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オナラで便が漏れる「ニセ便失禁」対策 【前編】下剤(センナ・アロエ)に注意

オナラで便が漏れる「ニセ便失禁」対策 【前編】下剤(センナ・アロエ)に注意

肛門の機能は正常なのに、「下着に便がつく」「何度ふいてもきれいにならない」「オナラが出ると便が漏れる」などの症状を訴えてくる人も少なくありません。このような状態を、当院では「ニセ便失禁」と呼んでいます。【解説】佐々木みのり(大阪肛門科診療所副院長)

【お悩み】おならをしたときに便が漏れる


ときどきですが、うっかりオナラをしたときなど、下着に便がついていることがあります。
これが「便失禁」というものでしょうか。
外出や旅行などがおっくうになってきました。
聞いたところによると、手術しかないとのことですが、どうすればよいでしょうか。
(60代女性)

回答者のプロフィール


佐々木みのり
大阪肛門科診療所副院長。
大阪医科大学卒業。日本でも十数名しかいない女性の肛門科専門医・指導医であり、国内唯一・元皮膚科医という経歴を持つ。そのため、肛門周辺の皮膚疾患の中でも、特に「肛門そう痒症」については独自の治療を行い良好な成績を得ている。学会での講演実績も多数。

●大阪肛門科診療所
大阪府大阪市中央区釣鐘町2-1-15
TEL 06-6941-0919
https://osakakoumon.com/

9割以上はニセ便失禁で「出残り便秘」が原因

便失禁のお悩みは、当院でも非常に多いのですが、皆さんに知ってほしいことがたくさんあるため、今回は、前編・後編の2回に分けてお答えします。
まず、便失禁とは何かをご説明しましょう。

便失禁とは、肛門の締まりが悪くなって、意志とは無関係に便が漏れ出てしまう病態のことです。
肛門の締まりが悪くなる原因は、加齢による肛門括約筋の筋力低下、また、女性の場合は、分娩時に肛門括約筋が損傷していることにもあります。

医療機関で便失禁を訴え、こうした肛門のゆるみや機能異常が認められた場合は、手術適応となります。
しかし、実際には肛門の機能は正常なのに、「下着に便がつく」「何度ふいてもきれいにならない」「オナラが出ると便が漏れる」などの症状を訴えてくる人も少なくありません。

このような状態を、当院では「ニセ便失禁」と呼んでいます。
実は、当院に「便漏れ」を訴えて受診する患者さんの9割以上は、ニセ便失禁に該当します。

肛門科の中でも便失禁は特殊な分野なので、専門医でないと本物かニセかの見極めは難しいものです。
ニセ便失禁であるにもかかわらず、手術を勧められるケースも多々あります。

まずは専門医にかかって、正しい診断を受けることが肝要です。

ニセ便失禁の原因は「出残り便秘」

では、ニセ便失禁の原因は何でしょうか。

それは、排便時に出しきれなかった便が肛門付近に残っていることだと、私は考えています。
これを「出残り便秘®」と名づけました。

ニセ便失禁の大きな特徴は、排便後に症状が現れることです。
試しに排便後、温水洗浄便座を使わずにお尻をふいてみてください。

3回ふいても便がついたら、出残り便秘の可能性大です。
そのほか、出残り便秘の特徴は、次のとおりです。


・排便後、何度もお尻をふく
・温水洗浄便座を愛用している
・1日に何度も便が出る
・くさいオナラがよく出る
・おなかが張る
・下着に便がつく
・排便していなくても、紙でふくたびに便や茶色い汁がつく



当院では、便をすっきり出しきる治療を行うことによって、ニセ便失禁の症状が改善した例が多く得られています。
なかには肛門の締まりが悪い本当の便失禁でも、便をすっきり出しきるだけで、日常生活に支障がない程度まで症状が改善している人もいます。

ハーブの下剤も安全なわけではない

ただし、注意したいのは、便を出しきるために、安易に下剤を使うと危険もあるということです。
特に、下の表に挙げた大腸刺激性成分は、毎日飲むと4ヵ月、断続的でも9ヵ月から1年で大腸メラノーシスを引き起こします。

大腸メラノーシスが起こると、大腸が真っ黒になり、腸の神経細胞が減少して、ぜん動運動が起こらなくなるのです。
つまり、自力では便が出ない体になるということ。
最近は大腸がんとの関連も懸念されています。

これらの成分は、市販薬だけでなく、健康食品やお茶に含まれることも多いので、成分表示をチェックして、服用は避けてください。
また、医師から処方される下剤で多い酸化マグネシウムも、要注意です。

これは、軟らかい便をつくる作用はありますが、肛門付近に残った便を出やすくする効果はありません。
それどころか、便を軟らかくしすぎると肛門が狭くなり、水のような便しか出せなくなって、そこから便失禁につながることもあります。

現に、私の患者さんでは下剤をやめた途端、便失禁が治った人も多くいます。
さらに、大量にたまった便を一気に出すと、血圧低下が起こり、高齢者の場合、心停止に陥るおそれもあります。

下剤は、体への作用をきちんと理解している専門医に処方してもらいましょう。
もちろん自分自身でも、便をすっきり出しきる工夫をすることは重要です。

少しでも便意を感じたら、すぐにトイレに行きましょう。
このとき、おなかを「の」の字にマッサージします。
当てた手をブルブル動かして振動を加えると、なおよいでしょう。

トイレの姿勢は、前かがみが出しやすいといわれていますが、人によって出やすい姿勢は違います。
大事なことは、足の裏を床につけ、よけいな力は入れずに排便することです。

なお、お酒は胃と腸に負担をかけるので、痔の患者さんには禁酒か、飲んでも週1回までにするようお勧めしています。

服用を避けたいハーブ系の下剤


●センナ
キャンドルブッシュ、ゴールデンキャンドル、カッシア、アラタもセンナと同種なので要注意
●アロエ
●カスカラサグラダ
●ダイオウ


出残り便秘を避けるために自分でできること

原因の多くは、肛門付近に便が残っている「出残り便秘®」であることをお伝えしました。

このような人たちは、下着に便が付着したり、肛門周りがベタついたりするのが気になるため、「必ず温水洗浄便座を使う」「お尻を何度もふく」という傾向が強いようです。
なかには、ウェットティッシュや肛門専用のスプレー剤を使っている人、痔を併発しているために消毒薬を使っている人もいるようです。

しかし、これらの行為は、今すぐやめてほしい行動です。
ニセ便失禁を防ぐ対策【後編】で詳しく解説しましょう。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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