回数が2回に、1~2週間で1回に減ったのです。この変化には、自分でも驚きました。私は、毎朝職場で重機をチェックし、点検表をつけています。今は、老眼鏡を使うのは薄暗い曇りの日だけで、晴れた日は老眼鏡を使っていません。【体験談】佐藤徳雄(重機オペレーター・71歳)
足の甲にある「抜け道血管」も、足の冷えやむくみ、夜間頻尿の原因となります。正式には「動静脈瘻」といい、解剖学の教科書にも記載されている血管です。本来なら指先の毛細血管まで流れていくはずの動脈血が、抜け道血管を通って静脈に流れ込むと、足先は血流不足になって冷えてしまいます。【解説】佐藤達朗(サトウ血管外科クリニック院長)
夜間頻尿が1回減ると、睡眠時間は2時間延びるといわれています。塩分過多の人は、減塩するだけで、睡眠の質が大幅に改善するわけです。夜間頻尿の患者さんに、自分でできる対処法として、減塩といっしょにお勧めしているのが、昼間に行う「かかと落とし」です。【解説】松尾朋博(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器科学助教)
最新記事
熱中症は7月8月の日中に最も多く見られます。熱中症は、乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。なかでも高齢者は重症化する場合が多いのです。また服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
熱中症は私たちの日常生活の中での注意や工夫で予防することができます。たとえば、服装です。また、水分補給についても、実は「水分」だけを補給するのではいけません。そのほかに、エアコン等の空調の使い方のコツなどをご紹介します。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
手洗いの時間の目安は、おおよそ30秒。次のような手順で洗っていくと、少なくともそれくらいの時間が必要であることが実感できるでしょう。
新型コロナウイルスには、まだ特効薬やワクチンはなく、感染しないための予防法を徹底することが重要です。自分一人ひとりができる感染症対策のポイントをチェックしてみましょう。
コンブを水に漬けて冷蔵庫で10日ほど発酵させ、乳酸菌と酵母を培養する「コンブ酵母」が話題になっています。コンブ特有のにおいが軽減し、旨みが濃くなるので、そのまま飲んでも、料理に使ってもよし!食生活に取り入れる人が急増中です。コンブ酵母の作り方と、コンブ酵母の活用レシピをご紹介します!【レシピ】COBOウエダ家

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt
get_app
ダウンロードする
キャンセル