解説者のプロフィール

三浦直樹(みうら・なおき)
●みうらクリニック
大阪市北区東天満1-7-17東天満ビル9F
TEL 06-6135-5200
https://www.miura-cl.jp/
みうらクリニック院長。
1968年、大阪府生まれ。兵庫医科大学卒業。関西医科大学勤務を経て、2009年、みうらクリニックを開院。鍼灸や整体などの手技療法、マクロビオティックや漢方・薬膳などの食事療法、カウンセリングや催眠療法などの心理療法の研究を行い、必要に応じて西洋医学と組み合わせながら、自然治癒力を引き出す統合医療を行っている。
手相は東洋医学では確立された診察法
私のクリニックでは、患者さんを診察する際、必ず手相も見ています。
東洋医学では、問診・聞診・触診・望診という「四診」によって診断を行います。
そのうちの望診とは、体つきや顔つき、歩き方、舌の状態、手相などを見て症状を判断する診察法です。
つまり、手相から患者さんの状態を診ることは、東洋医学の専門書にも記されている、しっかりと確立された診察法なのです。
私は約10年前にこの手法を知り、開業当初から診察に取り入れてきました。
手相には、その人が生まれもった体質や、現在の体の状態が現れます。
その情報を元に、私は患者さんに食事や生活の注意点をアドバイスしています。
さらには、手相を見るとその人の性格の傾向もわかるので、それによって病状の伝え方や提案する治療法を選ぶこともあります。
ズバッと直接的に伝えてもだいじょうぶな人、少し柔らかい表現をしたほうがいい人、また、多くある治療法の中でどれが最もその人に向いているかなど、手相からわかることはたくさんあります。
そして、診察で手相を見ると、患者さんとの会話も盛り上がります。
特に、子ども連れで来られた患者さんにお子さんの体質や性格の傾向などを伝えると、とても喜ばれます。
手相による診察は、患者さんとのコミュニケーションにも役立っているのです。
手相を知れば将来の病気を予防できる
手相の見方は幅広くありますが、代表的なものは「手相の三大線」といわれる「生命線」「知能線」「感情線」を見る方法です。
まず生命線は、消化・吸収および呼吸の機能を表します。
知能線は、脳・神経系の状態を表します。
感情線は、血液やリンパの循環、そして老廃物の排泄状態を表します。
三大線からわかるのは、主に先天的な体質です。
簡単に言うと、くっきりとした長い線であるほど、その線に対応する体の機能が生まれつき高いということです。
そして、三大線は体の状態によって、後天的に変化することもあります。
例えば、線の上に「島」と呼ばれる丸い輪ができたり、後天的に線の上にホクロができたりしたときは注意信号と言われています。
しかし、東洋医学の診察に用いる手相は、占いではなく、あくまでも体の状態を知るための目安です。
よくないとされている手相になっても、必ず病気になるというわけではありません。
生まれつきの体質で自分の弱い部分がわかったり、後天的に手相に変化があったりしたときは、対応する体の部分をケアするような生活習慣を心がけるなど、将来なるかもしれない病気の予防や体調管理に役立てることが肝心なのです。
具体的には、生命線が薄かったり、途切れるなどの変化があったりした場合は、消化・吸収の機能が低下している可能性があるので、暴飲暴食は止め、よく噛んで食べる。
知能線が弱々しければ、血圧に気をつけながら、ストレスをためない生活を心がけ、首や肩がこらないようにケアする。
感情線に変化が出ていたら、適度な運動をして循環をよくする、といった具合です。
手相の三大線と、線が弱々しいときの対策

拇指球や小指球をもむのは効果的
また、線ではありませんが、拇指球(親指の付け根のふくらみ)、小指球(小指の付け根のふくらみ)にも、体の状態が現れやすいです。
ここは、特に色を見ます。
他の箇所に比べて、青みが強い場合は冷えや滞りがあり、赤みが強ければ熱がこもっていたり、紫がかっていれば老廃物がたまり、血液が汚れている状態です。
拇指球は腸や子宮、小指球は腎臓や心臓、自律神経などに関係が深いと言われています。
拇指球や小指球の色が悪い人には、私はその部分をもむことを勧めています。
もみほぐすうちに血液の滞りが消えて、手全体の血色がよくなり、手相に変化が出ることもあります。

重度の生理痛でクリニックにやってきた患者さんは、拇指球が紫がかっていて、凝り固まっていました。
私は彼女に、おなかを温めることと同時に、拇指球をしっかりもみほぐすことを勧めました。
すると、拇指球は血色のいい色になり、手相全体も明るくなって、生理痛も軽快しました。
患者さんに手相をもとに、生活改善や治療を指導していくと、症状が回復するのと同時に、手相も変わっていきます。
脳梗塞の治療をしていた患者さんは、知能線上にほくろがありました。
しかし、ほぼ完全回復という状態になると、知能線上のほくろもいつの間にかなくなっていました。
重症の便秘や子宮ガンでやってきた患者さんも、最初は青みや紫の強い拇指球だったのですが、症状が改善していくごとに拇指球の色も正常になっていきました。
東洋医学では「先天的なエネルギーは腎に宿り、後天的なエネルギーは胃に宿る」と言います。
それほどに食習慣が大事ということですが、私はときどき断食を行います。
断食を行うと体の毒が抜けていく感覚があるのですが、このとき手相を見ると、薬指の付け根にある金運線が濃くなることがあります。
毒が抜けて、体力・気力が充実するからかもしれません。
逆に暴飲暴食をすると、金運線は薄くなっていきます。
こんなふうに、手相にはおもしろいように現在の自分が映し出されます。
皆さんも、意識して自分の手相を見てみてください。
自分の体調の変化を知るために、定期的に手相の写真を撮って、保存しておくのもよいでしょう。
そして、手相に変化が合ったり、拇指球、小指球の血色が悪くなったりしたら、その部分をもみほぐしたり、生活習慣を改めたりして、健康維持に役立ててください。